「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

OBのひとりとして感謝を伝えたい。そして一応の先輩として、本当に誇らしい。 [下平匠の「匠の視点」]

 

匠の視点vol.10

構成:藤井 雅彦

 

 

OBの下平匠氏が横浜F・マリノスについて語り尽くす『匠の視点』。

2月にスタートした当連載は、ちょうど節目となる10回目の今回でマリノスのリーグ制覇を見届けることになった。

あまり動じないタイプの下平も、試合終了の瞬間にはテレビの前で自然とこみ上げてくるものがあったという。

歓喜の瞬間から、ちょうど1週間が経過した。

OBとして、先輩として、そしてひとりのサポーターとして、大団円の感動と興奮をあらためて振り返ってもらった。

 

 

 

特徴や武器を持った選手たちがフォア・ザ・チームの精神でプレーする。
そりゃあ、強いわけですよ!(笑)

 

ヨコハマ・エクスプレスの読者のみなさん、そしてマリノスサポーターのみなさん。マリノス、やってくれました! Jリーグ優勝、年間チャンピオンです!! 本当におめでとうございます!!!

 

 

 

他会場の結果は気にせず、自分たち次第で優勝できる状況で迎えた最終節。コントロールできる部分だけに集中するとは言っても、結果によっては勝ち点が並んで得失点差勝負になる可能性もありました。大一番で目の前の試合だけに集中するのは、簡単なことではないと思います。

実際、神戸戦の立ち上がり数分を見て「今日はさすがに硬くなっているな」と感じたのは僕だけではないはず。選手心理としては、普通にプレーするのが一番難しいことですから。

カップ戦と違ってリーグタイトルは一過性の勢いだけでは勝ち獲れません。年間を通して安定したパフォーマンスが必要で、結果が出ない時期も一体感を失わず、もしケガ人が出てしまった時はほかの選手がカバーする。これが優勝するために必要な要素であり条件と考えていますが、今年のマリノスはこれらすべてを体現していました。

ゲーム序盤、VAR判定でゴールが取り消されてしまって少し不安になりましたが、そのあとは本当に“いつも通り”のマリノスを観ることができたと思います。それぞれの選手が与えられた役割を果たし、その中で自分の判断でプレーの選択や位置を変えていく。ボールを奪われたら、すぐさま切り替えてボールを蹴らせて回収する。あれだけ個のレベルが高い神戸相手に、後半はほとんど何もさせませんでした。

途中から出場したテルがゴールを決めて、この試合は出番がなかったマツケンがベンチからチームを鼓舞する。最後はベンチ外の選手も肩を組んで飛び跳ねていました。全員がチームのことを最優先に考えるのは想像以上に難しいこと。チームを輝かせるために個人が輝いたという順番に価値があります。

 

 

年間通して圧巻のパフォーマンスを見せてくれた岩田智輝選手はMVPにふさわしい活躍でした。献身性とユーティリティー性が魅力の小池龍太選手は同じサイドバックとして尊敬しています。得意分野のオフェンスだけでなく守備などチームのタスクも実直にこなしてくれる前線の外国籍選手たちの存在も大きかった。

 

 

個人名を挙げればキリがありません。特徴や武器を持った選手たちがフォア・ザ・チームの精神でプレーする。そりゃあ、強いわけですよ!(笑)。何度も何度も同じことを言っている気もしますが、それだけの今年のマリノスはチームとして強かった。これに尽きると思います。

試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間は、自然とこみ上げてくるものがありました。最初はグッとこらえていたのですが、この感情を大切にしたほうがいいなと思って、テレビの前で少しだけ泣いてしまいました(笑)。

 

 

優勝が決まった翌日、久しぶりにLINEを送りました。
キーボーからの返信内容は……

 

キーボーがシャーレを掲げる姿を見て、本当に頼もしいキャプテンに成長したな、とあらためて思いました。

風呂場で冷水をかけられたり、変なアイコラ画像を作られたりしていた、かつてのイジられキャラの彼はそこにはいなくて、誰よりも大きな背中でチームを引っ張っていた。

 

 

とにもかくにも真面目な性格です。インタビューや普段の振る舞いではまったく見せませんが、キャプテンとしてファンやサポーターの期待、会社からの期待、いろいろなものを背負っていたはず。誰よりも大きなプレッシャーや重圧と戦っていたのでしょう。

ホーム最終戦セレモニーでのスピーチも素晴らしかったけど、若い頃の彼を知っている僕からすると、どこか余所行きだった気もします。これでようやく肩の荷が下りて、素のキーボーが見られるのかな。

優勝が決まった翌日、久しぶりにLINEを送りました。

 

 

 

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