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神戸に移籍して間もなくJ1デビューを果たした古橋亨梧「ひとつの夢が叶った」「岐阜の誇りとしてもっと活躍したい」【トーキョーワッショイ!J+/無料公開】

 イニエスタの出場がなくなったものの、味の素スタジアム史上三番めに多い44,801人の観衆が詰めかけたJ1第20節「FC東京vs.ヴィッセル神戸」は、後半45分にリンスが決勝ゴールをマーク、東京が1-0の勝利を収めた。対して、前節よりも内容がよくなかった神戸の吉田孝行監督は、変化を加えるために、セカンドハーフの開始から渡邉千真、そしてJ2のFC岐阜から移籍してきたばかりの古橋亨梧を投入した。
 室屋成とマッチアップすることとなった古橋は、初顔を相手にまだ特長を把握していない室屋からボールを奪い、あるいはウェリントンやティーラトンとの連携を見せ、渡邉にパスを通してウェリントンのシュートを呼び込み、自ら切れ込んでシュートを撃つなどのプレーで目を引いた。
 吉田監督は「まだ練習に合流して2日しかやっていないんですけど、期待どおりのシーンが二、三度あったので、今後期待が持てるんじゃないかと思います」と評価。上々のJ1デビューだった。

「こうやって満員のピッチに立つことに憧れてきていました。ひとつの夢が叶った」
 一見とんとん拍子のようだが、そう楽な道のりではなかった。2017年、中央大学を経て辿り着いたJクラブは、若手の登竜門的な位置づけにある岐阜。ここで左ウイングのポジションを確保したものの、庄司悦大にボールが集まるサッカーのなかで、必ずしも持ち味を出し切っているとは言いがたかった。
 庄司、シシーニョ、大本祐槻が流出した今シーズン、民主的かつ集団的な傾向を増した岐阜で、古橋は中核を占め、ゴールを量産した。第15節、大宮アルディージャを圧倒し、2-0で下したあと、古橋は熱っぽく語った。
「ことしは昨年よりも、チームの仲間が特長をわかってくれている」
 組織的なサッカーのなかで、自身がより活かされていると感じていたのだ。

 上位躍進の原動力ともなり、ファン、サポーターの支持をおおいに集めた。だからこそ神戸への移籍に際しては悩み、移籍したうえでは岐阜のためにも神戸で活躍するべきだとの想いにいたった。
「正直、すごく悩んで。岐阜もあまり調子がよくなくて。(神戸に)来るかどうしようか迷ったんですけど、挑戦したいという気持ちがあり、周囲と相談して決めました。岐阜で(プロのキャリアを)スタートさせてもらった感謝の気持ちもありますし、岐阜で何も残せなかった後悔はありますけど、(だからこそ)岐阜の誇りとして、もっともっと自分のよさを出してJ1で活躍すれば岐阜の評価ももっと上がると思いますし、もっともっと自分を出していけたら」

 岐阜のときと同じ、攻撃的な左のポジション。「岐阜でやっていたことをここで出せれば」とやってきた神戸で、加入間もないわりに、周囲とのコンビネーションも良好であるように映る古橋だが、やはりまだそれも十分ではなく、持ち味も出し切れていない。
「自分の持ち味を出そうと思い、思いきってやりました。(ウェリントン、ティーラトンとは)お互いにやりたいことがはっきりしていますけれども、まだまだ合っていない部分があるので、ちょっとずつ合わせられれば」

 とはいえ、林彰洋に止められたシュートに関しては「自分のよさを出せた」と手応え。相手がウェリントンと自身のどちらに食いつくかでパスとドリブルのいずれかを決める冷静さもあった。個の能力そのものは、J1で通用する。
 クラブの主力、そして代表へ。高みに登ることで神戸のファン、サポーターを満足させることができれば、それが岐阜に対する恩返しにもなる。岐阜の誇りを胸に、古橋はこれからJ1のピッチを駆け抜けていく。

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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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