「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【直前インフォメーション】J2‐1[H] 愛媛FC戦のポイント(21.2.28)

阿野真拓は加藤弘堅を背負いながら懸命のボールキープ。プロ2年目の飛躍が期待されるアタッカーだ。

阿野真拓は加藤弘堅を背負いながら懸命のボールキープ。プロ2年目の飛躍が期待されるアタッカーだ。

J2第1節、東京ヴェルディは、愛媛FCと15時から味の素スタジアムで対戦する。3年ぶりのホーム開幕。2021シーズンの出足やいかに。

■田中直希が祝祭を告げる

金曜の昼下がり、ケータイが鳴った。

「あのう、いま、どこにいらっしゃいますか?」

今季から『エルゴラッソ』の東京ヴェルディ番(4年ぶり3回目)となった田中直希だった。特に新鮮味もなく、あ、そう、よろしくと先日挨拶したばかりである。

家だよ。原稿書きやってる。今日、なんかあったっけ?

「ああ、おれ、やっちゃいました。どうりで誰もいないと思った」

笑わせてくれる。田中は多摩陸にいた。クラブから変更のあったスケジュールを勘違いし、練習公開日だと思い込んでいた。試合2日前は最後の仕上げのゲーム形式、おそらく紅白戦だ。んなもん、オープンにするわけがない。気前よく見せていたのは5年前の冨樫剛一体制が最後である。

「なんでこんな遠くまできちゃったのか。うわっ、下からミーティングの声が……。バレないように帰ります!」

田中はばたばたと慌ただしく電話を切った。しれっと顔出してみれば、という僕のアドバイスには耳も貸さなかった。

あからさまに浮き足立つ田中は、どことなくいい感じだった。平常にはない、祝祭の訪れを感じさせた。

晴れのJリーグ開幕はこうでなくちゃいけない。木々がざわめき、鳥はけたたましく鳴き、卵がうっかり孵っちゃって、遠い海ではイワシが巨大な渦を巻き、クジラがジャンプしてざぶんと海面を叩く。

おすまし顔で落ち着き払っている場合ではない。

ケータイを机に置き、僕の胸がざわざわ。いよいよ始まるんだなあという気分になった。

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