生まれてくる時代は選べない。誰かが助けてくれるわけでもない。だから走るしかない [今、栗原勇蔵に聞く 第2回]
インタビュー実施日:9月7日(金)
文:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室
→前回からつづく
9月18日、栗原勇蔵は35歳の誕生日を迎えた。トレーニングを終えて帰路に着こうとする際、両手には大きな紙袋が抱えられていた。お誕生日プレゼントである。
「後輩たちからプレゼントをもらったんだ。高価なバッグみたいだから大切に使いたい」
気がつけばベテランの域に足を踏み入れた“若大将”だが、面倒見の良さから年齢に分け隔てなく後輩に愛されている。
30代半ばを迎えた。体力テストなどで数値の変化はなく、衰えは感じられない。「若い時、あまり本気でやっていなかったからかもしれないけど」と笑い飛ばすが、試合中の跳躍力を見るかぎり、高い身体能力は維持されている。ベンチプレスでも自己最重量クラスの110キロを涼しい顔で持ち上げるのだから、日々の鍛練によって肉体が進化しているのかもしれない。
栗原が若かりし日を過ごした10数年前から時代は移り変わり、スポーツにおける昨今のデータ分析は目覚ましい進歩を遂げている。トラッキングデータやスプリント回数などは端緒に過ぎず、今後は多方面においてパフォーマンスが数字化されていくだろう。
目まぐるしく流れていく時間について栗原は「昔は今と違ってデータが参考程度にしかならなかったから、余力を残してやっていた選手のほうが多かったかもしれない(笑)。体力を計るヨーヨーテストも、データや数字で見るというか根性を促す意味合いのほうが大きかった気がする」とプロ17年目らしく現在と過去の違いを指摘する。
そして「でもね」と切り出し、真剣な目つきで言葉を紡いでいく。
「今の時代はデータや分析能力がすごく発達している。とても良いことなんだけど、これが10年早くできていれば、自分のサッカー人生は変わっていたかもしれない。30歳を過ぎて少しずつ体が動かなくなってきてから数字を持ち出されても、努力によって維持はできても向上させるのは難しい。能力が落ちてきていることを明らかにされるようで悔しい。だから今の若い選手はいいなと思う」
そこまで言うと、髭を触りながら少し寂しそうな表情を見せた。
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