【特別寄稿】【新東京書簡】第七信『東京クラシック!』海江田哲朗(スタンド・バイ・グリーン)(2016/09/29)
メキメキ頭角を現してきたルーキーの井上潮音
▼「フツーだね」
去る9月18日、J2第32節・カマタマーレ讃岐戦の前に、エキシビションマッチ『Club de Futbol BUENA VISTA vs 東京ヴェルディ支部選抜』が行われた。参加メンバーは石塚啓次さん、桜井直人さん、小針清允さん、佐伯直哉さん、玉乃淳さんなどのOBに加え、元ガンバ大阪の礒貝洋光さん、Jリーグアドバイザーの堀江貴文さんといった面々。
眼福にあずかるとはこのことでね。在りし日の姿をとどめている人がいれば、そうではない人もいるんだけど、観ているだけでうっとりした気分になれる。石塚のパスだ、桜井のドリブルだ、とおおいに楽しんだ。
中でも桜井さんのプレーは、緩急の利いたドリブル、相手をいなしながらのボールキープなど、引退して8年も経つのに相変わらずキラキラしていた。きれいなワンツーを決めて、点まで取っている。おれ、現役時代の彼のプレーにぞっこんだったからさ。もちろん衰えてはいるんだけど、足裏でボールを転がしたり、キュッと止まる動きがそこにあるだけでドキドキするんだよ。
映画や音楽を評論するとき、「抜けがいい」って表現することがあるでしょ? あれよ、あれ。桜井さんはスカッと抜けのいいプレーをする。FC東京で言えば、石川直宏かなあ。彼は動きながらボールを運ぶことに特別な才能を示し、このへんドリブルとは少しニュアンスが異なる。速いだけ、強いだけ、巧いだけでは、抜けがいいって感じにならないのが面白い。
讃岐戦のハーフタイム、桜井さんにバッタリ会ったんだ。当然、試合の感想が聞きたい。その眼にどう映るのか、おれは興味津々だった。
「う〜ん、フツーだね。みんな、頑張ってますよ。でも、フツー」
これは効いた。ガツンときた。フツー。要は色がないってこと。桜井さんはそれ以上言いようがない様子だった。
自覚がないかと言えばそうではない。前回、おれが後藤さんに投げた「ただ、許容できることと看過できないことの区別は大事だと思う。肝心のシウマイが不味くなったら、誰も崎陽軒買わないでしょ」というのは、そっちへのあてつけに聞こえたかもしれないけど、あれは自分のほうに向けた言葉なんだよ。このままでは小さな政治に翻弄され続け、なんの変哲もないクラブになってしまうのではないか、と。
ヴェルディは何よりもサッカーを追求するために始まったクラブだからね。いまが何周目で、クリアできるかどうかって、ここ数年は小さな振り幅で行きつ戻りつしているから、どう答えていいか分からない。仮にJ1昇格が一面クリアだとすれば、かなり距離を感じている。育成組織の在り方からトップの方針まで、いったん見直して整理しなければならないのだろう。
なお、桜井さんにはついでにインタビューの約束を取りつけたから、SBG読者の方々はお楽しみに。オフ企画かなあ。その前にやっちゃうかもしれないけど。
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