「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マエストロの野心 -中町公祐- 蒼井真理コラム

中町公祐「クレバーなマエストロ」

リーグ戦は残り4試合。中町公祐がようやく存在感を発揮し始めた。

シーズン前半、小椋の負傷離脱を受けレギュラーを確保しつつあったが、7節の磐田戦で右ふくらはぎを肉離れ。皮肉にも翌節の神戸戦から無敗期間が始まり、中町はチームの上昇機運から取り残された。ここまでリーグ戦先発は11試合、勝利はホームの清水戦と磐田戦の2試合だけということもあり、公式戦では中町の特徴や良さが観戦者に見えにくかった。

自己主張の強いパーソナリティ

しかし夏を過ぎた頃から、練習試合で圧倒的な存在感を発揮し始める。シーズン前半は物足りなさのあった運動量と球際の強さに改善が見られ、よりゲーム全般に関与し長短のパスで攻撃をリード。厳しい指示とダメ出しの声で、Bチームの王に君臨した。

中町は、マリノスでは稀有なパーソナリティを持つ選手だ。練習試合では比嘉の軽率な判断ミスを、「何やってんの?」と冷淡に突き放す一方、GK六反のポジション修正の指示は、「これでいいんだよ」と受け流す。ナビスコ杯の清水戦では、リードを許した試合終了間際にファウルを取られ、倒した相手選手に近づき謝罪の声をかけるかと思いきや顔を近づけ、「早く立て」と威圧した。最近のチーム練習ではドゥトラとの接触プレーに憤慨し、それを見たマルキーニョスに詰め寄られても、顔を突き合わせ一歩も引かない強情さを見せた。

エクスプレス7月のインタビューで中町はベルマーレ時代を、「納得いかないことは納得いかないと言わないと気がすまなかった」と振り返る一方で、「プライドが高いのは変わらないが、現在は経験を積みコミュニケーション能力が高まった」と語っているが、物事を「なあなあ」で終わらせない、自己主張の強さは変わっていない。

天性の「仕切り屋」が見せた賢慮

同インタビューで、ボランチとしての自身のカラーを問われ、「オレは”ゲームメーカー”。もっとコントロールしたい。”マエストロ”って呼ばれていたこともある」と答えた。実際、直近の練習試合ではその資質を強く示している。中町は、局面のプレーで自分の特徴を発揮するだけで満足する選手ではない。味方選手を指示して動かすのはもちろん、相手選手とゲーム展開も把握した上で、ピッチ上の22名と現象の全てを指揮下におき、ゲームそのものをコントロールしようとする。天性の「仕切り屋」、マエストロ(指揮者)そのものだ。

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