「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

エリキのゴールパフォーマンスの3本指の”W”は、「プロになって初得点を挙げたのは18歳から」(エリキ)。その意味とは・・・ [エリキインタビュー(後編)]

[エリキ選手インタビュー(後編)]

実施日:11月11日(月)
インタビュー・文:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

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前編よりつづく

 

 

エリキはブラジルのパラー州に生まれ、10歳までの幼少期を過ごした。農業を営む家庭は決して裕福ではなかったが「僕のルーツはそこにある」と胸を張る。

10歳からゴイアスECに育成組織に所属し、16歳の時に念願のプロ契約。サッカーで賃金を稼ぎ、苦しい家計を助けられることを喜んだ。

そんなエリキの親孝行話には続きがある。

「自分のプロ契約を上回るくらい幸せな瞬間が12歳の時にあったんです」

それは、父親へ贈った最高の“プレゼント”だった。そして、ゴールパフォーマンスの意味とエピソードを明かしてくれた。

 

 

――自身のプロ契約よりも幸せな瞬間とは?

「僕が12歳の時、お父さんがゴイアスECからお仕事をいただいたんです。それまでは経済的に安定していませんでしたが、お父さんが毎月お給料をいただけることが決まり、とても幸せな気持ちになったのを鮮明に覚えています。僕にとって、プロ契約よりもうれしい出来事でした。ゴイアスECへの感謝は永遠に忘れません」

 

――お父さんはどんな仕事に就いたのですか?

「最初はスタジアムの管理のような仕事を任されていました。芝生の管理や試合後の片付けや清掃などです。その後、出世してホペイロになりました。そして僕が21歳でパルメイラスに移籍した時に『もう仕事をしなくていいよ』と伝えました。でもすごく愛された社員だったのでクラブに引き留められて、今でもゴイアスECで仕事をしています(笑)」

 

 

――エリキ選手は親思い、家族思いなのですね。

「ゴイアスECの練習場はブラジルでもベスト5に入るくらい恵まれた施設で、そこがお父さんの仕事場です。僕は歩いて通える距離にあるマンションを購入してプレゼントしました。親には感謝してもしきれません」

 

――少年時代からアタッカーとしてゴールを決めることで自身の道を切り拓いてきたのですか?

「小さな頃からポジションはFWでした。でも育成組織時代は中盤のポジションも任されたし、右サイドバックにコンバートされた経験もあります。でも自分本来のポジションはやっぱりFWだと思っています」

 

――やはり点を取る瞬間が一番楽しい?

「サッカーの試合で一番幸せを感じる瞬間は、ゴールよりも試合終了のホイッスルが鳴って幸せな仲間の顔を見る時です。ゴールは自分が素晴らしいプレーをしても生まれない場合もあるし、反対に満足できない内容でも得点だけ決められる試合もあります。ゴールはもちろん嬉しいですが、一番うれしいのは勝利を勝ち取った瞬間の仲間の笑顔です」

 

――今さらになってしまいますが、ゴール後のパフォーマンスの意味を教えてください。

 

 

「指を3本立てているのは英字の『W』を意味していて、僕の奥さんと母親はどちらも頭文字が『W』から始まる名前なんです。僕にとって二人とも大切な女性です。プロになって初得点を挙げたのは18歳で、その時からこのパフォーマンスをやっていました。まだ奥さんとは結婚していませんでしたが『私のためにやってくれたのね』と喜び、母親も『あれは私のためのパフォーマンスだったのね』とうれしそうにしていました。だから僕は常に2点取ることを目指しています。2得点した先日の札幌戦は完璧でした(笑)」

 

 

――プロになってからは必ずやっているパフォーマンスなのですか?

「一度だけ忘れてしまい、奥さんに怒られました(笑)。だから点を取ったら大切な奥さんと母親のために必ずやるようにしています。他にも大切な人はたくさんいますが、僕を一番知っているのはその二人です。いつもサポートしてもらっている感謝を表現しています。

 そういえば僕と奥さんには美しいラブストーリーがあるんですよ!」

 

――是非、聞かせてください。

「先ほども話したように、僕が生まれた集落には3つの家庭しかありませんした。そのうちのひとつが、奥さんの家族だったのです。だからお互いのルーツを知っています。僕と奥さんは同じ病院で生まれ、小さな頃からいつも一緒に過ごしていました。

 僕と家族は10歳の時に引っ越してしまったけれど、6年が過ぎたころに奥さんが僕の住むゴイアニアへ上京し、運命的な再会を果たしたんです。僕が20歳で4歳年下の奥さんは16歳でしたが、すぐに婚約しました」

 

 

 

――今は奥様も来日されていると思います。日本での生活はいかがですか?

「僕が来日してから1ヵ月くらいは離ればなれの生活で、その時は寂しかったです。でも奥さんが来日してからはとても楽しく過ごせています。初めての海外生活で少し不安もありましたが、僕も奥さんもすぐに順応することができました。クラブのスタッフは通訳をはじめ、みんなが素晴らしいサポートをしてくれています。奥さんは今、英語の勉強をしていて、日本語についてもインターネットなどで調べて学んでいます。今では『日本に一生住んでもいいわよ』と言っています(笑)」

 

 

――サッカーも充実していますか?

「とても充実しています。F・マリノスからオファーをもらい、チームを知るために映像やデータを見ました。とてもスピーディーで攻撃的なサッカーを展開し、1試合のパス本数が600本以上も記録されていました。とても魅力的だからこそ、僕もそのチームの一員になりたいと思ったのです。僕のサッカー人生において、すごく良い決断をしたと思います」

 

 

 

――シーズンは最終盤に差し掛かっています。そしてF・マリノスはチャンピオンになれるチャンスがあります。最後に、残り試合とタイトルへの意気込みを聞かせてください。

「僕はサッカーを始めた時から、常にチャンピオンになることを考えています。思い返せば、僕の周りには育成組織時代から勝者のメンタリティーを持っている選手が多かったような気がします。僕も常にその道を極めるつもりで取り組んでいますし、今はF・マリノスがタイトルを勝ち取るためにすべての力を注ぎたい。とにかく勝ち続けることで必ず笑顔でシーズンを終えられると思いますし、ファンやサポーターの方々に最高の笑顔をもたらしたい」

 

(おわり)

 

 

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