「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

『F・マリノスのゴールを守らせてもらう』のではなく『オレがF・マリノスゴールを守る』という強い気持ちでした [一森純インタビュー(前編)]

【一森純選手インタビュー(前編)】

実施日:3月21日(火・祝)

インタビュー・文:藤井 雅彦

 

ゴールマウスを守っている一森純に話を聞いた。

大きな責任とプレッシャーに圧し潰されそうになりながら必死にもがく彼は「とにかく逃げたくない」と繰り返す。

ようやくリーグ戦の勝利を掴んだ鹿島戦直後でも、柔らかな笑顔は一切ない。

F・マリノスのGKとしてピッチに立つ難しさ、苦しさをひしひしと感じながら、それでも歩みだけは止めない。

満開を迎えた桜の下で、背番号1が強い決意を語る。

 

 

 

――先日の鹿島戦は一森純選手にとってリーグ戦初勝利となりました。まずは率直な気持ちを聞かせてください。

「今回の移籍を決めた瞬間から、F・マリノスのために、そしてF・マリノスのサポーターのために、すべてを捧げるつもりでプレーしてきました。必要とされることがサッカー選手として一番幸せなことだけど、同時に弱さにも気づかされました。自分の想像以上に難しいスタートでした。

 サポーターの皆さんからすれば、突然よそ者が来て、なかなか結果で喜ばせることができませんでした。自分が本当に必要なのか、自分の存在意義が分からなくなる苦しい時期もありました」

 

 

 

――ようやく勝利を手にしたことで「安堵した」という言葉が聞けると想像していたのですが……。

「誰かが大きなミスをして試合に負けてしまったとしても、それは出場している選手全員の責任という考えがあります。だから反対に、鹿島戦の勝利も自分がチームを勝たせたとは思っていません。

 結果を出せたことでサポーターの方々が喜んでくれたのは本当にうれしかったです。ただ、それまで残念な思いばかりさせていたことが帳消しになるわけではありません。自分の中では『だから、何なんだ?』、『オレは何かしたのか?』くらいに思っていて……。

 

 

 鹿島戦で僕が急成長したわけではないですし、もっともっとやるべきことはたくさんあります。勝ったことで、より気持ちが引き締まったというほうが正確かもしれない。勝利のうれしさをたくさん味わうために、自分をもっと鍛え上げて、成長させて、チームが勝つ確率を上げたいと強く思っています」

 

――結果が出なかった試合と結果が出た試合。最も大きな違いは?

「メンタル面でそれまでの2試合(サンフレッチェ広島戦と北海道コンサドーレ札幌戦)と大きく違いました。鹿島戦では『F・マリノスのゴールを守らせてもらう』のではなく『オレがF・マリノスゴールを守る』という強い気持ちでした。それまでF・マリノスっぽいことをしようとし過ぎていて『自分は何のためにいるんだ?』と自問自答しました。大切なのはチームを勝たせることであり、そのために自分がゴールに一番近い位置でプレーするという意識で臨んだ試合でした」

 

 

 

――そのマインドセットに至った背景は?

「結果も内容も満足できるものではなくて、本当に眠れない時期を過ごしました。札幌戦後だけでなく、加入してからずっとです。ものすごい重圧を感じながらプレーして、自分のパフォーマンスを発揮できていませんでした。もがき苦しみました。でも、コーチやチームメイトが支えてくれて、サポーターが応援してくれた。もちろん家族も含めて、周りに助けられました。

 シゲさん(松永成立GKコーチ)やテツさん(榎本哲也アシスタントGKコーチ)は考えを押し付けるタイプではありません。いろいろなアイディアやアドバイスをくれて、選手が納得できるようにコミュニケーションを取ってくれます。F・マリノスのGKとしてピッチに立つ心構えをしっかり整えられたことが大きかったです」

 

 

 

 

寝る前に心臓がバクバクして、手汗をかく夜もありました。自分との戦いですね、これまでも、これからも。

 

――あらためて、リーグ戦開幕直後というイレギュラーなタイミングでの加入でした。難しさを感じた部分は?

「最初から『大丈夫やろ、何とかなるやろ』と軽く考えていたわけではありません。ただ、想像以上に難しかったです。

 

 

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