2023年04月30日 20時34分　
カテゴリ： ★無料記事 • レビュー • 試合情報

◇29日 J1第10節 FC東京2-1アルビレックス新潟（味スタ）

　これは僕が上京する前の話だ。

　99年初夏の高松オリーブホールにそのヒーローはいた。ヤニ臭い小箱のステージで、チバユウスケは缶ビール片手にマイクの前でがなり声を上げ、その横でアベフトシが煙草をふかしてテレキャスターをかき鳴らした。

　尖った爆音に、ただただ喰らった。汗びっしょりで自転車をこいで家路に着くと、耳に残る『世界の終わり』が頭の中では何度もリフレインしていた――。

　2003年に『THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』は解散する。それからしばらく経って、チバのがなり声がテレビのサッカー中継から流れてきた。05年に、FC東京サポ－ターとして知られるチバユウスケが『THE MIDWEST VIKINGS』のボーカルLACOSTEとして3曲入りの「VAMOS TOKYO!」をリリースする。そのタイトル曲となったサッカーアンセムがTOKYO MXの試合中継のイメージソングとして使用され、いつしかその歌が味スタの歌唄いたちの間でも歌われるようになっていった。

　そして、23年4月24日にThe Birthdayのレーベルの公式サイトなどで「チバユウスケ 休養のお知らせ」として、こう発表された。

『いつもThe Birthdayへの応援ありがとうございます。

このたびチバユウスケが食道がんと診断され、治療に専念すべく当面の間休養させていただくことをお知らせいたします。

これに伴い、今週末出演予定でした『ARABIKI ROCK FEST.23』以降、現在発表されておりますThe Birthday出演予定のフェスティバル、イベントLIVEの出演を全公演見合させていただき、６月開催予定でしたThe Birthday『FxxK Forever Quattro×Quattro Tour’23』は中止とさせていただきます。

また『ARABIKI ROCK FEST.23』、『OTODAMA’23〜音泉魂〜』、『さよなら中野サンプラザ音楽祭』におかれましては開催直前の急なお知らせとなりましたことをお詫び申し上げます。

チケット払い戻し等は各イベント、フェスティバル主催者のルールに準じますのでオフィシャルサイト等にてご確認のほど宜しくお願い致します。『FxxK Forever Quattro×Quattro Tour’23』のチケット払い戻しに関しましては準備が出来次第ご案内させていただきます。

ご来場予定でした皆様、共演予定でした出演者の皆様、関係者の皆様にはご迷惑、ご心配をおかけしますことをあらためてお詫び申し上げます。

新たなるアナウンスが出来る日までどうか見守っていただけますと幸いです』（原文ママ）

　そして、この発表を受けてこの日の試合前、味スタには東京サポーターがリクエストした『VAMOS TOKYO!』が響き渡った。それに合わせて大合唱が起こり、青赤のフラッグが風にたなびいた。ゴール裏には「勝ちに行け チバユウスケ」「VAMOS チバユウスケ」の横断幕も掲げられた。

　また、クラブOBの浅利悟、佐藤由紀彦、石川直宏らが『THE MIDWEST VIKINGS』でのチバユウスケのネーム＆ナンバーである02番にLACOSTEとプリントされたユニホームにサインを入れて贈り、さらに激励のメッセージも届ける予定になっているという。

　長年、青赤を応援してきたチバユウスケを、今度は青赤が応援する番だ。ビール片手持ち上げ、あの歌を歌おう。

『青赤フラッグ掲げて集まれNo.12飛田給。何色来たって関係ねぇ勝つのはオレたちだ。VAMOS CHIBA! GET! KICK! THE GOAL!』

　パンは焼かないけど、待ち焦がれている。チバユウスケが味スタでがなる日がやってくる時を待ち焦がれている。

　You’ll Never Walk Alone!

text by Kohei Baba

photo by Kenichi Arai,F.C.TOKYO