「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「また見たい」。マルコス・ジュニオールと天野純の併用が示した新たな可能性とは [ルヴァン杯GS6節 清水戦レビュー]

 

「マリノスはセカンドチームでもJ1中位の力がある」(ロティーナ)

 

5ゴール快勝でグループステージ最終節を勝利で飾ったマリノスが文句なしの1位突破を決めた。

唯一の誤算は開始2分に喫したセットプレーからの失点。相手のFKに対してファーサイドでフリーの選手を作ってしまったのは今後に向けた反省材料だろう。

しかし気落ちする素振りを一切見せないマリノスは攻め続けた。清水エスパルスの粘り強さもあってゴールをこじ開けるのに時間がかかったが、前半終盤の40分にようやくゴールネットを奪った。

チーム全体で奪った同点ゴールを手放しで称賛したのはアンジェ・ポステコグルー監督だ。

「1点目はGKから始まり、相手のプレッシャーをワンタッチでトントントンと打開し、しかもゴールを奪った。これ以上ないくらい素晴らしいサッカーを見ることができた」

 

 

自陣ゴール前からショートパスをつなぎ、相手のプレスを突破。レオ・セアラのサイドチェンジをきっかけにミドルエリアで加速し、サイドのスペースを突いて相手ゴール前へ。レオのシュートはバーに弾かれたが、樺山諒乃介が頭で押し込んだ。

 

 

後半は圧巻のゴールショーに。立ち上がりの48分に和田拓也が美しいミドルシュートで優しくゴールネットを揺らすと、その3分後には天野純のインターセプトから樺山がこの日2点目を決める。

 

 

79分には途中出場の仲川輝人が水沼宏太のクロスをしっかりねじ込み、仕上げはレオのゴールだった。敵将のロティーナが「マリノスはセカンドチームでもJ1中位の力がある」と認める素晴らしいパフォーマンスで、ニッパツ三ツ沢球技場に5発の花火を打ち上げた。

 

カップ戦での編成が生み出した新たな可能性

 

この試合、實藤友紀と高野遼がコンディション不良で欠場を余儀なくされた。そのため最終ラインの人員が足りず、和田拓也を左サイドバックにスライドして対応。センターバックは岩田智輝が務めた。

 

 

すると今度は週末のリーグ戦を見据えてボランチの台所事情が苦しくなり、渡辺皓太を底に置いて天野純とタッグを組む形に。そしてトップ下にはリーグ戦から唯一の連戦となるマルコス・ジュニオールが起用された。

 

 

以上のことから背番号10の起用については編成の側面によるところが大きい。それは3対1と逆転に成功してからの58分という比較的早いタイミングでベンチに下がったことからも明らかだ。

 

ヨコエク

 

ただし怪我の功名として、マルコスと天野の併用がこのタイミングで叶った。両者が先発で共演したのは、実は今シーズン初めて。トップ下の1席を争うライバルとして交代することも多く、すれ違いの時間を過ごしていた。

 

 

この日のパフォーマンスを見るかぎり、マルコスがトップ下に入り、天野がベストポジションの2.5列目を務める采配はアリだろう。1点目も2点目もマルコスが得点に絡み、難しいトラップ&パスを難なくやってのける。中盤でフリーになる技術やセンスも含めて、マルコスには目立たないスペシャリティがある。

一方、最近は相手ゴールにベクトルを向けている天野だが、2.5列目に位置を下げることでプレーの幅を広げた。ビルドアップへの関与でも良さを出せるのが天野の長所で、チーム3点目につながったインターセプトからのラストパスなどは好調ぶりを強く感じさせた。加えていえば、それらをサポートする和田との補完関係が素晴らしかった。

扇原貴宏と喜田拓也がマルコスを支える形は信頼と実績に長ける。対してマルコスと天野の併用は新たな可能性に満ちている。今後、「また見たい」と思わせる組み合わせだった。

 

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