【マッチレビュー】J3第3節・秋田戦/今シーズン初黒星。間瀬采配に屈する
▪︎明治安田生命J3リーグ第3節14:00キックオフ・町田市立陸上競技場/2,853人
FC町田ゼルビア 0-1 ブラウブリッツ秋田
【得点者】秋田/21分 牧内慶太
▼町田対策のディテール
前節は試合がなく、今節のFC町田ゼルビア戦に向けて、2週間の準備期間を与えられたブラウブリッツ秋田は、町田対策を用意周到に準備していた。自身にとって、記念すべき監督初勝利となった秋田の間瀬秀一監督は、この2週間の準備期間をこう述懐する。
「最初の1週間は開幕の富山戦で自分たちができなかったことにひたすらアプローチしてきた。それは主導権を握ってボールを動かすこと。次の1週間は主に町田対策にスポットを当てた」
過去2戦の町田をスカウティングした結果、間瀬監督は攻守においてワンサイドに人数をかける町田の戦い方に着眼。例えば、町田がボールの奪いどころとして、サイドに追い込んで来れば、一気のサイドチェンジで局面を打開し、町田のリズムを奪うという算段だった。その戦術を遂行するため、秋田の指揮官は左利きの川田和宏を右ウイングバックに、右利きの峯勇斗を左ウイングバックに配置。利き足とは逆のサイドに選手を配置することで、「常に逆側をイメージして内側にボールを持ち出し、反対サイドに展開する」(間瀬監督)という町田対策の刷り込みを選手たちに施した。
この配置転換と町田の特長を逆手に取った戦略は、序盤から功を奏した。「試合の入りがすべて。ファーストDFが定まらなかった」とリ・ハンジェが振り返ったように、町田は序盤からボールの奪いどころが定まらず。ボールサイドに人数をかけて奪いに行っても、相手に局面打開のサイドチェンジを展開されてしまうことで、町田の守備は秋田のポゼッションに対して後手に回った。
チームとしての狙いを外された町田は、それが尾を引くように球際の勝負でも劣勢を招き、「9割方球際で負けていた」(大竹隆人)。20分にはサイドチェンジの展開から前山恭平に強烈なシュートを浴びると、一度はGK高原寿康が弾いたものの、そのこぼれ球を牧内慶太に押し込まれてしまう。
「後半がこんな展開ではお客さんがいなくなってしまうぞ!」
ハーフタイムにベテランの高原がそう言って選手たちを鼓舞するほど、前半の町田はふがいない出来だった。
▼鈴木崇文が鳴らした警鐘
ハーフタイムの相馬直樹監督とベテラン高原のハッパが効いたのか、町田は後半のスタートからギア全開で反撃に出た。久木野聡に代わって後半の頭から途中出場した宮崎泰右がサイドからチャンスを創出し、「前半は考え過ぎていたので、後半は自分のプレーを出すことを心がけた」というボランチの大竹が攻撃のタクトを振るい、秋田を押し込む。
ところがどうしても1点が遠い。試合終盤には「真ん中を使われていた」と戦況を判断した秋田の間瀬監督が、スタートのシステム[3-4-2-1]から3ボランチと2トップを配置する[3-5-2]に布陣変更。中盤の中央に人数を割き、中を遮断する戦略に出た。
一方の町田は深津康太を最前線に上げるパワープレーでゴールを狙う。しかし、無情にも3分のアディショナルタイムが経過。町田は今季初黒星を喫した。
試合後、チーム最多となる3本のシュートを放った鈴木崇文が言った。
「攻撃のプレーの質はもちろん、まだイメージの共有ができていない。個人個人で動いて、個人個人でなんとかしようとしている。相手は押し込まれていてもそんなに怖さを感じていなかったんじゃないか。ボールを取ってからすぐに前へ出て行く。やらなければいけないこと、チームとしてやろうとしていることをできていないから相手にやられたのかなと。まずは試合の入りを良くすること。後半のゲームを最初からやっていれば、まず負けることはないし、ゲームの入りをしっかりすることを、日々の練習から強く意識していかないと。僕たちはJ3で優勝して昇格しないといけない。もっと高い意識でやらないといけないし、僕もそういう姿勢をトレーニングの中からもっと見せていかないといけないと思っている」
秋田の策略を凌駕できなかった町田は、それ以上に“自分たちのやるべきこと”をできなかったことを悔いた。主将のリは「昨季の苦しい時期も一人ひとりがやるべきことができないと勝ち点を落としてしまうことを認識していたはず。これが出たのが序盤で良かったと思えるかは自分たち次第。もう一度目を覚ましてやっていくしかない」と次節、敵地でのカターレ富山戦に向けて前を見据えた。
相手の戦い方を研究し、弱点を突くのは相手チーム攻略の定石。そんなサッカーの“宿命”に屈した町田は次節、チームが這い上がるために、早くも序盤戦の正念場を迎える。