加入して感じたのは、選手たちが持っている横浜F・マリノスというクラブに対する誇りです。[渡邊泰基インタビュー(前編)]
実施日:9月6日(金)
インタビュー・文:藤井 雅彦
今季からトリコロールの一員となった渡邊泰基。
シーズン序盤からコンスタントに試合出場を続けていた中でアクシデントに見舞われる。
選手生命を左右しかねない出来事を乗り越え、先日のルヴァンカップ準々決勝で公式戦に舞台に戻ってきた。
「サッカー選手としての日常に戻ってきたことを実感できました」という言葉はとても感慨深く、同時に道のりが険しかったことも想起させる。
今だからこそ明かせる背番号39の言葉に、耳を傾けてほしい。
加入して感じたのは、選手たちが持っている横浜F・マリノスというクラブに対する誇りです
――横浜F・マリノスに加入して約7ヵ月が経ちました。渡邊泰基選手にとって、どのような時間でしたか?
「僕自身、完全移籍は初めての経験です。新しい環境で自分がどれだけやれるのか楽しみにしていたと同時に、少なからず不安もありました。自分の力を発揮するためには、チームの色を感じ取り、早く馴染まなければいけない。練習のリズムやクラブハウスなどの環境を知ることも含めて、振り返ってみると初めてのことが多かったなと感じます。
その中で、早くから試合に使っていただく機会がありました。ただ、なかなか自分が納得できるようなパフォーマンスを出せないもどかしさを抱えていたのが本音です。移籍の難しさでもありますが、自分としては1日でも早く慣れるために努力してきました。今では新加入選手という違和感は消えて、すっかり慣れました。それがプレー面にも良い影響を与えて、自然体で自分の特徴を出せるようになってきたと思います」
――同じサッカーでも、練習の内容や進め方はチームによって大きく違うものですか?
「過去に期限付き移籍を経験したことがあったのですが、その時は特に大きな変化や戸惑いは感じませんでした。ですがF・マリノスに加入した時は、まったく別のチームに来たような感覚になりました。決して悪い意味ではなくて、選手たちの意識の高さに良い意味で驚かされました。個々が持っているモチベーションやサッカーに向き合う姿勢など、これまでとはレベルが違うものを感じました」
――近年は常にタイトルを争っているチームで、サッカーに取り組む高い意識がチーム全体に浸透しているのが特徴ですよね。
「そういった面は間違いなくあると思います。プラスして感じるのは、横浜F・マリノスというクラブに対する誇りです。それは初めて練習した時にものすごく感じました。練習時間そのものは長くありませんが、みんな手を抜くことなく、ピリッとした雰囲気でした。でもピッチを離れれば仲良く和気あいあいとしている。そういった高い意識に自分も引き上げてもらっていると思います」
――馴染むまでに時間がかかりましたか?
「選手もスタッフもファミリーとして受け入れてくれたので、コミュニケーションの部分はとてもスムーズでした。ただ、新しい環境というのは住環境も含まれますよね。例えば、新潟と横浜では人の多さが違います(笑)。あとはスターバックスコーヒーにしてもコンビニにしても、都会は駐車場がない店舗も多くて……。新潟では車を停めてお店に入るのが当たり前だけど、そのあたりも少し違いましたね(笑)」
(植中)朝日に迎えに来てもらってご飯を食べて、帰り際にカフェしたことがありました。いま思えば貴重な息抜きでした。やさしい後輩に感謝です(笑)
――徐々にチームに慣れてきた春先に脳振盪のアクシデントに見舞われました。苦しい時間でしたか?
「脳振盪について詳しくなかったこともあって、初めのうちはあまり重大に考えていなかったんです。もともとの性格もあまり深く考え込まないタイプなので(笑)。
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