青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン

狙った守備の実践は半ばまで出来たが、前に出ていけず。課題を認識して次節川崎戦へ【2024 J1第25節 vs.ガンバ大阪/Review】

 

Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)

 J1第25節ガンバ大阪戦から、試合後の記事を基本的にReport1本とReview1本に整理してお届けすることにしました。Reportに関しては2本以上になる可能性もあります。Reviewに関しては以前の本音コラムや連戦のまとめコラムの方向性を引き継ぎ、ですますの口調でソフトに、広範に言及しつつ、1試合単位で振り返っていければと思います。それでは試合後Reviewの第1回目となるガンバ戦の振り返りを始めます。

◆鹿島戦のあと~ガンバ戦の前提

 まずは時系列を正確に認識しておくと、7月20日にJ1第24節鹿島アントラーズ戦を終えたFC東京トップチームは、翌21日、鹿島戦の出場機会がなかった選手を中心としたメンバーで中央大学と30分×2本の練習試合を実施。0-3で敗れる結果を酷評する声もありましたが、メンバー交代の少なかった東京が、3セットのメンバーを投入してフレッシュさを保った相手の攻撃を受ける形でしたので、酷暑下で動き負けたのは、ある程度仕方のないところであったかと思います。

 そのあとは4日間のオフ。そして8月7日水曜日のリーグ再開初戦から逆算したスケジュールで45分×2本の練習試合柏レイソル戦を7月30日に設定し、そこに向けて中断期間のトレーニングをおこないました。つまり鹿島戦と中央大学戦を終えたあとに地力を高める総合的な訓練をおこない、ガンバ戦直前の1週間は、通常どおり、試合に向けた準備をおこなったわけです。そしてガンバ戦の2日前にミドルサードで構える守備について長時間のトレーニングとミーティングを実施、以後もキックオフを迎えるまで選手個別にすり合わせ、役割を決めていきました。

 この流れを踏まえると、残り1/3となったシーズン終盤戦全体に向けては中断期間前半と中盤のトレーニングで地力を高めていたが、それが直接ガンバ戦に影響することは少なく、ガンバ対策を盛り込んだ直前週のトレーニング内容がガンバ戦の内容に色濃く反映されるという結果になったことは明らかです。

 1試合ごとに対戦相手が変わるため、対策も準備の仕方も1試合ごとに変わる。そしてシーズン前半戦を振り返ればガンバが現在のJ1に於いて最強クラスであることは確かで、ボール保持、ウイングの突破力、フィニッシュの手前の崩しに優れた相手であり、相応の準備をしなければならなかったことは想像に難くない。

 どうしてガンバとそんなに力の差がついているのかを追及しろ──という意味の声も頂戴しましたが、それはまた別の話。試合に向けた準備の段階では彼我の戦力差を考慮して戦い方を決めるのは当たり前のことですし、試合を分析するに当たっては、まずは、東京がどういう意図でガンバ戦に臨んだのかを正確に認識するところから始める必要があります。

 ひとつ例を挙げると、まだ弱小国だった時代の日本代表。1968年のメキシコ五輪では、当時日本代表のコーチだった岡野俊一郎さんが出場各国との能力比較をし、その結果として、五輪本大会では密着マークによる守備とカウンター中心の攻撃という回答を出しました。そこで「なんで日本と世界との差がそんなにあるんだ、その責任を追及しろ」と言っても、現実に差があることを前提にしなければ勝ち筋を見つけることが出来ない。責任追及は、戦いが終わったあとの話です。メキシコ五輪当時の日本は左ウイングの前に意図的にスペースを空け、そこにスピードとフェイントに関してはトップクラスの杉山隆一を走り込ませ、チャンスを創出し、中で決定力の高い釜本邦茂が決めるという攻撃に特化しました。勝負事ですから、そういう割り切りをすることもあるでしょう。

Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)

Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)

Photo by HIROTO TANIYAMA(撮影:谷山央人)

 話を東京に戻すと、いつものスタイルで、素の状態でガンバにぶつかったら、0-2、0-3で負ける可能性もあったはず。もちろん現実のガンバ戦よりもマシな戦い方が存在した可能性はありますし「もっとうまくやれよ」と言いたくなる気持ちは十分理解出来ますが、まずは東京のスタッフと選手が、ガンバという相手を把握した上で、どう対抗しようとしたかを理解することが大切なのではないかと思います。

 長くて申し訳ありませんが、ここまでが前置きというか評価の前提になるところです。端的に言えば、東京はガンバとの力の差を認識し、相手に思い通りの攻撃をさせないために、ミドルサードで構える守備の準備をした。ミドルサードでの守備に関してはそれ自体、以前からチームの課題だという認識もありましたので、ガンバ対策を講じながら今後の自分たちのためにもなると考え、この機に整備した感があります。

 それではこのあとは、選手のコメントも交えながら、なぜあのような試合内容になったのかについて考えていきます。

◆構える守備を意識しすぎた?

(残り 4212文字/全文: 6558文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ