「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

異次元のパフォーマンスを見せた岩田智輝の適正ポジションはセントラルMF。 ピッチに背番号24が何人もいるかのようだった [リーグ第8節/鹿島アントラーズ戦レビュー] (無料記事)

 

MOM級の働きを見せた高丘陽平

 

ようやく鹿島ゴールをこじ開けることに成功したのは82分。

永戸勝也の左CKに飛び込んだアンデルソン・ロペスが乾坤一擲のヘディングシュートを叩き込む。殊勲のブラジル人ストライカーは「チャンスが絶対に来ると信じて、集中してポジショニングを取っていた。あとは(岩田)智輝がうまくブロックしてくれたおかげでフリーになれたので感謝したい」と頬を緩めた。

 

 

時間はかかった。だが時間の問題でもあった。

前半途中までは一進一退の攻防で、チャンスと同じだけピンチもあった。アルトゥール・カイキにバー直撃のヘディングシュートを食らった25分や、上田綺世との1対1をGK高丘陽平が止めた41分のシーンなどは冷や汗を流した。

 

 

MOM級の働きを見せた高丘が試合を振り返る。

「鹿島のようなチームと対戦すると、90分間の中でどうしても被決定的がいくつかある。そこを自分が止められるかどうかが勝敗に直結すると思っていた。心構えはできていたので、うまく対応できた」

 

 

苦しい時間をしっかり耐えたことで、流れを呼び込むことができた。

加えて水曜日の試合から先発を8人入れ替えたターンオーバー策がここで実を結ぶ。「僕は広島戦に出場していなくてフレッシュだったので、チームを押し上げていけるようなプレーを心掛けた」と話したのは古巣相手にフルスロットルのプレーを見せた永戸。

 

 

そして水沼宏太も胸を張る。

「前半からしっかりボールを握って、縦へ急ぎ過ぎないで相手が嫌がるところでボールを距離感良く回すことを徹底してできた。相手を走らせることができたし、後半まで無失点でいけば相手は運動量が落ちてくると思ったし、自分たちの強みは総合力というところもある。最後に3点取れたのはチーム力だと思うので、今日はすごく気持ちいいゲームだった」

 

 

総合力で勝り、終盤に畳みかけるような3ゴール。

首位の鹿島を粉砕し、マリノスが完全勝利を手にした。

 

 

成長著しい岩田や角田がハイパフォーマンスを披露

 

個々を切り取っても素晴らしいパフォーマンスばかりだった。

前出選手以外で真っ先に取り上げたいのは中盤の岩田智輝だ。

 

 

最近2試合はセンターバックでの先発で「ウズウズしていた」。後半途中からボランチにポジションを上げることはあっても、それまでの時間は後方からチームを下支えするだけにとどまっていた。

「ボランチに入ったら自分の良さを出したかったし、アグレッシブにプレーして悔いが残らないようにやろうと思っていた」

 こぼれ球を拾いまくり、少ないタッチ数で周りを使い、相手ゴール前にも顔を出す。このタイミングで異次元のパフォーマンスを見せた彼の適正ポジションはセントラルMF。すっかりチームの中核選手で、ピッチに背番号24が何人もいるかのようだった。

角田涼太朗も、レベルの高い相手に対してそれ以上にレベルの高いプレーで存在感を示した。

 

 

まず戦前から語っていたように、DFの大前提である守備が日増しに伸びていることを強調したい。地上戦、空中戦ともに強さがあり、物怖じしないメンタルも大きな武器。38分には上田綺世との1対1でパーフェクトにボールを奪い取るなど、次へつながる試合になったはずだ。

特徴であるビルドアップは、球出し以上に持ち運ぶプレーの判断が特筆モノ。鹿島は伝統的に球際で強さを発揮するチームだが、前からのプレッシャーはさほど強くなかった。それを見越したようにスルスルとボールを持ち上がる背番号33が眩いばかりの輝きを放ち、攻撃を活性化させた。

 

 

ノーミスではないが、本人に浮かれる様子はまったくないので心配不要。

「完璧だったわけではないし、もっと高みを目指してやっていきたい。もっとチームに貢献できればいいなと思う」という言葉からは、現状に満足することなく“絶対的な存在になる”という強い意志や決意を感じた。

誇らしい勝ち点3だけでなく、選手たちがひと回りもふた回りも大きくなれるきっかけを得る10年ぶりの勝利となった。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ