「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

準備万端だったとは口が裂けても言えない [天皇杯3回戦北九州戦レビュー] 藤井雅彦 -1,793文字-

 

結果がすべてである。トーナメントを戦うたびに樋口靖洋監督は自らに言い聞かせるように言葉を発していた。『結果>内容』。これがトーナメント戦の本質で、敗れてしまえば内容など意味はない。

4-4-2_藤田_伊藤 結果は周知の事実だろう。マリノスまさかの敗北を喫した。相手はJ2に籍を置くギラヴァンツ北九州である。彼らは統制のとれた素晴らしいチームであった。J2で4位という位置につけているのも納得だ。

でも、それが負けても許される理由には一切ならない。この試合の戦術や戦略について多くを語ろうとも思わない。それらで上回っていたのはおそらく北九州だが、個の能力やその総和は間違いなくマリノスが上だった。そうでなければ延長戦を含む120分間戦ったとはいえ、30本のシュート数は記録できないだろう。

「敗因を一つだけ挙げるのは難しい」と栗原はうつむいた。しいて言うならば、マネジメントの拙さを挙げざるをえない。

すでに各種報道でご存知だと思うが、試合前日の時点で主力組にラフィーニャの姿があった。登録の都合で試合に出られないにもかかわらず。こんな凡ミスを犯しているのだから、準備万端だったとは口が裂けても言えないだろう。逆に言えば、こういった雑音を封じるために、絶対に勝たなければいけない試合であった。

 

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ラフィーニャの代役として先発でピッチにたったのは藤田祥史である。しかし彼は前半45分で交代を命じられている。樋口監督いわく「思ったよりもスペースと時間があって、相手の間を使えた」という観点から、後半は端戸仁を1.5列目に配置した。これもマネジメント不足を露呈する結果でしかなく、簡単に言えばスカウティングができていない動かぬ証拠でもある。仮に試合が始まってから分かった事実だとしても、このタイミングで藤田を交代させることが本人、そして周囲の選手の心理にどのような影響を与えるのか。少し考えれば分かることだと思うのだが。

2枚目の交代カードは藤本淳吾→天野純だった。なぜ負傷を抱えながら先発した齋藤学が交代の対象ではなかったのか。それについては「学の交代も考えたけど、そうすると2列目に同じタイプの選手が並んでしまう」と説明している。とはいえ2-1で1点リードしている状況なのだ。当然、週末を見据えたマネジメントがあるべきで、齋藤の負担を考えれば酷使すべきではなかった。結果、彼は120分間プレーしなければならず、誰よりも疲労を抱えてリーグ戦に臨むわけだ。

試合翌日、樋口監督は冷静な口調で昨夜の敗戦を振り返った。

「自分の中で長いシーズンの中でチャレンジしなければいけないタイミング、試合があると思っている。そこでの後悔はない。でもそれを結果につなげることができなかったのは反省しないといけない。プラスに考えれば得たものもある。期待通りに行かなかったこともプラス思考に考えている」

 つまり『この敗北によって選手の見極めができた』というポジティブシンキングだが、そんなもののために公式戦、いや、一つの大会を棒に振ったのであれば、これ以上の失策はない。プレシーズンや、シーズン中だとしても練習や練習試合で行うのがプロの仕事であろう。

筆者はこの場で、サッカーは相手あってのスポーツと何度も語っている。ただし、今回の相手は明らかな格下だった。自分たちに原因がなければ負ける相手ではない。北九州は持てる力以上のものを出して金星を挙げたが、それはマリノスに油断や隙、あるいは失策などの落ち度があったからでしかない。

 

 

 

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