「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「愚直に真摯に続けて、日産スタジアムでゴールを取れた」 喜田拓也の左足が名手・ランゲラックが守るゴールを射抜く [J10節 名古屋戦レビュー]

 

苦しい前半を1失点でしのぐ

 

名古屋グランパスの圧力は想像以上だった。選手の言葉を借りれば「前半苦戦していると見られるのもわかるけど、やっている僕らは想定内」(喜田拓也)だったのかもしれないが、少なくともチャンスの数では圧倒的に相手のほうが多かった。

 

 

攻撃のスタート地点となるGK一森純は、球出しの難しさについてこう述懐している。

「一本取られたら終了のポジションで、相手には足の速い選手がいて、永井選手もマテウス選手も酒井選手も無理が利くので、相当慎重になった」

 

 

ミスが被決定機に直結し、そのまま失点すれば試合はもっと難しくなる。特にゲームのすう勢を決める先制点を与える展開は、絶対に避けたかった。慎重になるのも無理はないし、ここで慎重になったからこそ前半を1失点でしのげたとも言える。

苦しい展開に見えた前半をポジティブに振り返ったのは、喜田の相方である渡辺皓太だった。

「ポジティブな面も多かったかなと思っていて、崩せるシーンもあったので、その回数を増やしていければいいかなと思っている。自分たちからミスをしているのが多くて、縦パスの質の部分だったり、そこを潰されたり、一本のパスで裏返しにされるのが多かったので、そこはなくさないといけない。でも、そこよりもできたことを続けて、徹底することが大事かなと思う」

 

 

これぞ、アタッキングフットボールの精神だ。外から見ている以上に選手たちは慌てることなく、逞しく戦っていた。もちろんケヴィン・マスカット監督からも「前に行けるシーンがある中で、前にボールを運ばなかったシーンが前半多く見られたのがハーフタイムのミーティングであった」(松原健)。

 

 

一転し、後半の反攻につながっていく。

 

 

渡辺に続いて喜田も

 

リードして試合を折り返した名古屋は、意識的に守備の重心を下げた。引いても守り切れる自信があったのか、あるいは前半のプレッシングを90分間続けるのが難しいと判断したのか。いずれにせよ、その時点で後手に回った感は否めない。

 

 

相手の圧力が弱まり、徐々にビルドアップからチャンスを作れるようになったマリノスに同点ゴールが生まれたのは72分のこと。右サイドからのクロスがファーサイドに流れ、これを拾ったエウベルが冷静にゴール前へ。3列目から相手ペナルティエリア内に侵入した喜田拓也が左足を振り抜くと、名手・ランゲラックもセーブできないシュートがゴールネットを揺らす。

「ゴールは久しぶりで、なかなかゴールという形でチームに貢献できなかったのは逃げも隠れもしない自分の力不足。そこはしっかり受け止めて、ただ一番ダメなのでやめてしまうこと。愚直に真摯に続けて、日産スタジアムでゴールを取れた」

 

 

普段から居残り練習を続けている賜物だろう。シュートへの意識は確実に高まり、前節のヴィッセル神戸戦で渡辺皓太が2年半ぶりの得点を決めたことで、口には出さなくても欲が増すのは自然だろう。

2試合連続でボランチがゴールを記録し、厳しいゲームで勝ち点1を獲得した。その両方に大きな価値があり、長いシーズンの中で名古屋戦がターニングポイントになるかもしれない。

開幕から10試合を終えて、5勝3分2敗。最高ではないが、上出来だ。中盤戦に入っていく5月以降の戦いがさらに楽しみになった。

 

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