「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中村俊輔の復帰。勝つためにどうこのチームに組み込むか [1st17節神戸戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,302文字-

早いもので今節のヴィッセル神戸戦をもって1stステージが終了する。1シーズン制で考えると、ちょうど折り返し地点を迎えたことになる。現在は勝ち点25で6位。首位の浦和レッズまでの勝ち点差は13で、2位のサンフレッチェ広島との差は8。良いとは言い切れないが、決して悪くもない。ここ4連勝後の2分1敗の影響で、ちょっと微妙な立ち位置に変わってきた。

前半戦のMVP候補であろう三門雄大が、神戸戦前に独自の勝ち点計算を披露した。

「1stステージ優勝はできなかったけど、これからは年間順位も見ながら戦わなければいけない。もちろん2ndステージ優勝が最高。ただ、それができなかった場合でもチャンピオンシップに出場して、最終的に1位になれる可能性がある。明日の神戸戦に勝てば勝ち点28になる。仮に後半戦も同じ勝ち点だと、合計して56。この数字は年間勝ち点の3位に入れるか微妙で、入れない可能性のほうが高い。だから2ndステージは単純に1stステージ以上の勝ち点が必要になる」

4-3-2-1_2015 神戸に勝利したと仮定した話で、もし負けてしまえば勝ち点25止まり。後半戦はさらに苦しい戦いになる。と、まぁ、当たり前だが勝ちたい試合というわけだ。

そのチームには良い話題と、ちょっと心配なニュースの両方がある。

心配なニュースを先にお伝えすると、木曜日の練習のウォーミングアップ中にアデミウソンが右太もも裏に違和感を訴え、クラブハウスに引き上げた。試合前日の金曜日も軽いランニングのみで調整しており、試合出場が微妙な状況だ。攻撃の軸になっているだけに、出場可否は気になるところ。状態についてエリク・モンバエルツ監督は以下のように語った。

「検査をして筋肉系の故障はなかったし、大きな問題ではない。試合前日はケアに努めて、試合当日に感覚をチェックしたい。それに応じてスタメンか、途中からの出場かを決めたい」

 遠征メンバーに帯同させることをほぼ明言したコメントだが、出場のタイミングはわからない。ちなみに今週はアデミウソンを左MFに置き、齋藤学を右MFに回す布陣を試していた。その場合の1トップは伊藤翔で、ラフィーニャは右足首痛が再発したため遠征に帯同しない。起用法と起用ポジションの両方で背番号39の動向から目が離せない。

明るいニュースは、中村俊輔の復帰である。今週は負荷のかかるメニューを含めて、与えられたトレーニングすべてを元気にこなした。モンバエルツ監督は「本当は7月の復帰を予定していた」と明かしたが、トレーニングの様子を見て復帰を前倒しすることに。もちろん先発ではなく、出場するとしても後半の残り時間が比較的少なくなってからだろう。アデミウソンの状態も少し関係するかもしれない。

 

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注目のポジションは、おそらくボランチだ。「とりあえずは、テクニックを生かすために少し下がった位置でプレーする。ピルロのようなイメージ」(モンバエルツ監督)。ファンタジスタではなくレジスタの役割を担うというわけだ。

24日に37歳の誕生日を迎えた背番号10はトップ下にこだわりを持ち、観客を魅了するプレーを欲求している。それこそが中村のサッカースタイルだ。指揮官が求める仕事と若干のズレがあるのは事実だが、いまのチームは中盤の底でゲームコントロールできるプレーヤーを求めている。今節は三門をトップ下に置き、喜田拓也と兵藤慎剛のコンビになるが、今後は中村もそのポジションの候補かもしれない。

神戸4-2-3-1 ただ一つ言えるのは、モンバエルツ監督は勝つために中村を起用するということ。中村個人のために試合に出場させることはありえないだろう。たとえば神戸戦で終盤に1点リードして、攻守ともに盤石ならば、わざわざ中村をピッチに送り込む可能性は低い。試運転させるとしたら、大量リードがあるときか、考えたくはないがその逆のとき。あるいはスコア状況に関係なくボールキープする時間が必要になったときで、つまり中村の能力を欲している場面だ。

アグレッシブさが売りのストロングスタイルのチームに、中村をどうやって組み込むか。チームの勝敗が重要なのは言うまでもないが、同時に指揮官の手腕に関心が集まる。勝つための采配がボランチ・中村だとすれば、歴史が動く瞬間は意外と近いのかもしれない。

 

【この試合のキーマン】
MF 6 三門 雄大

中村のベンチ入り、アデミウソンが負傷で出場微妙といろいろなニュースがある中で、チームとしての最大の変化は三門がトップ下に“戻る”ことだろう。松本山雅戦以来、4試合ぶりの2列目起用だ。
結果的にチームとして勝ち点を取りきれなかった最近3試合は、本来のポジションであるボランチでプレーしていた。しかし彼自身が良さを出せず、チームも躍動感を失った。攻守両面でスイッチ役になる背番号6が高い位置にいることで、全体の指針になる。当初は筆者も疑問視していたトップ下起用だが、ここ数試合の内容を見るかぎり、いまのチームはそちらのほうがうまく回るようだ。
三門が自分らしさを取り戻し、たくさん汗をかけばチームは自然と輝くはず。「やるべきことはハッキリしている」。そう話すダイナモに期待したい。

 

 

 

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