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アルベル監督、信念は揺るがず。「ボールを大切にするスタイルは定着に時間がかかるかもしれないが、最終的には安定した成功を長くもたらす」【2023 J1第8節 FC東京vs.C大阪 Preview Part2/無料公開】

 

撮影:後藤勝


 
 昨シーズン王者の横浜F・マリノスからやってきた仲川輝人は、4月15日のJ1第8節セレッソ大阪戦を前に「いまは耐えるというか、試行錯誤しながら踏ん張る、我慢するときなんじゃないかと思っています」と語った。同様に、アルベル監督も長い道のりを覚悟しているようだ。
 
「私が信じて疑わないことがあります。ボールを大切にするスタイルというのは、もちろん定着するのに時間がかかるかもしれませんが、最終的には安定した成功をクラブに長くもたらす。一方でボールを大切にしないスタイルというのは、いいシーズンもあるかと思いますが、しかしそうではないシーズンもあり、不安定な成功しか収めることが出来ないと思います。そして、悪いシーズンには降格争いをする危険性も出てくるでしょう。と同時に、ボールを大切にしないスタイルはなかなか選手の成長も促せないと思います。だからこそ、私はこのスタイルを信じて疑っていません。継続的な成功を収めるクラブに成長してほしいと思うので、私はこのスタイルを信じています」
 
◆目の前にいる選手たちの特長を踏まえたうえで最善の努力
 

撮影:後藤勝


「マンチェスターシティやバイエルンミュンヘンであっても毎年補強する」という従来の持論も崩してはいない。この日も、選手も監督も入れ替わりながらクラブは成長していくものだという発言のスタンスは変えなかった。
 
「我々監督の仕事の難しいところは、あらゆる責任を負うということです。私は私でミスを犯しますが、自分自身のミスだけでなく、フォワードのミス、ゴールキーパーのミス、補強をするお金があるのかないのか、審判が笛を吹くのか吹かないのか、VARが正しい判断をしているのかどうか、その部分も監督が責任を負う。そして眼の前にいる選手たちにどう私が適応出来るのか、その責任が私にはあります。
 もちろん、補強を期待しています。ハーランドを補強出来たとしたら、私は突然すばらしい監督に変身することが出来るからです。たったひとりの選手の加入によって私の監督としての評価がガラッと変わる。そのようなことが起こりうるのがサッカーの世界です。ただ、そこは私が決定出来る部分ではない。
 私はいま、目の前にいる選手たちの特長を踏まえたうえで最善の努力、よりよい仕事をしようと試みていますし、全スタッフも既存の選手たちとともに最高のパフォーマンスを出すことに最善の努力をしてくれていると思います。ただ、スタイルの変化の最終ピースをうまく嵌めるには、やはりそのスタイルにより適した選手が加わることが必要だと思いますが」
 
 長期的に見たときの最終段階には補強が必要だとしてもそれは先の話でしかなく、ハーランドではなく現実に味スタのピッチを踏む選手たちをいかにスタッフたちが支え、助け、向上させていけるかがいまは重要だ。アルベル監督は「離脱していた選手たちが試合勘を取り戻すにはある程度の時間を要します。前節でも凌磨、帆高、柊斗にもう少し時間が必要だというものが見受けられました。彼らがなるべく早くいいかたちで試合勘を取り戻してくれることを期待していますし、加えて若手選手たちのさらなる成長にも期待したいと思います。2カ月間同じメンバーで戦えなかったことは残念ですが、戻ってきた現在からまたチームの成長を促していきたい」と、レギュラーメンバーによる熟成と、彼らが不在のときに出場していた選手たちの底上げに傾注することを宣言した。
 
「4-3-3と4-2-3-1とでは守備の仕方に若干の差がある程度。状況に応じて使い分けていきたい」という指揮官の言葉も加味すると、小泉慶と松木玖生のボランチ、安部柊斗のトップ下という4-2-3-1でスタートから臨む可能性もある。安部に関しては「昨シーズンに比べてテクニックが向上し、落ち着いたプレーが出来るようになっています。典型的なトップ下かと言えばそうではなく、スペースへ積極的に飛び出しますが、これは他の選手の特長を考えると有効。運動量が多く、分断しがちな前とうしろを結びつけることが出来ます」と言い、評価は高い。「基本的には4-1-2-3が多い」と仲川が言うように従来のフォーメーションで始まった場合でも、安部の起用、または4-2-3-1への変更はありうるのではないか。
 
 アルベル監督はセレッソ戦をこう展望した。
 
「セレッソさんはテクニックがあり、クオリティの高い選手が揃っているチームです。特に相手チームの守備ブロックが下がった場合、セレッソさんの武器はより顕著にあらわれると思います。我々はそのようなチームを相手にして我々の武器をうまく活かさなければいけない。インテンシティの高いプレーを中盤に求めたいと思います。同時に、プレーのテンポの速さも求めていきたいと思います。あとは、相手ゴールに向かう意識も活かしていきたい。セレッソさんに余裕を与えてプレーさせてしまうと彼らの武器が光り輝き、我々にとってとても難しい試合になってしまうと思います。我々の選手の特長を踏まえたうえで、さきほどお伝えしたような部分を活かして明日の試合に臨みたいと思います」
 
 前々節でサガン鳥栖に敗れ、ルヴァンカップでガンバ大阪に敗れ、前節は湘南ベルマーレと引き分け。公式戦の連敗は止めたが、3試合勝利がない。成長の過程とはいえ、セレッソ戦で求められるのは勝利のみ。遠くにあるチームづくりのゴールを睨みながらも、現有戦力の能力を最大化して難敵を迎え撃つ。
 
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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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