「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

16点の大勝 [練習試合 新潟医療福祉大学/ 十日町キャンプレポート4日目 ] +中澤・比嘉インタビュー -3,089文字-

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[練習試合 新潟医療福祉大学 リザルト]

対戦相手:新潟医療福祉大学
場所:クロアチアピッチ
天候:くもり
形式:30分×4本
スコア:16-0(2-0、5-0、5-0、4-0)
得点者:11分中村、18分兵藤、37分中村、41分藤田、52分比嘉、53分藤田、59分中村、61分齋藤、77分端戸、80分中町、80分齋藤、84分ジョン、99分ジョン、103分齋藤、109分喜田、114分端戸

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【練習試合1本目】

戦前から予想できたことではあるが、練習試合の相手となった新潟医療福祉大学はお世辞にもレベルの高いチームではなかった。30分ゲームを4本行う変則的なルールで行われた試合は、いずれの回もマリノスが得点を重ね、逆にピンチを迎える場面は皆無だった。その結果、中村俊輔のハットトリックを含む計16得点で大勝を飾っている。

このレベルの相手と分かっていながらもゲームを行う目的は、以前にも述べたようにまず「ゲーム感覚を保つこと」(樋口靖洋)にある。特にレギュラー組は5月25日のサガン鳥栖戦以来、試合を行なっていない。10日間の完全オフを挟んだのちのコンディションを確かめる意味で有意義な機会である。この日は多くの選手が60分間ピッチでプレーし、誰一人けがをすることなく試合を終えた。ちなみに前日から左股関節に違和感を訴えているファビオと来日が遅れたマルキーニョスはいずれも試合を回避したが、後者に関してはフィジカルトレーニングで大粒の汗を流していたから不安は必要ない。

練習試合2本目

【練習試合2本目】

内容はというと、相手の力が劣る状況だからこそ個々の意識が問われるゲームとなった。それについて樋口監督は「プレッシャーがないなかでイメージを作れて良かった」と振り返る。ほとんどノープレッシャーで戦える状況のため格好のスパーリング相手となったのである。

このキャンプでのテーマとなっているバイタルエリアを効果的に使う攻撃も随所に見られた。樋口監督が「どこでスイッチを入れるんだ!?」という指示が飛ぶなかで、ボランチから前線に縦パスが入り、それに呼応するように周囲がサポートし、さらに相手ディフェンスラインの背後を狙う選手が現れる。こういった動きが特に体に染み付いているのが中村俊輔であり、兵藤慎剛である。彼らが出場した1本目と2本目はスムーズな連係が数多く見られた。

彼ら以外で目立ったのは、前日のレポートで好調選手として挙げた熊谷アンドリューだ。以前よりも確実に逞しさを増した2年目ボランチは中盤で何度もボールを奪い取った。五分のボールに対して重心を低くアタックするなど以前のひ弱さは見られない。韓国への強化遠征を経て、実戦的で“闘える”選手へと姿を変えつつある。2本目ではファビオの負傷を受けて富澤清太郎がCBに入っており、栗原勇蔵が日本代表招集で不在であることも踏まえて、ナビスコカップ準々決勝で熊谷にチャンスが巡ってきても不思議ではない。

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【練習試合3本目】

3本目からはメンバーの大多数が入れ替わったが、ここまでに失点を重ねた大学生箱の時点で意気消沈していた感がある。その結果、3本目と4本目でさらに大量得点が決まるわけだが、これは1本目と2本目以上に参考にならない。確実にゴールを決めた齋藤学や端戸仁の動きよりも、それぞれが60分間のフィジカルトレーニングを消化したと見るべきだろう。

というのも、この練習試合ではチームとして守備機会がほとんどなく、自陣ゴール前に戻る機会すら稀であった。最終ラインの選手に求められるのはビルドアップ面、あるいはコーチングに限られた。それとは逆に中盤の選手は攻守両面が求められるハードな展開となる。試合時間の大半を相手コートで過ごしたため、攻撃だけでなく守備も主にMF陣の役割だからである。ここまでキャンプを行なってきたことによる蓄積疲労も重なり、足が止まるシーンも多く見られた。

 

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【練習試合4本目】

それでも全体を通して樋口監督は概ねイメージ通りに試合を消化できたという。コンディションを含めて今回は「確認作業がメイン」(樋口監督)だった。マリノスの生命線である攻守の切り替えについては「距離感は悪くなかったし、意識の部分も良かった」と手ごたえを口にしており、それはレギュラー組と控え組を混同にしてもチームとしてしっかり実践できていた。指揮官もホッと胸をなでおろしたことだろう。

キャンプの総括はまだ早いが、チーム力は少しずつ上がっていると実感できる練習試合だった。「去年の2月のキャンプよりも今年の2月のキャンプ。そしてそれよりも今回のキャンプのほうがスムーズになっている。練習メニューをスムーズに消化できているし、イメージも共有できている」(樋口監督)。6日間に渡るキャンプも終盤に差し掛かり、チームはさらなる上昇気流に乗っているように見える。

 

【コメント】
DF 22 中澤 佑二

――力の劣る相手に見えたが

「こういう相手と練習試合をやるときは、個人でどうやってレベルアップするかを考えないといけない。今日はなんとなく試合をやっている選手と、シュン(中村)のように目的意識を持ってプレーしている選手に分かれていた」

――例えばどういった意識が必要?

「難しいことではなくて、相手はプロではないからどうしてもレベルの違いがある。その相手にリスクを背負ってプレーすること。ドリブルを仕掛けることもそうだし、スルーパスを狙うこともそう。そういった部分で差が出てくると思う」

――中澤佑二の目的意識は?

「あえてゴールキックからの競り合いは(熊谷)アンドリューや奈良輪に任せた。自分が無理に競る必要はないし、若い選手にタフになってもらうことがチームのためになる。自分はそのコーチングやカバーリングを意識することが大事だった」

――キャンプ終盤を迎えてのコンディションは?

「先週のマリノスタウンでの練習でだいぶコンディションは上がっていた。週末は震災復興のスペシャルマッチがあるので、そこはいろいろな人のために頑張りたい。来週、再来週とナビスコカップがあるけど、Jリーグ再開は7月なので焦らずやっていく」

 

DF 16 比嘉 祐介

――キャンプでは一列前のポジションに入ることも多い

「今日は相手が相手だからあまり参考にならない。今日の場合はSBよりもサイドハーフのほうが疲れる。中盤でボールを奪えてしまうし、そこからフィニッシュに行って、入らない場合は切り替えて奪って、また攻撃に出るの繰り返しだから」

――ゴールやアシストも記録した

「最初は自分でシュートを打とうと思ったけど、確率が高いほうを選んだ。ってこの前の代表戦のときに遠藤選手が言っていた(笑)。だから自分もシュンさん(中村)やジョンにパスを出した」

――落ち着いていた

「簡単だよ(笑)。でもチーム全体のバランスもあってやっているポジションだと思う。とにかくコンディションを落とさずにアピールを続けて、中断明けの試合でチャンスをつかみたい」

 

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