「184cmで左利き。他のJリーグのチームを見ても、このスケールの選手はなかなかいません」[下平匠の「匠の視点」 vol.3]
匠の視点
構成:藤井 雅彦
OBの下平匠氏が横浜F・マリノスについて語り尽くす『匠の視点』。
第3回は4月に入ってからの戦いぶりを徹底解剖する。
ACLのグループステージ前半3試合すべてをチェックしている下平氏の目に留まったのは、先日のシドニーFC戦で大活躍したあの選手。
「このスケールの選手はなかなかいません」
急成長を遂げている理由やポテンシャルの高さなどを、余すことなく語ってくれた。
敗れた広島も「決して悲観するような内容ではなかった」
みなさん、こんにちは。南葛SCの下平匠です。
おかげさまでこのコラムも無事に第3回を迎えることができました。前回の記事に対してのたくさんのコメント、リプライ、リツイートなど、本当にありがとうございます。反応をもらえることで励みにもなりますし「そういう視点もあるのか」と自分自身の気付きにもなっています。
4月も終盤に入っていますが、皆さんいかがお過ごしですか? 新学期、新しい職場など環境が変わった方もたくさんいらっしゃると思います。自分でも気がつかないうちに頑張り過ぎている場合もあるので、体調にはくれぐれも気をつけて充実した毎日を過ごしたいですね。
そういう僕も少しだけ変化がありました。
まずはサッカーとは関係ない部分ですが、3月末で社会人になって1年が経ちました。できること、できないこと、調べればわかることなど、今の自分にできる範囲がなんとなくわかるようになってきました。守備範囲を広げつつ、得意分野を見つけてどんどん伸ばしていきたいですが、急には伸びないのでコツコツ頑張ります。サッカーでは絶対不可能な在宅勤務も経験しました(笑)。
そのサッカーのほうでは、4月2日に僕が所属している南葛SCのリーグ戦(関東1部リーグ)がスタートしました。ここまで3試合を消化して3引き分け。なかなか勝ち切れていないもどかしさもありますが、負けなしとポジティブにとらえて、ここから調子を上げていきたいです。
先日、保土ヶ谷公園で試合をした時は、たくさんのマリサポの方が来てくれて、とてもうれしかったです。これからも応援よろしくお願いします。
前置きが長くなってすみません(笑)。そろそろ本題に入りましょう!
4月のマリノスはというと、リーグ戦ではサンフレッチェ広島に負けてしまいましたが、好調を維持しているように思います。その広島戦に関しても、喜田選手が試合後に言っていたように「決して悲観するような内容ではなかった」と僕も感じました。相手がボールを奪いたい位置できっちり奪われた結果、失点してしまいました。広島の狙いは、高い位置からプレスをかけてフリックしたところを奪う、でした。こういったシチュエーションでは、
“相手がどこでボールを奪いたがっているか”
を考えれば、自ずと答えは見えてきます。
フリックを狙われているなら、ひとつ飛ばして前にパスを出して本来フリックしていた選手にボールを落としてあげれば、その選手は前向きにプレーできます。相手の狙いを試合中に見極めて、それを表現できるようになれば、相手 からするとさらに戦いにくいチームになると思います。
サイドバックの視点としては、こういう試合は前線の選手をスペースに走らせるのもひとつの有効手段です。ショートパスをつないでコントロールする狙いは大切ですが、お互いの狙いが一致していれば背後へのボールも“アリ”ではないでしょうか。山中選手との縦関係や、ラフィーニャが一生懸命ランニングしてくれていたのが懐かしいです(笑)。
ACLで内戦直前のシリアへ行ったことも
4月中旬からはリーグ戦が中断し、戦いの舞台はACLへ移っています。
僕はベトナムへ行った経験がないのですが、暑さとピッチが緩そうなのは映像からでも伝わってきます。それに中2日で6試合を経験したことのある選手はほとんどいないでしょう。文字通りの総力戦ですが、ほとんどのケガ人が戻ってきたのは心強いですね。
どんな大会でも初戦が重要で、今回のような短期間での集中開催ならなおさらです。初戦は手を焼きながらもセットプレーから2得点して勝利しましたし、シドニーFC戦でもCKのこぼれ球から決勝ゴールが生まれました。拮抗した試合で飛び道具を持っているチームは強い。
僕個人としては、喜田選手の“またぎ”にも引き続き期待しています(笑)。
マリノスはここまで3試合を戦って、2勝1敗の勝点6でグループ2位につけています。本来の姿であるスピーディーなパスサッカーがなかなか見られず、もどかしさを感じているサポーターの方もいるかと思います。もっと点を取ってすっきり勝ってくれよ、と。もちろんそれが理想ですし、僕自身も期待しているところです。
ですが、このグループリーグにおける最大の目的は何か。
それは中2日で6試合を戦う超過密日程をこなし、チーム全員の力で次のラウンドに進むことです。
突破できれば何でもいいとまでは言いません。だけど突破できず姿を消してしまえば、さらに厳しい決勝ラウンドの貴重な経験を積めないわけです。
マリノスには若くて有望な選手がたくさんいます。そういう選手たちがACLの舞台で活躍し、刺激を受けてさらに成長していってほしい。そのためにも結果が最重要事項で、時には辛抱強く戦うことも必要です。
ただ、グループステージ突破を考えると(2位の場合は他のグループとの兼ね合いもあるので)、得失点差も気になるところ。得点を取れるチャンスではしっかりと取っておきたいですね!
そういえば僕自身も、ガンバ大阪とマリノス在籍時にACLを経験させてもらいました。
Jリーグではありえないタイミングで相手の足が伸びてきたり、独特の雰囲気があったり。アウェイゲームでオーストラリアへ19人で遠征に行き、見事19番目に選ばれてメンバー外になったり……。悔しかったですが日本に帰ってから、すぐ試合があったのでホテルに残ってひとりで体を動かしました(笑)。
サッカー以外では、内戦直前のシリアに行ったことも印象深いです。当時は何も思わなかったのですが、帰ってきて数年してニュース映像などを見て『ここで試合をしていたんだ』と思うと、なんだか複雑な気持ちになりました。サッカーができるのは当たり前ではないと実感しましたし、感謝の気持ちをいつも忘れないようにしないといけませんね。
それと選手たちのコメントを読んでいると、Jリーグとは異なるボールを使っていて、そこにアジャストする難しさもあるようです。同じサッカーボールでも、メーカーによってボールの伸び方や、縫い目の違いで無回転気味になりやすかったりする場合があります。ガンバでACLに出た時は、たしかナイキのボールだったので無回転が蹴りやすかった。週の半ばにACLが開催される週はJリーグ用のボールとACL用のボールの2種類が練習に用意されていたこともあります。
とにかく慣れるしかありませんし、そろそろボールフィーリングも上がってくる頃でしょう。過度な心配は不要だと思います。
角田涼太朗選手の魅力は大きく分けて3つある
個人をピックアップすると、僕が注目しているのは角田涼太朗選手です。
シドニーFC戦は途中出場でしたが、普段と違うサイドバックの位置に入ってもそつなくこなして決勝点まで記録しました。途中出場の選手や若い選手が点に絡むとチームは盛り上がりますし、この決勝点と勝点3はすごく大きな価値があると思います。
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