「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

背番号16の確かな存在感 [石垣島キャンプ3日目レポート]

 

石垣島キャンプ中はすべてのトレーニング前に5~10分間の室内ミーティングを行う。そこでは選手に対してスクリーンなどを使用して練習メニューを事前に伝え、ピッチ内での効率を上げる試みがなされている。こんなところもアンジェ・ポステコグルー監督ならではの手法と言えるだろう。また、下平匠が「今の段階でスタッフが選手全員の顔と名前を憶えている。意外と大切なことだと思う」と話した内容は、チーム作りの初期段階における核心かもしれない。

3日目の午前も戦術練習に時間を割いた。ウォーミングアップこそレクリエーション要素も含んだ内容で選手から笑みもこぼれたが、パス練習以降は表情が一変。激しさを増していく。続くピッチ全体を使ったビルドアップでは昨日と同じ4-3-3に当てはめた配置とメンバーになった。片方のチームは、最終ラインの左から下平匠、ミロシュ・デゲネク、中澤佑二、松原健の4人。アンカーの位置に喜田拓也が入り、その前方は左からユン・イルロク、ダビド・バブンスキー、中町公祐、イッペイ・シノヅカ。そして1トップを務めたのは伊藤翔だ。

 

午後は負傷明けの扇原貴宏や山中亮輔、あるいは若干の痛みを抱えている一部の選手を除き、今キャンプ初めてフィジカル中心のメニューに。体幹などのフィットネスを行った後に、グループを分けてジャンプやターンなど軽めの負荷ながらサーキットトレーニングを実施した。1時間に満たない練習後は20分間の自主練習時間を設け、最後は室内に移り全員で揃ってストレッチを行って全メニュー終了。この日まで大きなアクシデントが出ることなく、キャンプ序盤は概ね順調に進んでいる。

 

 

下バナー

 

既存選手は1月1日までシーズンを戦っていたためオフが短く、結果的にコンディションを上げる作業があまり必要ない。そんな中でも、特に動きが目立つのは伊藤だ。昨季は負傷に悩まされ、リーグ戦でわずか2得点に終わった。しかしながら天皇杯準決勝、決勝での連発は記憶に新しい。天皇杯での好調をそのまま新シーズンにつなげられているようだ。

 

 

午前練習ではダイナミックなダイビングヘッドを決めるなど、とにかく体が動いている。「体重も軽いし、いい意味で無理をせず、適度な負荷をかけてやれている」と充実の表情で額の汗を拭う。2014年の加入以降、プレシーズンのキャンプは負傷や病気に苦しんでいるだけに、まずはアクシデントなく順調に準備を進めていきたい。

 

 

加入5年目で、気がつけば今年で30歳になるシーズンである。同部屋の栗原勇蔵こそ先輩だが、ピッチでは後輩に指示を与え、指導する場面も多く見られる。「高卒の選手も増えて、でもこの人数なので1年目から戦力になってもらわないといけない。そういう手助けをしていきたい」とチームを俯瞰して見ることができるのも彼の長所といえる。

異国の地でプレーした経験値の高さとそもそものパーソナリティのおかげで、監督交代という出来事にも「緊張は正直していない」と笑い飛ばす余裕がある。周囲に惑わされることなくマイペース調整でコンディションを上げていけば、結果はおのずとついてくる。新たな一歩を踏み出そうとしているマリノスにおいて、背番号16が確かな存在感を放っている。

 

 

 

 

 

tags: 伊藤翔

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ