「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

こぼした涙はマリノスへの愛と感謝の裏返し。 「寂しいですね。でも今日でマリノスは終わり。新しいステップアップをしていきたい」 仲川輝人は笑った  [ASローマ戦レビュー]

 

リーグ戦さながらの強度と迫力で戦った

欧州の強豪クラブに対してマリノスらしさを見せつけたことが誇らしい。

W杯開催による中断期間中にわざわざ遠い日本までやってきたローマのコンディションは極めて怪しかった。それに加えて無駄に負傷したくないという心理も働き、モチベーションやテンションも上がらない状態だったのだろう。トップフォームに程遠いのは明らかだった。

でも、それよりもマリノスのサッカーを貫いてシーズンを締めくくったことに価値がある。

 

 

立ち上がりからリーグ戦さながらの強度と迫力で戦った。特に守備時の出足の鋭さには目を見張るものがあり、覚醒した渡辺皓太が中盤でファイトし、負傷の癒えた小池龍太が真剣な表情で仲間たちとポジション修正を図る。あくまでも勝利を目指し、その方法論としてアタッキングフットボールを追求した。

 

 

9分、ショートCKの流れから永戸勝也のクロスに対し、ニアサイドに飛び込んだエドゥアルドがヘディングで決める。シーズン終盤、急速にフィットしてきた永戸の存在感は増すばかりで、持ち前のキック精度も不変。来季は2桁アシストも夢ではない。同じくシーズン後半に目覚ましいパフォーマンスを見せたエドゥアルドも、セットプレーから得点源になるだろう。

 

 

前半終了間際には西村拓真が魅せる。連動したプレスによって相手陣内高い位置でボールを奪い、エリア外から右足を振り抜く。地を這うようなミドルシュートがゴールを襲い、GKの反応が遅れたことでゴールにつながった。背番号30は後半にもエリア外から強烈な一撃を放っているように、ここへきてシュートレンジを広げている。地道なトレーニングがプレーの幅を広げ、それによって得点パターンも増える好循環に入った。

 

 

水沼宏太の折り返しを仕留めた松原健のゴールも素晴らしかった。マリノス加入後は年間1ゴールがお決まりになっていたなかで、最後の最後に“今季第2号”が飛び出してフィニッシュ。迷いなく足を振れるのはDFとしての大きな付加価値で、来年2月に30歳を迎える選手がまだまだアップグレードできる可能性を示した。

 

 

 

マリノスでのラストゲームとなった選手たち

 

後半途中からは選手を大幅に入れ替えた。そのためチーム力を維持するのがさすがに難しかった。統制の取れなくなったアタッキングフットボールが脆いのは過去の事例からも明らかで、疲れているローマもその隙を見逃してくれなかった。

可能性を示した選手として名前を挙げたいのは山根陸。正しいポジショニングと体の向きがあるからこそボールを奪われない。スムーズに攻撃を前進させ、堂々とプレーできる。世代別代表で培ってきた経験も生きているのだろう。貪欲な姿勢がさらに増しているようにも感じる。

 

 

 

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