強化部に驚きを与え、今後の方向性を若干変えた起用法があった。西村拓真のトップ下である [検証 : 2022シーズン優勝への軌跡 (3) 強化部編]
歓喜はいかにして、もたらされたのか。
全3回に分けて、優勝の決め手を検証していく。
最終回は、今季も敏腕ぶりが光った強化部の視点から。
編成時点で思い描いていた青写真を探ると同時に、目まぐるしく迫ってくる公式戦をこなしながらチームはどのように変化していったのか。
来季にもつながっていくマリノスの現在地を探っていく。
ロペスとエドゥアルドを獲得した本気度
最高の結果で終えたので忘れがちだが、今季のマリノスは誤算からスタートしている。
前田大然のセルティック移籍は昨夏時点で内定していたので大きな問題ではなかったが、チアゴ・マルチンスの電撃移籍が与えるショックの大きさは計り知れなかった。
移籍の事象そのものだけでなく、正式発表された2月7日という日付けも非常に危うい。開幕まで2週間を切り、始動から考えると3週間半以上が経っていた。どれだけ優れたセンターバックを補強できたとしても、開幕までにフィットさせるには物理的に時間が足りない。
前田とチアゴが抜けた穴をいかにして埋め、次のマリノスを作っていくか。新シーズン開幕を迎えるにあたっての最重要課題と直面する。そこで強化部が例年とは異なる動きを見せた点に着目したい。
補強したのはアンデルソン・ロペスとエドゥアルドだった。前者はサンフレッチェ広島や北海道コンサドーレ札幌で一定数のゴールを決めたストライカーで、後者は柏レイソルや川崎フロンターレ、そして直前までサガン鳥栖でプレーしていた経験豊富なセンターバック。いずれもJリーグでの実績に長ける選手である。つまり日本への適応に不安がなく、計算できるプレーヤーだった。
コロナ禍の影響によって日本政府が新規外国人の入国を規制していた当時の状況も大きな理由に。就労ビザの取得どころか入国すらできないのでは、補強にならない。そこで昨夏まで札幌でプレーしていたことでハードルをクリアできるロペスに早い段階から注目し、チアゴ移籍に備えて早くからエドゥアルドにアプローチしていた。
それぞれタイプこそ異なれども優秀な選手を獲得したことは今季の活躍を見れば分かるだろう。ただし実績ある両選手には移籍金や年俸などコストがかかったのも事実。ブラジルからさらなるステップアップを目指して来日してきた選手とは類が違う。
肩書きとしては強化責任者も担っていた黒澤良二社長は「ディールが発生する時点でトントンになるように」と明かしたように、前田やチアゴの移籍で大きな移籍違約金が入り、想定していた年俸も浮いた。それらが原資となり、日本とJリーグに慣れている実績ある外国籍選手に投下する。
ここ数年にはなかった補強に、フロントの本気を見た。
西村のトップ下起用がターニングポイントに
もっとも開幕前の下馬評は決して高くなかった。強化・編成を担う部門担当者も慎重な姿勢を見せていたのが実際のところで、プレシーズンの段階ではとにかく不確定要素の多いシーズンだった。
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