「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開・コメント】J3第19節・鳥取×町田/鳥取・松波正信監督、町田・相馬直樹監督(4,997文字)

▪︎明治安田生命J3リーグ第19節15:00キックオフ
チュウブYAJINスタジアム/2,446人
ガイナーレ鳥取 0-0 FC町田ゼルビア

 

▪︎松波 正信監督(鳥取)
——まずは試合の総評をお願いいたします。
「今日が今年初めてのYAJINスタジアムでの開催となりました。その中で勝ち切れないゲームとなったが、町田さん相手にはいつも以上の力を発揮しないと勝てないということは分かっていたし、(前節の)琉球戦(1●2)のような入り方をするとこちらに主導権を持ってこられないと思っていた。ただ試合の入りは良かったし、守備から入ることを全体で意識しながら奪ったボールを前線にスピーディーに持っていけるか、というところでは奪ったあとの相手の一歩目の強さがある中で、奪ったあとの一本目のパスの質をもう一つ上げられればということはやり続けないといけない。ただ全体的なところではできたと思うし、このゲームを最低限のレベルとして、修正すべき部分は修正していきたい。町田に対してしっかりと戦えたと思うが、それだけではリーグで上位に行くことは難しい。町田相手にこういうゲームを勝ち切ってこそ本当の力が付いてくると思う。ただ選手たちはよく戦ってくれたと思っている」

——ここ数試合勝ち切れない試合が続いていますが、二度目の対戦もして疲れも見えているのか、力をまだ測りかねているのか、そのあたりのことについて選手のことをどのように見ていますか?
「疲れはないと思うが、新しい選手も多かったので、一回りをしてある程度選手の特長を把握して、分析しないといけない部分もあった。第2クールに入って、個人のストロングポイントやウィークポイントは把握できているかなと。ただ今までの対応ではやられると思う。こういうゲームも第1クールでは勝ち切れていたし、第1クールではこういうゲームでも1点を取って勝ち切れることもあった。第2クールに入って相手に引かれるスピードが速くなって崩し切れない、もしくはカウンターの場面でミスが多くて、逆にカウンターを受けるシチュエーションが多くなっていることで勝ち切れない試合が増えている。引き分けのゲームはどちらに転んでもおかしくないゲームだったと思うし、チャンスを決めていればという展開だった。負けた試合は守備の入りが悪く、アプローチが遅かったりしていた。今日のようなゲームをできれば、勝ち切るゲームが増えてくると感じている」

——今日のようなゲームをできれば、というのは攻守両面で手ごたえをつかんだということでしょうか?
「守備の部分で手ごたえをつかんだということ。攻撃ではパス一つにしてもクオリティーを高めないといけないし、シュートに行く前の一つのパスにしても、良い形で入ったり収めたりできる展開のところでのミスが多い。守備の部分はアプローチのスピードなど、どうしても正しいポジションというかボールと人とゴールとの関係の中で良いポジションを取れる選手が少ない中で、今週はそういうトレーニングをしたことで少し改善は見られたし、そこが連動していければ良い形でボールを奪うシチュエーションもできてくる。攻撃の最後のところでは終了間際の田中(智大)から林(誠道)に出したパスでも、ラインに出てしまっていた。しかも90分戦っている選手ではないところでミスが出る、そこでのクオリティーを高めていかないと、チームとしても、個人としても、なかなか上には行けない。守備の部分では1日、2日で修正できるけど、攻撃の部分は1日、2日で修正できるものではなく、積み上げるしかない。やり続けていかないと、基本の繰り返しをしていかないとゴールには結び付かないのかなと」

——前節は出場したフェルナンジーニョ選手が今節は欠場しましたが、その理由は?
「久しぶりの前節のゲームで少し疲れがあるし、このゲームも出すつもりだったが、確認のゲームで少し足に違和感が出たということで、あまり長引かせなくたくないという本人の意向でもあった。それならばしっかり治そうということで欠場した。代わりに出た高柳(昌賢)がアグレッシブにやってくれたと思う。出られない選手を誰かがカバーすれば競争も生まれるし、そうしなければチーム力も向上しない。一つの収穫ではあったと思う」

——今年初の米子開催の雰囲気と試合後のバーベキューの試みなどについて、コメントをお願いいたします。
「試合後のバーベキューの心配は、今日の試合で勝てるかどうかだった。雰囲気はどうかなと考えるけど、YAJINスタジアムでできる意義は観客席とピッチも近いし、選手とスタッフが上から降りてくるというシチュエーションのスタジアムでは日本ではほかにはないかなと個人的には思う。レッズの埼玉スタジアムがピッチに上がる前に一度階段を下がって階段を上がっていくので、似ているのかなとは思うけど、階段を下がってピッチに降りる形は(イングランドの)プレミアのスタジアムでもあるし、プレミアみたいに客席にベンチがあっても良いんじゃないかという話もした。こういうみんなの力で造ったスタジアムでサッカーができるというのはどこのスタジアムよりも気持ちが入ると思う。しかもYAJIN(野人=岡野雅行)という偉大な選手の愛称が入ったスタジアムで勝たないといけないという気持ちと(岡野)GMがやってきたものをピッチで出していかないといけないなといつも思いながら米子では戦っている。でもなかなか勝ち点3を取れていない。ただサポーターの方々もここでは絶対に勝てるような雰囲気を今日も作ってくれたと思う。そういう意味では勝ち切りたかった。こんな住宅街にあるスタジアムもないと思う。ぜひ県外から見に来てほしい。試合の雰囲気を味わってもらいたい。もっとこういうスタジアムが地方にできれば、地方のサッカーが活性化するのではないか。このYAJINスタジアムは、サッカー界にとっては大きな役割を果たしているのではないかと、サッカー人としてJリーグOBとしては素晴らしいスタジアムだと思っている」

——結果だけを見ると勝てない状況が続いている中で米子開催でどんな言葉をかけて選手たちを送り出したのですか?
「上位との対戦でもあるし、昨日からの準備段階から見ていて、地元の中学生がボランティアに来てくれていたし、鳥取からもボランティアが来ていた。ユース、ジュニアユースを含めて、ここで試合をする環境を整えてくれた。こういうピッチでサッカーをできることが幸せなことだし、みんなボランティアで来てもらっているわけだから、勝ち点3という結果を残したいことはもちろんだけど、戦う姿勢や90分間前向きに強くピッチで駆け回る姿を絶対に見せないといけないと言ってピッチに送り出した。それを町田相手に90分恐れずに戦い抜いたことは評価してもらいたいし、勝ち負けはあるけど、一人ひとり戦う姿勢など、1年目や2年目の経験がないガムシャラな選手が多い中、必死に食らい付いていく姿はこれだけ来てくれたたくさんのサポーターや初めて見に来てくれた人など、素晴らしいなと思って一人でも多く帰ってもらえたのかなと思っている」

 

▪︎相馬 直樹監督(町田)
ーーまずは試合の総評からお願いします。
「遠く米子まで町田から足を運んでくださった方に感謝申し上げたいと思います。残念ながら、必死に戦って勝ち点3を持って帰りたかったんですけども、ドローという結果になってしまいました。非常にそこはもう一歩足りなかったなと思っておりますが、われわれとしては負けがない状態が続くことになりました。これもサポーターの皆さんの後押しのおかげだと思っています。なんとか勝ちにしたかったという思いはありますが、まず感謝申し上げたいと思います。ゲームのほうは、非常に風が強い中でのゲームでした。前半は鳥取さんのほうが風上を有効に使った立ち上がりとなりました。そこでバタバタした部分もあったんですけど、徐々に落ち着いて選手たちも対応してくれたかなと思っている。そうした中で、いくつかチャンスを迎えることができたが、点を取り切ることが、後半も含めてできなかった。そこに至った部分において、今後のわれわれにとって反省しなきゃいけないなと思っているところは、やはりフィニッシュの少なさ。われわれがボールを持っていた時間、相手陣に入った時間から考えると、(シュート数が)8本というのは正直少なかったなと思っている。ただ打てばいいとうわけではないが、フィニッシュ、シュートというゴールに向かって打たないことには、得点は生まれない。われわれにとっては少し決断であったり、思い切りであったり、そういったことがちょっと足りなかったのかなと思っている。選手たちには当然、内容的に押していたゲームだった、その中で勝ち点3が取れなかったことは非常に残念ではあるが、下を向かずにまた続けていこうという話をした。それを勝ちにするために、まだ足りないことというのをやっていきたい。今日でちょうどゲームが半分終わったことになる。ここから残りの半分をまたしっかりと戦っていく。前半戦、非常に引き分けが多かった部分を踏まえて、そこを勝ちに持っていけるようにやっていきたいなと思う」

ーー今日は鳥取のどういったところを崩していこうという話をされましたか。
「まだ鳥取さんとはもう1試合あるので、あんまり細かい話はできないが、ここまで縦に推進力のあるゲームをしてきているというのは感じていた。そこのところで、相手の縦の推進力というのを止めること。それに加えて当然、前に出る力があるということは、戻るところでスキができる。そこにはチャンスがあるよ、という話はしたかなと思う。展開的にいうと自分たちが(ボールを保持する時間が)もう少し時間が長い展開になり、3バックというよりも5バックに近い形で相手を崩し切る。崩せなかったわけではないと思うが、ゴール前での最後の迫力、やり切る部分でちょっと足りなかったなというのは先ほども申しました通り。縦への迫力がある、カウンターに出る力があるという中でいうと、シュートで終わるというのは最大のリスク管理です。シュートで終わるということはカウンターを当然、受けないというのことになる。ただ、そういった意味でも、そこのやり切る、クロスを入れるという面でも、もう一歩足りなかったなと思っている」

ーー終盤に平選手が途中出場の宮﨑選手と交代をしました。その理由はけがということでしょうか?
「まだ宮﨑泰右本人と話していないが、一人ゲームに入れなかったと思っている。そういうジャッジの中で、ああいう手を切る形になった。僕も彼に良い状態で入ってもらって、活躍してもらいたいと思っていたが、それはまた泰右と話をしなきゃいけないなと思っている」

ーーシュートの本数のお話をされていましたが、鈴木孝司選手以外の選手の攻撃陣の個のクオリティーというのはどう考えていますか?
「僕の手元にいるアタッカー人は当然、点を取るためにピッチに立ってくれていると思うし、その中でみんなトライをしてくれていると思う。得意な形、不得意な形があると思うが、自分の得意な形に持って行けていないのも事実だと思う。そういった中、相手もいるわけだし、味方とのそれぞれの組み合わせというのも当然ある中で、点を取り切るというところに至ってないが、僕は選手を信じている。当然、信じているとはいえ、クオリティーを少しでも上げる、そしてゲームでそれを少しでも発揮できるような状況を作って、ピッチに立たせてあげられるように。そこは僕のまだ足りない部分だと思っているが、一緒にやっていきたいなと思っている」

ーー守備に関しては後半ヒヤッとする場面もありましたが、リーグ戦12試合負けなしの守備については、どうお考えでしょうか。
「ここ2試合ですかね、自分たちが今日のように握っていて、カウンターで取られるということが2試合続いた。そういった中で、後ろは集中をしてくれたと思っている。それは後ろだけでなく、中盤、前線からの切り替え含め、やってくれた部分もあったが、試合に勝つには、後ろは失点ゼロは当然だが、前が取るというふうにバランスよくいければなと。今日は後ろが結果として成長した部分かなと思う」

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