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長島裕明、タイでの挑戦を振り返る【Tokyo Pondering #04/無料公開】

 

 

 
 かつてFC東京のトップチームとアカデミーで長年指導に携わった長島裕明氏は2023-24シーズンの後半に当たる今年1月からBGパトゥムユナイテッドFCのヘッドコーチを務めていたが、契約満了に伴い、6月16日に開催されるタイリーグカップ決勝ムアントンユナイテッド戦を最後に帰国することが決まった。
 
 長島ヘッドコーチが加入した時点でBGパトゥムはタイリーグ1での順位を4位としていたが、その順位を維持したままリーグカップの決勝まで駒を進めた。手倉森誠監督が指揮を執り、チャナティップ(元札幌、川崎)やティーラシン(元広島、清水)も所属するビッグクラブでどのような経験が出来たのか。帰国後はJクラブでの活動が見込まれる長島ヘッドコーチへの緊急インタビューを一問一答でお届けする。
 
◆サッカーを愛するオーナーがクラブを支える
 
──あらためてBGパトゥム加入の経緯を振り返りたい。手倉森誠監督の縁で、同クラブのヘッドコーチに招かれたということだったが……。
 
「そうですね。手倉森監督がぼくに声をかけてくれました。ちょうどギラヴァンツ北九州の契約が終わり、かねてから海外で仕事をしてみたいという想いもあったので、いい機会だと考えてお受けしました」
 

 
──選手のメンタリティやクラブの練習環境など、タイのサッカーに関して気が付いたことは。
 
「タイではサッカー人気が非常に高まって、これから大きな成長を遂げていきそうだと感じます。サッカーを愛するオーナーがクラブを支えるという構図なので、クラブによっては資金が潤沢です。BGパトゥムもそのひとつで、日本にもないくらいの良質な練習環境を備えているんです。しかも自治体のものではなくクラブで所有している施設なので、自由に使える。選手たちのメンタリティに関して言うと、とても真面目だと感じます。献身的で、謙虚に学ぼうとする姿勢は、日本人にも通じるところがある。まだまだ伸びしろは大きいと思います」
 
──なるほど、今後日本のようになっていく可能性もある、と。
 
「タイのサッカー関係者からは『ジャパンズウェイ』という言葉を聞く機会が多く、日本から吸収しようという意欲を感じます。実際に、BGパトゥムではチャナティップ、ティーラシン、チャウワットという元Jリーガーが主軸になっています。チャウワットはセレッソ大阪在籍時にU-23での出場が多かった選手ですが、それもいい経験になっている。日本を経験した著名な選手と、日本の監督が率いるこのクラブで、五輪代表選手のセンターバックであるポンド、右サイドバックのテンといった若手が育つというサイクルになってきているんですね。フル代表の監督は日本人の石井正忠さんですし、これからも日本がタイの発展に携わっていく可能性は十分にあると思います」
 
──タイの選手の印象は。
 
「真面目さとか献身的な姿勢はすごく感じます。個人戦術やグループ戦術、与えられたタスクを実行しようとする姿勢がいいですね。日本代表とタイ代表の親善試合をご覧になったかと思いますが、ああいう4-4-2の組織的なサッカーを遂行することも出来る。一方で、まだ自主的な判断を求められた時に、ちょっと戸惑う傾向があるように映りますね。決まったことを忠実におこなう能力は高いのですが、『自分たちでアイデア出してやっていいよ』と言うと、そのアイデアがなかなか出てこなかったりする。ただ日本を経験している選手はそれが出来ますから、慣れの問題かとも思います。そういう自主性がもっと出てくると、将来が楽しみですね」
 
──主体的に判断してゲームを動かしていける選手はいるのか。
 
「ムアントンというクラブのアカデミーにゴールデンエイジのような世代があったみたいで、その時の選手は自主的な判断を下してゲームを進めるということが出来ます。だから、アカデミーに力を入れていくと絶対よくなると思いますし、それが促進されると思います。ぼくも6カ月指導させていただいて、ちょっとした細かなところを仕込むだけでだいぶプレーの質が向上するという体験をしました。現状では、受ける前に周りを見るとか、パスしたら動くとか、ボールが動く前に考えておくとか、あるいは3人目の動きのところが少し足りない。ワンプレーしたら頭が休みがちになるんですが、そこを修正するとかなり向上します。伸びしろはありますよ。絶対」
 

 

 
──BGパトゥムはリーグ戦を4位で終え、カップ戦では決勝に進出して16日にその試合を残している段階だが、半年間の手応えは。
 
「自分なりに精一杯やって手応えを感じています。選手たちのよさ、あるいは彼らの課題を意識して、週末のゲームで勝利を収めるだけではなく、個人個人とお互いに信頼関係が出来つつあるなかでの退団ですので、残念ですけれども、選手たちに伝えたいことは伝えられましたし、彼らは確実によくなっていると思います。リーグ戦の順位はぼくが来た時と変わらず4位の成績で終わってしまいましたが、5月になってからは全勝していて、なおかつ、練習試合でも先発メンバーと同じようなサッカーが出来て、手応えのある相手にしっかり勝っている。来た当初は浸透させられなかった部分が伸びてきて、来年以降はもっといい戦いが出来るんじゃないかと思っています。充実した半年間でした」
 
──タイでの挑戦を終えてどのような感慨があるのか。
 
「初めて海外で指導をさせてもらって、英語もタイ語もわからない日本人が、専属の通訳がいないなかでやる難しさもありましたけど、伝わった時の充実感は大きかったですね。毎日が修行のようで、鍛えられました。うまくいかないこともいっぱいあるんですけど、間違いなく日本では出来ない経験をさせてもらえました。まだまだ自分を鍛えてもらえる場所があるんだな、と思いましたね」
 
──そのように新鮮な刺激を得て、これから再びJクラブでの仕事に取り組むこととなりそうだが、今後に向けての意気込みは。
 
「タイに行く以前よりももっとサッカーを好きになりましたし、生命力が高まった気がします。より強くなれたかな、と。年齢は年齢ですけど(※今年の3月22日に57歳の誕生日を迎えた)、少しでも身体を維持出来るように努力したり、どういう表現で伝えたほうがいいか言葉の使い方を考えたり。それは日本でもいっしょだと思うんですよね。日本語でもどういう言葉の選択をするか、どういう風に伝えるかということが重要だと思いますから。これからもいっそう仕事の質を高めていき、サッカーの指導を頑張りたいです」
 

 
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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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