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アルベル監督「こういうことをしっかりとクラブ側から誰かが、 たとえば私が配信しなければいまクラブがどのような方向に進んでいるのかをサポーターが理解出来ない」【無料公開】

 

撮影:後藤勝


 前からプレッシャーをかけるとうしろのスペースが空き、うしろのスペースを消すと前を使われる。相手の出方や試合の状況もあり、ラインの高さや獲りどころの設定を含めた守備の整理は簡単ではない。J1第24節清水エスパルス戦はたぶん何か意図があってあのような守り方になったのだろうが、結果的にそれで有利に持っていくことが出来なかった。ここから今シーズンの残された期間でどのような守備をしていきたいのか、その方向性についてもし言えることがあれば教えてほしい──こう訊ねたところ、アルベル監督は清水戦の意図のほか、自身の考えについてあらためて語った。その一言一句をお伝えする。

◆清水戦でプレスを自重した理由は3つある

 (清水戦でプレスを自重した理由は)3つあります。
 まず暑さというものが影響しています。3カ月前といまとでは、やはり同じものを選手たちに求めるにはあまりにも(気候が)異なるので、そこに我々は適応しなければいけません。

 ふたつ目は、相手チームも我々のことを分析してくるので、前からプレスをしてくるということを予測し、それに対してプランニングし、我々がプレスに行くと相手は長いボールを放り込んでくる、ということも予想されます。

 三つ目に清水にはクオリティの高い選手が揃っていることもこの間の試合の展開に影響を及ぼしています。しかもうまく打開されると(フィニッシュには)サンタナという危険なフォワードがいることもあり、慎重に戦わなければいけないということもありました。

 清水の先制点は相手の押し込んだ攻撃から来たのか、カウンターアタックから来たのかどちらだったでしょうか? すばやい攻守の切り替えから、クロスボールだったと思います。

 このリーグはとても拮抗したリーグだとあらためて思います。まだ我々は成長のプロセスの途中です。

 あの認められなかったゴール(清水戦前半39分、アダイウトンがネットを揺らした場面はオフサイドの判定)がもし認められていたとしたら試合展開はちがっていたと思います。我々が先制点を決めた展開であれば、後半、清水がより前がかりに攻撃してくることが予想され、背後にスペースが生じたと思います。そのスペースを活かして我々が2点目、3点目を獲れた可能性があります。その際には東京がすばらしい試合をしたという評価になるかと思います。

 清水戦しかり、そのほかの試合でもとても拮抗した、どちらのチームが勝ってもおかしくない試合がつづいています。名古屋や神戸、浦和は我々以上に経営規模の大きなクラブです。つまりはよりよい選手を揃えている可能性が高い。すばらしい選手が揃っている。けれども、いまは苦しんでいます。何が言いたいかというとこのリーグは拮抗しているということです。
 第24節では湘南が札幌に1-5に敗れましたが、この結果が反対になっていてもおかしくはない。ホームのジュビロ戦では相手のキーパーにミスがあって先制し、その得点がその後の試合展開に影響を及ぼし、我々は勝利を収めることが出来ました。多くの試合にそのような展開があると思います。

 ボールポゼッション率を見ても我々が過去よりも成長していることは数値にあらわれています。うしろからしっかりとビルドアップをするということを試みているのが十分に伝わるかと思います。そして、いままでのこのプレースタイルでプレーしたことのない選手が多くいます。当然、我々がたどり着きたいレベルからはまだまだ遠いわけですけれどもただ選手たちはこのプレースタイルを信じて、いましっかり取り組んでくれていますし、そしてボールを保持するところにこだわりをもってやろうとしてくれています。そこを私は評価しています。

 勝ち負けのみに興味を持つ人々がたくさんいることは私も理解しています。けれども、このクラブの将来にとって私たちはいい方向に進んでいると私は信じています。おそらくこのクラブに栄光が訪れるときにいるのは私ではなくほかの監督である可能性のほうが高いでしょう。しかしそのことに関係なく私はこのクラブが成長するための取り組みに集中しています。

 私はタイトルを獲りたいとか、決してそういうことに集中しているわけではありません。将来、私のことを「FC東京で新たなプレースタイルを確立した監督である、そしてすばらしい人物であった」というように思い出してほしいという想いがあります。タイトルを獲った監督として思い出に残るようなことを私は望んでいません。
 私を含めて誰もがタイトルを獲りたいという想いを持っています。たとえば来年タイトルを獲れればそれはすばらしいことでしょうけれども、私にとってもっとも重要なのはこのクラブが継続的に多くの成長を成し遂げられる方向に進む、その成長のプロセスです。そのプロセスに携わることに私はこだわりを持っています。

 なぜこのような話を何度も繰り返し、説明をしているのかというと、日本ではこういう説明をする人物が少ないからです。こういうことをしっかりとクラブ側から誰かが、たとえば私が配信しなければいまクラブがどのような方向に進んでいるのかをサポーターが理解出来ないです。
 サポーターは我々にとってお客さまです。そしてサポーターのみなさんとクラブがしっかりコミュニケーションをとることが大切だと思っています。クラブの所有者には主要株主やオーナーがいますが、実際にはサッカークラブのオーナーは会社ではなくサポーターこそがそうだと私は認識しています。サッカークラブにとってのほんとうの意味でのオーナーであるサポーターの方々には、クラブがいまどの方向に向かおうとしているのかをしっかり継続的に配信し、情報を提供しなければいけないと思います。だからこそ、こういうかたちで何度も何度も私はどの方向に進んでいるのかをみなさんに対して説明している次第です。

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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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