「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

主力がいなくなる中で確かに若手たちが成長した。【2023シーズンレビュー③】(24.1.9)

▼引き抜かれることも悪くない

昨年9月、アウェイ熊本に出向いたときの熊本のメディア関係者の言葉が強く印象に残っている。

「今季のうちは主力が多数引き抜かれたけど、だから(昨季は出場機会がなかった)江崎巧朗選手が出場機会を掴んで明らかに成長している。あんなに逞しくなるなんて想像以上だった。そう考えると引き抜かれることも悪くないなって思うんです」

熊本は2022シーズンに4位と躍進したときの攻守の要56人が、その後のオフシーズンにごっそりと引き抜かれた。

そうして迎えた昨季は前半戦こそ8位で折り返したが、その後失速。苦しい状況のなかで迎えたホームでの36節栃木戦は、熊本が18位、栃木が13位、熊本は絶対に勝たねばならない状況にあった。

その決戦の前夜、熊本のメディア関係者から出てきた冒頭の言葉に僕は頷くほかなかった。「どんなに苦しくてもそのなかに希望を見つけて前を向くほかないでしょう?」という投げかけのようでもあった。

 

熊本と栃木の決戦は、その江崎が、直近の試合で爆発力を見せていたFWイスマイラをピシャリと抑え、30の完勝劇に貢献して見せたのだった。

昨季の江崎は大卒2年目の世代。栃木でいえば、大森渚生、神戸康輔、宮﨑鴻らと同学年だが、見事に大卒2年目で開花した。主軸CBとして40試合に出場、4得点の活躍である。

 

選手は試合に出てナンボだ。試合に出続けることで大きく成長する。

肝心なのは、その枠を自分で勝ち取ること。しかし主軸が安定したパフォーマンスを見せていれば、枠は空かない。ならば、日頃のトレーニングに100%で臨み、チャンスを待ち続けるしかない。シンプルだが、選手が浮上していくには、古今東西、それしかない。

 

昨季の栃木は、シーズン前に谷内田哲平が京都、鈴木海音が磐田に復帰し、カルロス・グティエレスが町田に引き抜かれた。3人の主力がいなくなったが、彼らを補うだけの戦力は当初、なかった。

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