中町公祐は胸を張って言った。「弱いチームにこういう戦い方はできない。この勝利は大きい」 [J15節 FC東京戦レビュー]
川崎フロンターレ戦に続いてFC東京戦も無失点で試合を終え、2試合連続で完封勝利を達成した。相手のシュートミスに助けられた部分も大きいが、守備陣に耐久力があったことも事実。例えばGK飯倉大樹はスリッピーなピッチコンディションにもかかわらず、ほとんどファンブルすることなくキャッチすることで相手に二次攻撃のチャンスを与えなかった。こういった小さな積み重ねが無失点という成果につながるのだろう。
リーグ戦では9ヵ月ぶりに先発出場した栗原勇蔵も、なんとか最後まで持ちこたえてくれた。大久保嘉人とピーター・ウタカというリーグ屈指の2トップを擁するFC東京は厄介な相手だったが、組織力という点ではフロンターレよりも見劣る。危険なのは前線にボールが入ってきてからで、その前の時点で全体がバランスを崩す場面はあまりなかった。優秀なゲームメーカーがいたらと思うとゾッとする。
中盤では扇原貴宏が存在感を発揮。攻撃時はへその役目を務めて長短のパスを両サイドに散らす。特にサイドチェンジの長いボールは、マリノスのボランチに足りなかった要素で、ワンステップで躊躇なく遠くへ蹴れることがプラスをもたらしている。そして守備時はフィルター役として機能。ワンテンポ遅れて対応する場面もあるが、そこからでも扇原は闘える。球際でも強さを見せ、危険な場面に幾度となく顔をのぞかせた。
殊勲の天野純は、意外にもこれがリーグ戦初ゴールとなった。今季はここまでフルタイム出場を続けているが、最近のパフォーマンスはどこか物足りなさを覚えた。「試合に出ることに慣れてはいけない」と本人は危機感を持ってプレーしていたが、それがなかなかパフォーマンスに表れない。しばしば相手選手と口論するシーンもあり、試合に出始めたばかりの選手特有の若さが垣間見えた。
このゴールがきっかけとなり、階段を駆け上がっていくことを期待したい。ゴールに勝るきっかけはない。落ち着きと余裕をもたらし、それは視野の広さにつながる。最近はトップ下でプレーし、天野自身も「自分はトップ下の選手だと思っている」と言い切る。だが、本質的な“職場”を見つけるのはもう少し先でもいい。いまはチーム事情によってトップ下とボランチの両方で腕を磨くべきだ。
チームとしては、これで3連勝を記録。その3試合すべてで相手チームよりもシュート数が少ないのは、偶然か必然か。中町公祐は胸を張って言った。
「失点ゼロで我慢できる強さ。運や不運もあるけど、最後のところで冷静に戦ってバタバタしない。相手がシュートを外した場面もあったけど、弱いチームにこういう戦い方はできない。失点ゼロで戦っているからこそ勝ち点3のチャンスがめぐってくる。この勝利は大きい」
押し込まれても泰然自若でいられるのは、経験あるベテラン勢の存在が大きい。特にセンターラインにはチームで4人(中澤佑二、栗原、中町、飯倉)しかいない30代が全員出場している。ベテランが縁の下の力持ちとなり、新進気鋭の若手が勝負を決める。課題はあるが、良好なチームバランスがこの日の勝因だろう。
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