「このユニフォームを着てプレーをする責任、ピッチに立ってプレーをする責任を果たします。100%全力でやります。今の順位は居るべき順位ではありません」[西村拓真インタビュー]
【西村拓真選手インタビュー】
実施日:7月8日(月)
インタビュー・文:藤井 雅彦
苦しい状況のチームを救ってくれるのは、この選手かもしれない。
横浜F・マリノスに帰還した“漢”がヨコハマ・エクスプレスの単独インタビューに応じた。
セルヴェットFCへの期限付き移籍期間が終わり、彼の胸に去来する想いとは。
「ものすごく濃かったです」と充実の笑みをこぼす西村拓真が、スイスで過ごした約半年間で何を得て、どんな変化を見せてくれるのか、楽しみでならない。
登録上、出場が可能となる14日の鹿島アントラーズ戦を目前に控えた今の心境を語ってもらった。
――おかえりなさい。スイスで過ごした約半年は西村選手にとって、どんな時間でしたか?
「僕にとっては、ものすごく濃かったです。それが最初に出てくる想いです。難しい状況が長かったけれど、タイトルをひとつ獲れましたし、トータルで濃かったですね」
――もう少し具体的に濃さの内容を教えてもらえますか?
「最初は選手登録ができなくて、半年間試合に出られないかもしれないという不安から始まり、怪我をしている時間もありました。そういった困難も含めて、経験値として素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。この先のサッカー人生において間違いなくプラスに働く経験だと思います」
――自身で評価するとしたら、成功だった?
「成功ではないですね。成功や失敗で語るのではなく、経験できたことが大きいという表現が正しいと思います。満足も違いますし、もちろん悔しさもあります」
――手ごたえと苦労はどちらが大きかったですか?
「最初の頃は手ごたえを感じていました。ただ、途中からは怪我をした膝の痛みに耐えるのに必死でした。それもサッカー人生において良い経験になったと思いますし、そこから学ぶこともたくさんありました。もっと自分を大切にしないといけないな、と。今は痛みがない状態でプレーできているので幸せです」
――無茶してしまった?
「状況的に無茶しなければいけなかったですし、そこでやめるという判断はできませんでした」
――恐れながらも、西村拓真選手は無茶するイメージです。
「たしかにそうかもしれませんが、先々を考えると果たしてどうなのだろうと。後悔はしていないですが、学びました」
――今後はやめる勇気、休む勇気も必要?
「勇気というよりは判断ですね。しっかりとジャッジしなければいけない。日本と海外ではメディカルの考え方も違うので難しい部分もありましたが、結局は自分の力不足です」
――移籍する2月の段階で、期限付き移籍期間後のビジョンをどのように描いていたのでしょうか。
「結果を残して、もうひとつ上のレベルにステップアップすることを考えていました。リーグとしてもクラブとしても、もう一段上を目指していました。でも、まだあきらめていませんし、その目標は失っていません。自分が成長することを一番に考えているので、もっと高みを目指したい」
――貪欲に成長を求める姿勢はまったく変わらない。
「日々、自分をアップデートしていきたいですし、成長したい。どこへ行ってもやることは変わらないですが、より成長できる場所を求めていきたい。1回きりのサッカー人生なので、できることはすべて追い求めたいです。その時、場所は問いません。もちろんF・マリノスでも高いレベルを目指せますし、違う環境でも高いレベルを目指せるはずですから」
――スイスのリーグレベルは? あるいは特徴は?
「やっぱり種目が違うなという感じはありました。フィジカル的ですし、オープンな展開も多い。同じサッカーですけど、日本のJリーグとレベルの比較はできません」
――西村選手にとっても難しかった?
「難しさは少なからずありました。ロングボールも多いですが、そういった部分では苦労していません。それよりも、欧州でプレーしている選手はアタッカーなら、まず自分でやろうとする。パスありきのプレーではない。そこは自分に物足りなさを感じました」
――ちなみに、プレーしていたポジションは?
「1トップやストライカーのポジションで、とにかくゴールを取ることが仕事でした。F・マリノスでの役割とのギャップはありましたし、そのプレースタイルで勝負したかったという思いもあります。ただ、良い選手はどのポジションでも良い選手。ゴールへの意識に対する部分は学ぶものが多かったです」
――この移籍と時間を経て、どんな選手になっているのでしょうか。
「僕も全然分かりません(笑)。とにかく自分の良さを伸ばしていくことが一番分かりやすいと思います。ただ、ストライカーではないですね。求められればやりますが、ザ・ストライカーというのは違うと思います」
――もともとストライカーの選手では?
「やっていましたけど、1トップはあまりやっていません。セカンドストライカーのほうが自分に合っていると思います。でも、F・マリノスに加入する前はトップ下をやるとは思っていなかったですから、今後も分かりませんよ(笑)」
――手にした課題はどのような部分でしょうか? そして表現したいプレーは?
「得た課題は、自分で何ができるか。具体的には、自分でシュートを打てるのか、という部分です。それは試合だけではなくて練習からやっていきたいです。それがチームのためになりますし、自分のためにもなります。この課題は毎日の積み上げが大事だと思っています」
――以前よりも強気で強引な西村拓真を見られるかもしれない?
「どういった表現になるか分かりませんが、パスばかりでは崩せない時もありますし、結局のところ最後は個。そこは逃げたらいけないと思います」
――ゴールを決めるためにはシュートを打たなければいけない。シュートを打つためにはドリブルで突破して相手を剥がしたり、シュートコースを作るアクションが必要になる。ゴールから逆算して、そういったプレーが増えますか?
「自分でゴールが狙える状況を踏まえてパスを出すのと、最初からパスを出すのは、まったく違います。同じパスという選択肢でも意味合いが違う。優先順位や確率が高いことを分かっているならパスを出すべきだと思いますし、そういった場面での意識が重要です。最初からパスを考えるのではなく、まずは自分で行けるのかどうか。そこの意識は今までの自分には足りなかったです。最初からパスになっていたので、めちゃくちゃ学びました。チョイスを増やすところに向き合いたいと思います」
――プレーを見ていたら、そういう意識や思考が見えるかもしれないですね。
「自分のリミットを少しでも上げていきたい。高いレベルに行けば行くほど、それができないと生き残れないと感じました。両方できる選手が、ビッグクラブでプレーしている。そういう選手はどこでも活躍します」
――いよいよ横浜F・マリノスでのセカンドライフが始まります。成長や変化をチームに還元したいこと、できることは?
「この半年間で自分が大きく変わったとは思っていません。たったの半年間で変われるほど甘くない。得たものはあるけれど、変わるのは簡単ではないから。それでプレーが大きく変わったらおかしな話だと思いますし、これからの日々の積み重ねで少しずつ変わっていきたい。自分の役割を全うして、ピッチでの責任を果たした先に、チームの結果が良くなっていたら嬉しいです」
――横浜F・マリノスの試合や結果を気にしていましたか?
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