「ゼルビアTimes」郡司聡

原靖フットボールダイレクター「クラブ側の意向にコミットするためにも、一刻の猶予も許されない緊張感で体制を整えている」【インタビュー】

第7節終了時点で6勝1分勝ち点19と単独首位。黒田剛監督率いる新チームは順調な船出と言っていいだろう。現時点での現場の取り組みについて、編成を司る原靖フットボールダイレクターは、どんな評価をしているのか。強化部の視点から語ってもらった。(聞き手・写真/郡司聡)

強化の立場から見た現状のチーム力は?

▼「一番勝利に近い形を選択できている」

–強化の視点において、ここまでの現場の評価はいかがでしょうか(※取材は第6節終了時点)。
「キャンプではJ1と対戦して結果を残しましたが、J2はまた違った厳しい戦いになるので、期待と不安はありました。ここまではやや出来過ぎな感はありますが、コーチングスタッフ、選手、現場が一体となって結果を残してくれています」

 

–“プレゼン資料”にもとづいた黒田剛監督が志向するサッカーは、現状のピッチ上で表現されているという評価でしょうか。
「反映されていますね。もちろんサッカーは相手あってのことですし、相手の研究も進みますが、自分たちがどうあるべきか。それをブレずにやってくれています。選手選考も含めて、そのやり方が一番勝利に近いという形を選択できていますし、それにフォーカスした結果が現状の戦績を勝ち取っている要因と見ています」

 

–ミーティングに参加している中で印象に残っていることはありますか。
「私もたくさんの監督のミーティングを聞いていますが、とてもポジティブです。相手があるスポーツなので、約束事ができないことも出てくるのですが、「チームとして修正しよう」、「みんなの課題として、次の試合ではなくしていこう」といったスタンスです。良いプレーは称賛しますし、「こういうプレーをすれば認められるんだ」ということも明確になっています。ミーティング→練習→試合。そのサイクルがうまく回っているという印象です」

 

–例えばいわき戦は出場機会に恵まれなかった黒川淳史選手がゴールを決め、荒木駿太選手の3試合連続ゴールなど、交代出場の選手が点を取れています。そういった良い循環を生んでいる理由をどう捉えていますか。
「途中出場の選手が出てくるにつれて、質が落ちていくのは仕方がないものですが、黒田監督の意向としては、編成の段階から強度も質も落としくない、選手層の部分で同じようなクオリティーの選手が出てくるような状況を作りたいという話がありました。ただ出場するチャンスがないと、結果も出しづらいと思います。それでも、現状は門が開かれている練習とでも言いますか、良い選手は抜擢しようと、日常の練習から分け隔てがない競争原理を生んでいます。もちろん選手たちもその期待に応えてくれています」

 

いわき戦で初得点の黒川淳史。健全な競争原理が働いている証か

 

–健全な競争原理が生まれていると。
「各チームの主力級やエース級を集めて、トータルの人数(現状35名体制)も抱えていますから、マネジメントの部分は気掛かりでした。高いレベルの選手を数多く抱えることはクラブにとっては良いことですが、選手個々のキャリアを考えると、必ずしもそうとは言い切れません。もちろん町田で昇格することがベストですが、試合に出ることによって、J1や海外へ行きたいという選手が集結しているので、われわれ強化としても、個々の選手たちに対してアプローチはしています。そういう目標を持った選手が多いため、この試合ではこういう組み合わせが良いと監督が決める中でも、18人に入れない競争が生まれています」

 

–なるほど。
「町田のチャレンジと自分が出場してクラブを昇格させるという思いの部分を照らし合わせて加入を決めてくれた選手たちが数多くいます。またメンバーに入れない選手の中には、前所属ではレギュラーだったという選手もいます。このように、選手たちの現状を聞くために、できるだけ個々のアプローチはしています。その中で、「現状はなかなかメンバーに入れないけど、あなたの力が必要になる時は来る」、「J2は42試合もあるし、インターナショナルマッチウィークもなく、中断がなく進むから必ずチャンスは来る」といった話を正直にしています」

 

–そうした個々のアプローチは、原FDが中心となってされているのですか。
「私と他の強化スタッフでやっています。いつチャンスが訪れるか、分かりませんし、誰が出ても同じようなクオリティーを発揮できるように、常にアイドリングさせないと。私自身、良かったなと思う点は、岡山でJ2を4年間経験している経験値が生かせること。特に夏場は非常に気候も含めて厳しくなるので、戦力は必要です。一番はメンバーに入ってレギュラーとして出るために毎日の練習に取り組むことですが、今後のキャリアのこともあるので、仮に万が一メンバーに入れず、チャンスがないのならば、継続的に話していこうという話は、正直にしています。現状はそういったアプローチがうまくいっています」

藤尾翔太の獲得は粘り強い働きかけが実った格好に

▼「常にアイドリングできる状況を」

–移籍市場の第1ウインドーの期間には、セレッソ大阪から藤尾翔太選手が加入しました。
「髙澤優也選手がアキレス腱断裂という長期離脱を余儀なくされた上に、豪州の協会や韓国の協会サイドから、ミッチェル・デュークやチャン・ミンギュの代表入りの話は耳に入っていました。正式決定は離脱する週頭の段階になりましたが、黒田監督とも相談をしながら、代表組の離脱も想定されるため、複数の候補選手をピックアップしていました。その中の一人が藤尾選手でした。ただ藤尾選手の加入に関しては、もう少し遡って話したほうがいいかもしれません」

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