「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

巧みなループシュートは“二度目の正直”だった。負けず嫌いなストライカーは「次も絶対にループと決めていた」とキッパリ言い切った[Lカップ準々決勝1st G大阪戦レビュー] (無料)

 

 柏レイソル戦からの先発変更は3人にとどまった。天野純は日本代表追加招集のため不在で、山中亮輔は負傷で起用できない。異なる事情だが仕方のない変更である。そして公式戦2試合ぶりの先発となったドゥシャンは、出場停止という理由で柏戦に起用できなかっただけ。つまり現時点で考えうるベストメンバーと言っても差し支えない11人が第1戦のスタメンに名を連ねた。

 一方のガンバ大阪は、直近のリーグ戦から先発を10人変更。代表招集などやむをえない事情も含まれているが、それ以外のところでリーグ戦に向けて大幅な先発変更を行ったのは明らか。遠藤保仁や倉田秋、渡邉千真といった面々はベンチにも入っておらず、21歳以下の選手を5人含む構成でのチームは、お世辞にもベストメンバーとは言えなかった。

 単純な戦力比較で、マリノスが圧倒するのは当然の流れだろう。スコアボードが動いたのは開始早々の2分。大津祐樹がスペースで出したパスを仲川輝人がダイレクトで折り返すと、ニアサイドに走り込んだ伊藤翔が流し込む。先日の柏戦のゴールを彷彿とさせるワンタッチゴールで、幸先よく先制に成功した。

 その後、何度かピンチをしのぎ、追加点が決まったのは40分。「時間帯もよかった」と松原健が笑顔を見せたとおり、前半の立ち上がりの終了間際という理想的な時間に得点が生まれた。細かいパス交換から大津がスルーパス。走り込んだ伊藤はGKをあざ笑うかのようなループシュートでゴールネットを揺らした。

 伊藤曰く、巧みなループシュートは“二度目の正直”だった。2点目が決まる少し前の32分、オリヴィエ・ブマルからの超絶スルーパスに抜け出したが、失敗気味のループシュートは相手GKに防がれてしまう。負けず嫌いなストライカーは「次も絶対にループと決めていた」とキッパリ。そのとおりのアクションで、今度はしっかり決めた。

 前半の2得点で勝負ありのゲームだったが、そのゴールを演出したのが天野に代わってインサイドハーフに入った大津祐樹である。柏戦は途中出場でチームを活性化させた背番号9だが、この試合でも出色の働きを見せた。その秘訣を「自分のスタートポジションを変えて、まず守備から入っている。どちらかというとタカ(扇原貴宏)とキー坊(喜田拓也)と3ボランチ気味に構えて、そこからのボール奪取を狙っている」と明かす。積極的に高い位置へ出て行くダイナミックさも魅力だが、チームの運営を考えて守備に軸足を置く。それがチームと大津自身、両方の好パフォーマンスにつながっている。

 その大津が74分にゴールを決め、マリノスの勝利は確定した。そのゴールにも大津は喜びを爆発させることなく「自分にとってはオマケ。1点目や2点目のパスのほうが好き」と落ち着いた口調で話す。終盤に見せた単独でのチェイシングなど彼にしかない武器があり、それをチーム力に還元させる術を徐々に掴み始めた。天野の不在が、中盤のポジション争い激化という嬉しい悩みをもたらした。

 大津の得点の直後には仲川もダメ押し点を奪い、最終スコアは4-0。単純な戦力比較で上回るだけでなく相手の対策不足も手伝い、マリノスは1stレグで大勝を収めた。準決勝進出に向けて大きなアドバンテージを得ただけでなく、スタイルの基礎が根付いていることを実感できた。リーグ戦残り9試合とカップ戦準決勝以降がこんな簡単な試合にはならないだろうが、ひとまずの現在地を確認できたという点で価値ある大阪遠征となった。

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