「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料記事】【インタビュー】栃木SCアカデミー 「真の栃木県のチームは必ず作れる」。ミスター栃木SCと呼ばれた情熱の男、只木章広育成部長が掲げる哲学により躍進する栃木SCアカデミーの現在地。

只木育成部長はトップチームの練習現場にも訪れる。「トップの選手がどんな表情で練習をしているのか、育成のトップとして把握するのは当然のこと」。

只木育成部長はトップチームの練習現場にも訪れる。「トップの選手がどんな表情で練習をしているのか、育成のトップとして把握するのは当然のこと」。

 県民に応援してもらえる選手たちを増やし、栃木県で真の地域密着を。

 

――その栃木愛を打ち出すなかで栃木SCアカデミーの一体感を作り上げていく最中だと思うのですが、現実的には、去年のジュニアユースの3年生でユースに昇格したのは3人でした。矢板中央や佐野日大など進むなどかなりバラバラになった現状についてはどういう分析をされていますか。

「ひとつには、見込みが甘かったというのはあります。選手たちがユースに上がってくれるだろうと思っていた部分を読み違えていたところがあります。高校年代といえば部活動には、高校選手権の魅力や、学校が終わったらすぐにトレーニングができる環境、人工芝を持っている学校があること。さらにその先に繋がる大学があること、などなどそれらを総合的に考えたときに、今の栃木SCのアカデミーに対抗できる術があるかといえば、それは難しいのが正直なところです。ならば、現状で足りないものを何で補うのか。もちろんハード面も大事なんですが、それだけじゃない。だからこその栃木愛。そういう取り組みをしていることに賛同や共感を得られて『じゃあ、俺はやっぱりここでやろう』と思えることが本当の繋がりだと思うんです。キレイごとと言えばキレイごとなんですけど」

――栃木愛があれば栃木SCに残ってくれると思いますか。

「もちろん、子どもたちはいい環境に行きたい。特待生扱いになってお金を免除してもらえれば親御さんにとってもありがたいでしょう。それは我々も同時にやっていかないといけないし、絶対に必要な部分ではあると思っています」

――只木さんが育成部長になられからアカデミーが取るスタイルがかなり攻撃的で、システムも4-3-34-1-4-1を採用していてサイドで優位性を作って、というイメージです。哲学に掲げた「アグレッシブ」がそこにも表現されているということですか?

「そうですね。共通のシステムがあり、ベースはそれでいこうという話し合いはしています。アカデミーとしてやるべきサッカーがカテゴリー間で繋がっていれば、子どもたちも次のステージに行ったときの想定ができる。『ああいうふうにポジションをとっているからやれるな』『サイドバックはあそこまで行けるんだな』など思えるじゃないですか。それが必然だし、現状、U-15の花輪監督が率いるチームも、ユースもそうですけれど、サイドでの攻撃力を出すためには、サイドのアタッカーとサイドバックのコンビも出しやすい。そういう繋がりを持たせるという意図はあります」

――そういうコンセプトで時間をかけて今後取り組んでいこうというのがあるんですね。

「そうですね。でも、監督によってもカラーは変わるし、考え方もあると思います。ただ、大枠として、攻撃は積極的に、ボールを奪われたらすぐに奪い返そう、そういう大きなスタイルは持っています」

――短期で考えると難しいから、この先10年、そういう長期の考えというニュアンスでしょうか。

「いや、絶対に変われます。5年でいけます。今、ユースやジュニアユースでやっている選手がそのままスムーズにトップチームに入っていけるようになれば変わります。ユースからトップチームに入った場合、2年ほど、20歳くらいまでは正直トップで活躍するのは難しいと思うんです。いきなり19歳で結果を出すのは。だから、今いる高校2年生や3年生が入って、今の高校1年生、中学3年生が上がっていくと考えれば……あと5年くらいあれば、その子たちが20歳、21歳、22歳となってくれば、トップチームも変わる可能性は十分にあると思うんですよ」

――まだトップチームへの昇格者が出ていない状況で、只木さんやコーチングスタッフの方々には内部昇格選手を輩出するという希望があると思います。選手の能力と見込みがあればいつでも昇格を、という考えはありますか?

「はい。我々は少なくともそう思っています。現状では、トップチームとアカデミーの連携はこれから密になっていくという段階ですが、育成型クラブと言っている以上、ユースの選手を一人は必ずトライさせよう、というのが会社の方針としてあります。トライさせる価値はあります。それこそアグレッシブにいく価値がある。それが実現したときの周囲の選手やスタッフへの影響力も絶対にある。一度やってみてどうだったか、というのを検証すればいいんです」

――Jリーグに入団しようとしている高校生年代の選手や親御さんも含めて、最初の1、2年はトップでは試合に出られないからと大学を経由する。その道が一般化しつつありますが、只木さんはどういう考えをお持ちですか?

「ユースから直接トップへあがって、即戦力でやれるというのは、スーパー級でなければ難しいと思います。だから大学を経由するというのは、日本のシステム上、仕方がないと思うんです。栃木SCU-23のチームを持っていれば育成できるわけですけれど、そこまではできないので、大学に行ってプレーする、というのは仕方がない。その意味で、ユースから直接トップチームに昇格者が出ていない、と見られてしまうのは正直厳しいです。ユースから大学を経由して栃木SCに戻ってきたら、それは直接アカデミーからトップに昇格したのと同じだと考えています。日本の現在のシステムから考えたら、ある意味で仕方がないので」

――今、候補となる選手が大学にいますか?

「たとえば去年ユースから国士舘大に入った明本考浩君は、十分そういう可能性はあります。ユースから直接入ってもやれるだけの力はあったとアカデミーのスタッフも話をしています。あとは、作新大の法師人君などほかにも多数います」

――作新大学と栃木SCは連携がありますが、作新大から栃木SCのトップチームへという期待は只木さんのなかでどんな考えがありますか?

「作新大にはお世話になっているし、練習グラウンドのことでも提携しているので、当然、作新大からトップチームへ行く選手は、ユースから上がってくる選手と同じように考えないといけないと思っています。だから、トップチームとのテストマッチなどももっと頻繁にやれる部分もあると思っていますし、練習に参加させる、ということもお互いにメリットがあると思います」

――ユースにも今後トップチームへの昇格をチャレンジしてもいい選手はいますか?

「そうですね。やれると思います。いまのユースのキャプテン(増渕利樹選手)だったり、手塚貴大というボランチ、アンカーをやっている選手とか。あと2年生にもいますね。たとえば、彼らがトップチームに昇格したら1年や2年は余裕を見るくらいのスタンスは必要ですが。ただ、いまのトップチームでも古波津選手や西谷選手が大学から加入してすぐに戦えているわけですから、それと同じことだと思うんです」

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