「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

【無料記事】直前試合展望 大宮戦

大宮アルディージャ戦を目前に控え、マリノスは一つの問題を抱えている。しかしながら、頭を抱えて悩むような問題ではなく、「嬉しい悩み」と樋口靖洋監督は一笑に付した。

前節・鹿島アントラーズ戦では素晴らしいスピリットを見せてくれた。2年10ヵ月ぶりにリーグ戦のピッチに立った榎本哲也が「チームが一つになっていた」と言うように、マルキーニョス退場というアクシデントに見舞われながら強い気持ちを示した。10人がファイターとなり、鹿島の攻撃を跳ね返した。

その中心にいたのが富澤清太郎である。青山直晃との急造CBコ ンビながら、強気なラインコントロールで中盤を押し上げ、全体をコンパクトに保った。個人レベルのパフォーマンスを切り取っても、空中戦で競り負けず、裏 のスペースに出された場合も的確なポジショニングで相手よりも先にボールに触れる。途中から数的不利になったため持ち前のビルドアップ能力こそ出せなかっ たが、それも11人対11人ならば確実に武器となる。富澤はオールラウンドなCBであることを実証してみせた。

そこが問題である。大宮戦では中澤佑二と栗原勇蔵が負傷から帰ってくる。鹿島戦前までは二人ともフルタイム出場を続けていたディフェンスラインの軸であ り、この新旧日本代表はチームの顔でもある。好パフォーマンスを見せた富澤と対比し、指揮官がどのような決断を下すか注目が集まった。

今週に入ってからのトレーニングは先週に引き続き、樋口監督の悩みを表すように実戦形式が多く組まれた。火曜日の主力組では鹿島戦の流れを汲み、富澤と青山直晃が1本目でコンビを組み、2本目は富澤と中澤が組んだ。先週痛めた首だけでなく右ひざの状態も万全ではない栗原が外れる可能性が浮上した。

しかし水曜日以降は中澤と栗原のレギュラーコンビがファーストチョイスとなる。2本目で栗原が外れて富澤がボランチからスライドすることはあっても、1本目は背番号22と背番号4だった。栗原のコンディションを考えて負荷を落として行動であり、どうやら指揮官は決断したようである。もし大宮戦のピッチに栗原がいなかった場合、それは単純な序列ではなくコンディションの問題と考えるべきだろう。

もっとも、これは当然の選択と言える。繰り返しになるが鹿島戦での富澤のパフォーマンスは秀逸だった。ポジション適性がボランチではなくCBにあること、さらにクオリティーの高さを存分に見せた。それでも鹿島戦前まで25試合にフル出場していたレギュラーCBへの信頼は厚い。さらに言えば彼らを先発から外すことには大きなリスクが伴う。真面目で堅実さがウリの樋口監督がそんな暴挙に出るはずがない。

ドラスティックに改革を進めたいのならば、監督の人選を再考する必要がある。現監督で戦うと決めたシーズンなのだから、リスクとは対極にある手堅い人選で戦うべきだろう。マルキーニョス不在とGKが榎本に代わったことを除き、前々節のマリノスに戻ることが濃厚だ。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ