「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

フロントと現場がしっかりと連係し、現在のマリノスが成り立っている。 グループステージ6試合からマリノスの強さの根源が垣間見えた [ACL6節 全北現代戦レビュー]

 

 

最終戦でもアタッキングフットボールを追求

 

何度も何度も確認を繰り返した勝ち上がり条件の整理など、すべては徒労であり、心配は杞憂に終わった。

マリノスは最終戦の全北現代戦で勝利できなかったものの、スタイルを貫いた末の引き分けで勝点1を獲得。グループ首位の座を堅持し、見事にノックアウトステージ進出を決めた。

 

 

実質的には開始4分の先制ゴールで、権利をほぼ手中に収めたと言っていい。相手のビルドアップに対して最前線からプレッシャーを仕掛け、マリノスにとってのアタッキングエリアで藤田譲瑠チマがインターセプト。そのままダイレクトでパスを送った先にいたアンデルソン・ロペスが間髪入れずに鋭く左足を振り抜くと、ゴールネットが揺れた。

 

©Y.F.M

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この時点でグループ2位になった場合の比較対象チームであるメルボルン・シティを総得点で上回り、3失点しなければグループステージ突破を決められる有利な条件に変わった。戦前から述べているように、自分たちにとって都合の良い条件を作れるのは自分たちだけ。運ではなく実力だ。

もっとも選手たちは満足していなかった。すべての試合で勝利を目指し、そのためにアタッキングフットボールを追求しているからだろう。

小池龍太の言葉が印象的だ。

「こういう試合で勝ち切る力や、相手に何もさせない力、そういうものはもっと成長させなきければいけないし、自分たちが成長するべき方向はみんなが理解していると思う。それをこのACLで感じられたこと、次のJリーグにつなげられることが、この大会を通じて得た収穫かなと思う」

 

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4勝1分1敗という成績もさることながら、チームの一体感や団結力がベトナムの地で光り輝いた。その上で、反省点がゼロになることもない。このチームはもっと上へ行けるはず。選手たちはそう信じている。

アジア制覇を目指す戦いはまだ道半ば。8月に待っている次のステージに向けて、もっともっと力を養いたい。

 

 

選手の序列と総力戦

 

登録メンバー30人中24人を起用して中2日の6連戦を乗り切った。GK高丘陽平だけが全6試合にフル出場し、フィールドプレーヤーは登録26人中23人が試合に出場してプレータイムを分け合った格好だ。

 

 

ケヴィン・マスカット監督は「全員を信頼している。全員の力が必要だ」と事あるごとに訴えている。それはACL開始以前から異口同音で、ケガ人続出に頭を悩ませたリーグ序盤も同じように多くの選手をピッチに送り出した。まさしく信頼の表れだろう。

一方で、少なからず序列が見えてきた大会でもある。

 

ヨコエク

 

全北現代との最終節は2点差での負けが許されなかった。当然、帰国後のリーグ戦を見据えたメンバー編成はできない。そこでホアンアイン・ザライFC戦から中2日で先発したフィールドプレーヤーが4選手いた。小池龍太、喜田拓也、岩田智輝、エウベルである。

 

 

それぞれ異なるポジションの選手だが、ピッチ内における必要度がかなり高い面々と言える。「どんな監督にも頭の中には序列があると思います」とはヨコハマ・エクスプレスにコラムを寄稿している下平匠氏の言葉。これからのリーグ戦でも主軸を担っていく顔ぶれだろう。

ただし絶対は存在しない。センターバックだけでなく左サイドバックもこなせる角田涼太朗がメキメキと頭角を現し、ダイナモの藤田譲瑠チマがここへきて急成長を遂げている。反対に、ベテランの實藤友紀や水沼宏太もチームに必要不可欠な存在であることを自らのパフォーマンスで示し、さらに全体の雰囲気を引き締めてくれた。

 

 

強化部がオフにセンターバックを補強しなかった理由もここにある(エドゥアルドの補強はチアゴ・マルチンスの電撃移籍による穴埋めの意味合いが強い)。角田の起用機会を奪うのでは成長につながらない。あるいはベテランの實藤との契約更新交渉を迅速にまとめることで、最終ラインに安心感が生まれる。

フロントと現場がしっかりと連係し、現在のチームが成り立っている。グループステージ6試合からマリノスの強さの根源が垣間見えた。

 

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