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【無料公開】【東京ダービー連動企画】【新東京書簡】特別版『ヴェルディだけには負けられない』後藤(23.7.10)

 

7月10日、FC東京の練習場である小平グランドにて。一般公開された全体練習の際には「ヴェルディだけには負けられない」などの横断幕が掲げられた。撮影:後藤勝


 
◆歴史となった東京ダービーに書き加える新章
 
 12年ぶりの東京ダービー。これだけ月日が経つと、FC東京とヴェルディの対決の図式そのものを知らない、またはそれに興味がない人も随分と増えているだろうと思う。新東京書簡の前身となる往復書簡形式の記事『東京書簡』がエルゴラッソで連載されていたことを知らない人も多いだろうし、そこで東京ダービーの結果に海江田さんと私、後藤が丸刈りを賭けた(カベジェラコントラカベジェラ)ことを知らない人も多いだろう。でも、それが歴史というものなのだと思う。
 
 たとえば、2005年10月22日、J1第28節東京ダービーの決勝ゴール。これに関しては、89分に途中出場の栗澤僚一が出したパスを同じく途中出場のササ サルセードが右足で撃ってニアサイドをぶち抜いてこの一撃だけでレジェンドになった、ということだけわかっていればよくて、これによって海江田さんが丸刈りになってしまったというサブエピソードは忘却されてもかまわない。ヴェルディのゴールキーパーが最近Twitterで元気な高木義成さんだったり、ボランチが現SC相模原監督の戸田和幸さんだったり、その後、東京都社会人リーグ1部の東京ベイFCでプレーすることになる町田忠道さんがJ1最年少得点記録保持者の森本貴幸選手(※現役)との交代で途中出場していたり、そういうことは知らなくてもいい。知っていたほうが楽しいが。
 
 灰皿事件も、詳細は知らずとも、FC東京を応援する側にいた不心得者がしでかした暴力事件が試合前にあった(裁判を傍聴して被告にも会いましたよ)とだけわかっていればよくて……ああでも、被告が自らが起こした事の重大性を省みずに自己弁護に徹していたところは腹立つけど。
 
 歴史を遡れば、両クラブの間にバチバチとした衝突の火種になる出来事はいくつかあって。東京のプロクラブ化の過程、ヴェルディの川崎から東京への移転と、経緯そのものにもいろいろある。ちょっと書き出すと気分がささくれだってくるのでやめておくが、とにかく激しい対決になる前提はいろいろあった。
 
 でもそうした詳細は多くの人には伝わらずに、何かの本を紐解くと載っている“歴史”になる。それは歴史書を読んで学ぼうとする人や、もともとわかっている人たちの間でのみ残り、受け継がれるようになる。
 
 7月10日、小平でFC東京U-18出身の木村誠二を掴まえた。彼はこう言っていた。
 
「なんでここまでバチバチしてるかってのは、正直知らないですよ。ぼくもそんな、年齢上じゃないし」
 
 それでも「ヴェルディだけには負けられない」ということだけは肝に銘じている。アカデミーで叩き込まれてきたからだ。本質だけは、全員に行き渡る。だから、ヴェルディ戦を控えた練習場、トップチームの練習が一般公開される日に「ヴェルディだけには負けられない」と書かれた横断幕が掲出される。それだけが唯一、東京に関わるすべての人が知るべき言葉だからだ。
 
 ピーター クラモフスキー監督は現場のトップだから、本質を理解したうえで、歴史も勉強している。天皇杯3回戦を控えた囲み取材で、ピーターさんは「ダービーがすべてのサポーターにとって大事だということもわかっています」「どれだけこのダービーが大事か。私もそこは理解しています」と、ダービーの重要性に何度も言及した。
 
 要するに、突き詰めると純粋に負けられない戦いになる。その起源がどうだったのか、最新の“現在”に於いては知らなくてもいい。ただ、重要であるということだけはわかっておいたほうがいい。
 
 J2ではヴェルディとFC町田ゼルビアがかなりバチバチやっていた。城福さんも“らしい”戦闘モードだ。東京クラシック、ゾクゾクするね。結局、その勝負がどれだけすごいものになるかは、そこに傾けられた人々の熱量の総量による。
 
 東京クラシックと東京ダービーを比べてどっちが上か、なんて論じる必要はない。ダービーはダービーで、自ずとバチバチやるものになるだろう。明大前LIVREのイベントは、そんな人たちの熱を少しでもすくい上げるものになればと思う。
 
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