「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

柏戦の藤田チマ選手は、長距離移動や時差ボケもあった中でも圧倒的な運動量。終盤、サイドバックに移ってから前方のテルを追い越していくランニングはなかなかできません [下平匠の「匠の視点」]

 

匠の視点 vol.5

構成:藤井 雅彦

 

 

OBの下平匠氏が横浜F・マリノスについて語り尽くす『匠の視点』。

第5回は快勝した柏レイソル戦を中心に振り返る。

この試合で下平氏が感じたマリノスの“ひと工夫”とは。

最高の勝利を手繰り寄せた選手たちのアクションを紐解く。

 

 

 

私事ですが、南葛SCがリーグ戦初勝利を挙げました!

 

ヨコハマ・エクスプレス読者のみなさん、こんにちは。南葛SCの下平匠です。

いったい梅雨はどこへ行ってしまったのでしょうか。連日のように気温35度前後って、もう真夏ですよね(笑)。

Jリーグもナイターゲームが増えてきました。みなさんはデーゲームとナイトゲーム、どちらが好きですか?

僕はナイトゲームが好きです。理由は時間とともに位置関係の変わる太陽の眩しさがないから。ナイター照明は角度が常に一定で変わらないんです。

でもサポーターの方々は、ナイトゲームだと翌日のことを少し考えてしまうかもしれません。特に日曜日が試合だと、月曜日からの仕事を考えて憂鬱な気持ちに……。

だからこそ選手たちはファン、サポーターに感謝しないといけないですし、なるべくたくさんの勝利を届けたいですね。

僕が所属する南葛SCは、昨日の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎戦でリーグ戦初勝利を挙げることができました。第7節にしてようやく味わう白星の味は最高の一言です。しかも年に一度あるかどうかという僕のゴールが決勝点というオマケ付き。こんな時くらいは興奮気味に報告することを許してください(笑)。

 

南葛SC公式サイトより

 

それと全国社会人サッカー選手権大会出場も決まっていて、この大会を勝ち上がればJFL昇格につながります。詳しくは僕の個人サイトにも載っているので、よろしくお願いします。ブログなので、そのほかの記事も読んでみてください。

 

 

 

 

天皇杯敗退によって重要度が増した柏レイソル戦

 

前置きがずいぶん長くなりましたが、今回は敗退となってしまった天皇杯と4-0で快勝した柏レイソル戦についてお話したいと思います。

まず栃木SCと対戦した天皇杯ですが、ハイライトを見たかぎりでは前半だけで4回以上の決定機がありました。しかもGKとの1対1も複数回ありました。そこを決めきれなかったことが直接的な敗因です。

相手GKがノってしまった部分もありますし、ピンチがありながらも無失点でしのげているチームは「もしかしたら勝つチャンスがあるかも」とモチベーションが高まる。その結果、スーパーゴールで先制して守りを固めるという、天皇杯にありがちな展開になってしまいました。

マリノスにとっては、タイトルをひとつ失ってしまったことになります。4冠のチャンスもおおいにあっただけに、ショックの度合いはかなり大きかったのではないでしょうか。

同時に、若い選手はアピールする機会が減ってしまったと肩を落としているかもしれません。事実として試合数は減ってしまったわけですが、そういったマインドではなく、「残された3つの大会で自分が結果を残す!」という気持ちを持つことが大切になります。

チームとしては、落ち込んでいる暇はなく、中2日でレイソル戦でした。大会は違えども、連敗だけは絶対に避けたい。試合の中でのワンプレーが流れを変えたりしますが、連敗もまたチームの雰囲気をガラッと変えることがあります。また、黒星が続くと自分たちがやっていることに対して疑心暗鬼になったりする場合もある。そういった意味でも、上位対決になる土曜日のレイソル戦はすごく重要な試合でした。

 

 

ほとんど隙が見当たらない、ほぼパーフェクトな試合運び

 

レイソルはマリノスの良さを消すような布陣で臨んできました。分析や対策に長けるネルシーニョ監督らしい采配です。

5バック気味にDFを並べて、前線にはスピードのある選手を配置。マリノスは人数をかけて攻撃を仕掛けてくるので、奪った時に手数をかけずに手薄なディフェンスラインの背後を攻める。そんな意図のように感じました。

 

 

対するマリノスは、3トップが水沼宏太選手、レオ・セアラ選手、エウベル選手という組み合わせ。ボランチは岩田智輝選手と藤田譲瑠チマ選手のコンビという布陣でした。

 

幅と深さを使いたいマリノス

      vs

幅はいいけど深さは使わせたくないレイソル

 

僕にはこんな構図のゲームに見えました。

実際、立ち上がりはレイソルにうまく守られていた印象があります。ウイングバックの選手はマリノスのウイングに対して縦を抑えながら、タイトにマークに来る。そのため攻撃の深さを使うのが難しい展開に。

ただ、この日のマリノスは“ひと工夫”がありました。

ピッチ内の選手が判断したのか、あるいはチームとしての分析があったのかはわかりません。ですがレイソル戦でのマリノスは、いつもより外から中向きに潜る動きが多かった。いわゆる「パスを出して、落としてもらってもう一度ボールを受ける」という動作を、外から斜め前に対して行っていました。

この類のプレーはブラジル人選手が得意とするところ。マリノスで言えばエウベル選手やマルコス・ジュニオール選手、僕の経験ではガンバ大阪で一緒にプレーしたルーカス選手もすごくうまかったです。

 

 

1点目はマツケン(松原健)が幅を取り、中央の空いたスペースに水沼選手が入り込んで藤田選手の縦パスを引き出しました。そしてレオ選手が斜めに走り、空いたスペースに西村拓真選手が顔を出す。全員が連動した見事な先制点でした。

 

 

3点目はスローインから生まれた得点でしたが、外ではなく中へ潜り込にはむ動き共通している点がありました。レイソルとしては中盤の3枚で横幅すべてを守るのは苦しい。一度視線をサイドに振られてから守らなければならないので、対応がとても難しかったのではないでしょうか。

4得点に隠れがちですが、この試合では守備も素晴らしかった。

 

 

 

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