「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

相手が優勝争いに沸き立っているのを眺めるだけなのは、なかなかに腹立たしい [J31節浦和戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,305文字-

 

対戦相手の浦和レッズは前節終了時点で首位に立っているチームだ。今シーズンは開幕から常に上位を争い、課題とされていた守備には西川周作の加入もあり、徐々に磨きがかかってきた。ただ、ここ数試合は思うように勝ち点を伸ばせず、足踏み状態だという。さらにチーム得点王・興梠慎三の離脱というアクシデントにも見舞われ、上空には暗雲立ち込めている。

浦和3-4-2-1その歩みは昨シーズン終盤マリノスに似ていないとも言い切れない。シーズンを通じて優勝争いの主役を演じたが、夏を越えたあたりから少しずつ減速し、すると11月に大黒柱の中村俊輔が胆のう炎を発症して一時離脱した。そのタイミングで対戦したのは個の能力に優れる名古屋グランパスだった。中町公祐をトップ下で起用する奇策に出るも、全体的には力を出し切れずに敗れた。

マリノスは名古屋になれるか。そんな一戦だろう。最近常々感じるのだが、チームが上位にいなければおもしろくない。あのしびれるような緊張感を味わった翌年だからこそ、その反動は大きい。だから浦和が羨ましい。でも相手が優勝争いに沸き立っているのを眺めるだけなのは、なかなかに腹立たしい。そう思っている選手がチーム内にどれだけいるか。小林祐三は「優勝するために、ここから勝ち点を積み重ねていくのがどれだけ難しいか感じているタイミングだと思う」と浦和側の心情を代弁した。その刺客にならなければいけない。

 

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依然としてチーム状況は思わしくない。特にボランチがいない。前節は佐藤優平をボランチ起用したが、3連勝になるはずの勝利を手にできなかった。迎える今節は本来CBのファビオをボランチで起用する。これまで試合終盤にボランチの位置に入ることはあっても、試合開始から中盤の底を務めるのは初だ。「能力は高い」(中澤佑二)とはいえ、ボランチとしての性能はプレーしてみなければチームメイトでさえもわからない。
人がいないのは前節も今節も同じだ。それなのにボランチの人選が変わるのはなぜなのか。セレッソ大阪戦での佐藤のパフォーマンスはおそらく及第点だった。彼をボランチ起用すれば、良くも悪くもあれくらいのプレーだ。そういった采配を振るったのはほかならぬ指揮官である。満足しているなら今節も続けるはず。だが、現実は佐藤を再び2列目に戻し、経験値ゼロに等しいファビオを起用する。栗原勇蔵の復帰という事情はあるにせよ、彼は前節もベンチ入りしていたのだから、セレッソ戦でもファビオをボランチ起用できなくはなかった。

4-3-2-1_ファビオボランチ残念ながら相手を見て決めた采配と言わざるをえない。ボールポゼッションに優れ、1トップ2シャドーのコンビネーションを得意とするのが浦和だ。それに対して守備を過度に意識した結果、「ボールを奪う範囲が広い」(樋口監督)と評価するファビオをボランチで使うわけだ。もう『自分たちのサッカー』というこだわりなど、どこかへ飛んでいってしまったのだろう。相手に合わせた消極的な采配でしかない。マイナーチェンジではなくスタイルの放棄だ。ファビオが周囲の選手と連動し、積極的なプレスでボールを奪うシーンなど想像できない。あるとすれば個人能力の高さを生かし、相手が突っ込んできたところを頑強に奪い取る場面だろう。

こういった不明瞭な起用法ばかりだから、今シーズンはスタメンが決まらず、チームのパフォーマンスが安定しない。残念ながら、もう限界は見えてしまった。これではチームとしての上積みは望むべくもなく、選手には不満とストレスだけが溜まっていく。人材と選択肢が増えれば増えるほど、残念ながら使いこなせないのだ。

もちろん、そういった采配と試合の結果は一線を画する場合も多い。対戦相手が首位の浦和で、スタジアムにも多くの観客が訪れるだろう。本番に強い選手たちが集中力を発揮すれば、マリノスの勝利は意外と近い。ファビオのパフォーマンスはまったくの不透明でも、中澤や栗原、あるいは小林祐三には浦和のスタイルに対して免疫がある。

攻撃陣の中村俊輔や齋藤学が快活なプレーで、一度でいいからゴールネットを揺らしさえすれば、勝利の凱歌はトリコロールに上がるはずだ。ただ、それが未来につながるとは言い切れない。

 

 

【この試合のキーマン】
DF 15 ファビオ

ボランチ不足、さらにレギュラーCB栗原勇蔵の復帰を受けて、初めてボランチとして先発出場する。正直やってみなければわからない部分ばかりだが、性格的にCBとボランチの両方を器用にこなせるタイプとは思えない。むしろ仕事を限定したがほう能力を発揮できるタイプだろう。
コンビを組むのはいつの間にかファーストボランチに昇格してしまった兵藤慎剛だ。ファビオが主導権を握るわけがなく、かといって兵藤が相方に対して積極的に指示を出すわけでもない。彼らがしっかりと仕事を果たすには、最終ラインからのコーチングが欠かせない。
浦和戦の陣形で鍵を握るのは、いつだって1トップの背後に位置する2シャドーだ。裏返すと、封じるため勝つためには、マリノスのダブルボランチの働きが欠かせない。CBとして優秀なファビオは、ボランチでも優秀な選手になれるだろうか。

 

 

 

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