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アマラオからすべてのFC東京ファン、サポーターに向けたメッセージ「みんなで助け合って、信じて、ひとつになろう」【2023 J1第13節 FC東京vs.川崎/多摩川クラシコSP03/無料公開】

 

撮影:後藤勝

 クラブとトップチームの苦境に気を揉みながら5月12日の多摩川クラシコを迎えたレジェンドがいた。試合開始が近づく頃になってあらわれた背番号11は、そのとき何を想っていたのか。すべてのFC東京ファン、サポーターに向けたメッセージをお届けする。

◆「今日いい試合になると思う」と言い、予感していたアマラオ

 HUBのイベントで石川直宏クラブコミュニケーターとFC東京の試合を観戦した日の思い出について水を向けると、アマラオアンバサダーは「いつも楽しいよ」と笑みを漏らした。

「サポーターのみなさんも(アウエーゲームの)遠くの現地に行けない場合、お店に集まるわけだけど、スタジアムにいるみたいにすごく応援していて、何人もの人たちが熱い声を出していたからね。おもしろかった、本当に」
 ナオがビールを注ぎ、アマがお酒を配り、ふたりとも働いていた様子を、アマラオは「ナオは優しいからさ。ビールも最高においしかった」と言い、振り返った。

 ナオのTwitterアカウント閉鎖後、彼に会ったのは国立が初めて。長話をする機会はなかったが、次の機会には「気にしないで」と伝えたいという。

「いまはサポーターと選手の間に入っているから。(それぞれに)いちばん近いのがナオでしょ。そのナオにぶつけるみんなの気持ちもわかるし、ナオには気にしないでくださいと言いたい」

 東京ガスの時代からMIXIの時代までを通じてFC東京に携わりつづける人間も少なくなっていくなか、世代を超えてすべての人々を結びたい想いがアマラオにはある。

「いまは東京ガスとMIXIがひとつになった。だから昔からのサポーターのみなさんと、いまの若い選手と、いっしょになって応援してほしい。チームのことを考えて。応援に年齢は関係ないからね。年寄りもそう、若いもそう、ひとつになってもっと強くなる。それがいちばんいいと思うね」

 選手の後押しをしてくれるサポーターを、アマラオは現役のときから重要な存在だと認識しつづけている。

「サポーターが観に来ないと試合は出来ないと思う。誰のために頑張るのか。みんなが熱い応援をしに来て、みんながスタンドから力を送って。コールがあるじゃない? ピッチの中で、本当ね、耳に聞こえているんだよ。すごい。みんなの声ですごくモチベーションが上がる。だから必要な存在だと思うね、サポーターは。それがなかったら試合はつまらない。
 あとは、選手がピッチの中でみんなのために頑張るから。もちろん自分のためでもあるけど、でもスタジアムに観に来ているサポーターのみなさんにゴールを捧げたいという気持ちもある。それはたぶん選手はみんな持っているし、オレは持っていたからね。応援に来て最初から最後までコールするじゃない、そうしたらオレが頑張らないと意味がない。みんなが喜ぶいい仕事をしたい気持ちがあるからね。
 もう一回言うね、サポーターのみなさんは必要な存在。来てほしい、本当に」

「やる気あんのか」と野次を飛ばされても、それを堪えるのが選手という存在。負けているときでも勝とうとしていないわけではないが、それはスタンドには伝わりにくい。

「サッカーというスポーツには負けと勝ちがある。引き分けもある。週末の試合のために練習をして、勝ちたい気持ちはある。でもみんなに考えてほしいのは、相手も頑張ってる。相手もその試合のために練習しているから。練習したことが試合で出来ればいい勝利が来るかもしれないけど、でもサッカーは相手があるから、いつも同じ結果じゃない。本当に、結果に関してはいちばん難しいスポーツだと思う。
 一年間の長いシーズンだけど、考えるのは近くの試合のこと。次の試合を考える。一つひとつ勝っていけたらいいけど、サッカーはその勝利が約束されていないからね」

 この多摩川クラシコを迎えるまで、東京は連敗を喫して窮地に陥っていた、「FC東京は勝っていないが、こういうときこそ応援してほしいか」と訊ねると、アマラオは頷いた。

「そうですね。さっきも言ったけど、サポーターは必要な存在。サポーターがいてチームがなくても意味はないし、サポーターがいなくてチームだけあっても意味はない。サポーターもチームもみんながひとつになったら強くなって、いい結果も来ると思う。選手はピッチの上で頑張るけれど、いつも勝つわけじゃない。いつも負けるわけじゃないし、いつも引き分けるわけじゃない。みんな頑張ってる。サポーターはチャントを歌うし、選手は練習している。けど、結果として勝利が来ないこともある。
 サポーターもひとりじゃ元気ないと思う。でもそのひとりのために周りのふたりも頑張ってるし、それはすごく大事。試合もそう。たとえばアマラオがいまひとりで元気なかったとして、周りの10人に元気があればいいし。ナオが元気なくて、アマラオが元気なくても、ほかの9人が元気出したら負けないと思う。
 それが大事。いつも仲間を信じて、仲間同士助け合って、それがサッカー。そういうスポーツね。だからおもしろい。信じて助け合わないと難しい」

 アマラオはこの取材のあとに始まる多摩川クラシコについて、絶対に勝つというようなことは言わなかった。誠実に、事実を伝えてきた。

「今日、多摩川クラシコだけど、どっちが勝つかは本当にわからない。両方ともあまりチーム状態はよくないけど、でもいいチームではあると思う。どっちが勝つかはわからない。オレは東京応援するね、東京勝ちたいけど、でも本当にわからない。クラシコだから。
 サポーターも今日いっぱい来ると思う。フロンターレも近いからいっぱい来ると思うし、(勝つのは)どっちかな。まず応援してほしい」

 東京の選手たちはこの多摩川クラシコに向けて準備をするに当たり、週の頭、立ち上げのトレーニングで選手間ミーティングを実施した。同じようなことが、アマラオの現役時代にあったという。

「2002年だったかな……全然勝てなかったとき、札幌で試合をすることがあって(2002年J1セカンドステージ第5節から7節まで3連敗、第8節は厚別で札幌と対戦)、オレは選手だけのミーティングでこう言った。
『ピッチに入ったら、選手みんなでひとつになってやろう』
 そのときは、オレはゴールを決めたし、4-0で勝った。みんなでやらないとダメ。みんなで助け合って、信じて、やろう。ひとつになろう。今日いい試合になると思う。勝ちましょう」

 実際には、この記事は試合後に出るとわかっていて、あえてアマラオは「勝ちましょう」と言った。そして一体感のある、魂を震わせるような渾身のフットボールで東京は勝利を収めた。力を合わせればこれだけのことが出来る。このあとだって、立場や考えがちがっても、ひとつになれば困難を打破していけるはずだ。アマラオの想いは届くだろうか。届いてほしい。

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