「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ベルギーでの天野は目覚めるとマリノスの試合速報をクリックするのが習慣。「優勝してシンプルに嬉しかった。ちょっとだけ寂しさがあったかな」 [天野純選手インタビュー(第2回)]

[天野純選手インタビュー(第2回)]

インタビュー・文:藤井 雅彦
写真:本人提供

前回からつづく

 

昨年7月、天野純は大いなる野望とともに海を渡った。

やるのは同じサッカーだ。プレーする人数もルールも、もちろん変わらない。自慢の左足で、どんな困難も切り拓いていく覚悟を決めていた。

いざ欧州のサッカーに身を置いてみると、インテンシティの部分に大きな違いがあった。Jリーグでは感じることのなかった疲労感と体の痛み。欧州独特のピッチコンディションにも頭を悩ませた。

しかし、すべては自身の待ち望んでいた世界。同じ時期に日本で快進撃を続けるマリノスから勇気と刺激をもらいながら、天野も勇猛果敢な挑戦を続けていた。

 

 

テクニック偏重と言われる日本のサッカーに対して、欧州はフィジカルが最重要視される。『強さ』が『上手さ』を凌駕する。一定方向からの見方に過ぎないが、ある意味で正しいのかもしれない。

天野純が飛び込んだのはそんな世界だった。

「テクニックを比較したら日本人選手のほうが上。でも日本でやっていたサッカーとはインテンシティの高さが違った。驚いたのは同じ90分の試合でも日本にいた時よりも疲れたこと。それは一つひとつのプレーに対する力の入り方、球際に使うパワーが違うから。スピード感や馬力がまったく違う。それはエグいくらいに(笑)。特にアフリカにルーツを持つ選手の迫力はすごかった。それに対抗しなければいけなかったから、どうしても疲れてしまう。展開的にも1対1の局面が多くて、そこでの勝敗によってゲームが大きく変わるから簡単に負けられない」

 想像を超える強度に少なからず戸惑った。それとともに天野は新たな戦いの場に身を置いたことを実感した。

 

 

とはいえ相手の土俵で戦い続けるのが得策とは限らない。そこで考えた。

「筋力トレーニングを増やして体を大きくすることで対抗しようと思ったけど、やっぱり日本人らしいキレで勝負したほうがいいのかな、と。渡欧してすぐの頃は外食が多くて少し体重が増えたので、そこから糖質を減らす微調整して体重と体脂肪を落としました。日本でプレーしていた時は68kgがベストで、そこからあえて1.5~2kg減らしたんです。あとは日本でやっていた体幹トレーニングを継続して、特に下半身の強化を意識しました。体脂肪は落としても筋力を維持するイメージで」

 フィジカル面の違いと同時に、プレーの質と意識の違いにも驚かされた。

マリノス時代は攻撃の多くに関与するプレーメーカーとして欠かせない存在になっていたが、ロケレンでは相手ゴールに向かって、より直線的なプレーが求められた。

「日本では意味のあるバックパス、時間を作るためのバックパスがあった。でもベルギーにはそういった概念がない。ボールを受けたら、前へのプレーを求められる。バックパスをしたら味方のはずのロケレンサポーターにブーイングされるのには驚きました。そのあたりの頭の整理ができていなくて、7月に加入して11月か12月くらいまでなかなか自分を表現できなかった」

 天野は最初の壁にぶつかっていた。

その頃、遠く離れた日本ではマリノスが快進撃を続けていた。8月下旬からのラスト11試合を10勝1分と破竹の勢いで駆け抜ける。

 

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