「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

風穴を開けたのがティーラトンのスルーパスと遠藤渓太のランニング&クロス、そして仲川輝人の得点感覚だった [J26節 広島戦レビュー]

 

 

 

最初に、素晴らしい雰囲気のスタジアムだったことを強調したい。

ラグビーワールドカップ開催の影響で日産スタジアムが使用できず、試合はニッパツ三ツ沢球技場で開催された。12,581人が詰めかけてほぼ満員に膨れ上がった三ツ沢は、選手との距離が抜群に近いことで知られる日本有数のサッカー専用スタジアムを、さらに魅力的なものにする。平均観客動員数の約半数しか集客できないのは売り上げの面では少なからず痛手だろうが、チームの勝利に勝る喜びはない。

三ツ沢の雰囲気が後押しした選手たちは、立ち上がりからハイテンションで試合に入っていった。それが凝縮されているように見えたのが、開始3分のワンシーンだ。4月20日の北海道コンサドーレ札幌戦以来、約5ヵ月ぶりのリーグ戦スタメンとなった松原健が、リーグ屈指のウイングバック・柏好文に強烈なスライディングタックルをお見舞いしてボールを奪い取った。

「最初の入りはすごく大事。あそこでひるんだらズルズルいってしまうと思った。ファウルになったとしても、一発目のプレーはガツンといこうと思っていた。それに久しぶりに試合に出場すると、どうしても周りの選手と比べられてしまって『やっぱりあの選手のほうがいいな』とか『やっぱりダメだな』とか思われることがある。言葉は難しいけど『オレもまだいるぞ』というところを示したかった。自分は今日しかないと思っていた」(松原)。

 これで松原はもちろん、マリノス全体がノッた。マイボール時はトップ下のマルコス・ジュニオールを中心に中央突破とサイド攻撃を織り交ぜて相手ゴールに迫り、守備に場面が切り替わると素早い出足でボールにプレッシャーをかけていく。広島は一筋縄に行くチームではなく、インテンシティ高いゲームになったために、両チームは前半だけでそれなりに疲弊していたように見えた。

「我慢比べ」(喜田拓也)の後半に先手を取ったのはマリノス。左右で若干の個体差がある相手の右サイドを執拗に狙っていく。広島の最終ラインは、位置関係や状況によって4バックと5バックを使い分ける可変式だった。さらに攻撃時は両ウイングバックの柏とハイネルが高い位置に進出することで3バックに。縦と横のスライドを的確に行い、それを丹念に続ける。これが試合前までリーグ最少失点を誇っていた広島の守備組織の内実だ。

そこに風穴を開けたのがティーラトンのスルーパスと遠藤渓太のランニング&クロス、そして仲川輝人の得点感覚だ。

 

 

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