「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「次のラウンドに進めたことはすごく大きい」(吉尾海夏) トーナメント戦は結果こそが正義。 岐阜の夜空にトリパラが舞った [天皇杯2回戦/FC岐阜戦レビュー]

 

勝ち上がって試合数が増える意味と価値

 

吉尾海夏にとってのこの試合ラストプレーだった。

 

 

 

73分、ペナルティエリアの少し外から左足を振り抜く。「力はほぼ入っていなかったけどミートした」。真芯で捉えた鋭いシュートは矢のような勢いでゴールへ一直線。しかしポストを叩き、乾いた音が響く。惜しくも得点には至らなかった。

次の瞬間、膝から崩れ落ちた。「入ったと思った。手ごたえはあった。ああいうところ。決めて交代していれば、また変わったかなと」。交代ボードには無情にも25番が掲示され、うなだれるようにしてピッチを後にした。

 

 

 

 

対照的に、結果を残したのは途中出場の井上健太だった。

左ウイングで投入されると積極的に仕掛ける。それが実を結んだのは敗色濃厚だった後半アディショナルタイムのこと。「相手が縦を警戒していて、ズレてコースがあった。枠に入れることを意識して打った」というシュートが起死回生の同点弾に。

 

 

 

 

中断前の鹿島アントラーズ戦では自身のシュートのこぼれ球がアンデルソン・ロペスの得点につながって“アシスト”を記録。そしてこのゲームでは、ついに今季初ゴールが飛び出した。「自分が競争しているメンバーはいい選手ばかりで、そこに食い込んでいくためには数字が大事。取れてよかった」と安堵の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

この勝利で3回戦に進出。同時に昨日の試合を起点とする10連戦が確定した。タイトルに近づく半面で過密日程がさらに厳しくなってしまうのは宿命だ。でも試合数が増えることには大きな意味がある。

天皇杯は次のラウンドも下位カテゴリーの水戸ホーリーホックが相手なので、リーグ戦で出場機会のない選手にチャンスが訪れるだろう。今季初出場となった吉尾が「次のラウンドに進めたことはすごく大きい。試合数が増えれば自分自身のチャンスも増える。すべてにおいてポジティブだと思う」と得られた価値に頷いた。

 

 

 

 

チームとしてもACLロスを解消するための方法はタイトル獲得しかない。トーナメント戦は結果こそが正義。岐阜の夜空にトリパラが舞った。

 

 

 

教訓にしたい120分+PK戦

 

しかし、である。

 

 

 

格下相手に一度は逆転を許し、延長戦にもつれ込み、PK戦で辛くも勝利を手にしたという事実もある。客観的に見てもかなりくるしめられたのは間違いない。そんなことは外野がわざわざ言うまでもなく分かる話で、他ならぬ選手たちが強く自覚している。

確かな得点力と体を張ったポストプレーで存在感を示した植中朝日は自戒を込めて言った。

「カテゴリーの差がある以上は圧勝しなければいけない。勝ったのはもちろん良かったけど、勝ち方にもこだわらないといけない試合だった。そういう意味ではもっと危機感を持たないといけない」

 

 

 

 

勝利だけに満足していたら成長しない。序盤からビルドアップが機能不全に陥り、なかなか効果的な攻撃を展開できなかった。急造チームという側面はあるにせよ、それは言い訳でしかない。

ボールをいかにして前線へ運び、チャンスを構築するか。今季序盤から抱えている課題は依然として解消されておらず、岐阜戦では山根陸が個人的なアプローチを展開した。

「前半はボールを受けられないからしょうがないなと思って、いろいろ変えながらやっていた。ボールを受けられないと死んでしまう。ポジションを出し入れしながらやって、判断したからには責任を持ってプレーすることを考えた」

 

 

 

 

アンカーの山村和也、同じくインサイドハーフの榊原彗悟とローテーションしながらボールを受け、リズムとテンポを作る。中盤に流動性が生まれたことで、ようやくボールが前進していくようになった。

 

 

 

 

守備でも、リーグ戦と似たような形で失点しているのは気になるところ。最近は特にディフェンスラインの背後を簡単に疲れての失点が目立つ。対戦相手のレベルに関係なく似たような事象が起きるのは、マリノス自身の構造に改善の余地を残しているからだろう。

次ラウンド進出の切符を得たことに喜びながらも、課題や改善点から目を背けていたらチームはアップデートされない。もどかしさも残る120分+PK戦を教訓にして前へ進みたい。

 

 

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