「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

飯倉がシューズを取り出した下駄箱の番号は『10』。偶然ではなかった。「魂を受け継がないとね」 [宮崎キャンプ6日目レポート(飯倉大樹について)]

軸足を置いているフェニックス・シーガイア・リゾートには、豪華な温泉施設が完備されている。宿泊棟から長い廊下を歩き、エレベーターを降りて地上階へ。そこから風情豊かな渡り廊下を歩いた先に、複数の温泉が湧き出ている。選手は美しい木々に囲まれた露天風呂で疲れと傷を癒し、次の戦いに備える。泉質効能だけでなく、リラックス効果も得られそうな特別な空間だ。

チーム練習が午前のみに変更されたある日のこと。昼食を終えて少し時間が経ち、飯倉大樹は温泉へ向かった。同部屋の中島賢星は疲れ切った様子で眠っていたため、一人でゆっくり時間を過ごそうと考えた。露天風呂に下半身だけ浸かり、深呼吸を繰り返す。数分すると汗がじわりと出てくる。次に水風呂に肩まで浸かって血液の循環を促す。「水風呂が一番気持ちいい」。目をつむり、無心になることで疲労回復が促進される。

そんなとき、決まって思い出す顔がある。ジュビロ磐田に移籍した中村俊輔だ。飯倉は中村を兄のように慕い、中村は8歳年下の飯倉を弟として可愛がった。キャンプ中の食事会場では常に同じテーブルを囲む。温泉をこよなく愛する中村とともに、毎日何度も渡り廊下を歩いた。サッカーの話だけでなくプライベートの会話もたくさんした。

だが、今オフに中村は移籍を決断。12月の宮崎キャンプではすぐ近くにいた兄が、今回のキャンプにいない。飯倉はちょっとした違和感を覚えていた。

 

 

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