青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン

J3の難しさを知り、あらためてJ2昇格の決意を掲げる阿部伸行【2018 Jリーグキックオフカンファレンス/トーキョーワッショイ!J+】

長野の守護神となった阿部伸行。

FC東京U-18出身の阿部伸行が昨年からJ3のAC長野パルセイロでプレーしている。流通経済大学時代に難波宏明(現FC岐阜)らとともに同大学の関東大学リーグ1部初優勝に貢献しただけでなくJFLにも出場していた阿部は、J1、J2、J3、JFLすべての全国リーグでプレーした経験を持つ守護神となったのだ。ユース時代にはFC東京U-18の日本クラブユースサッカー選手権初制覇を成し遂げ青赤の歴史にも名を刻んでいるこの男に、長野のJ2昇格にかける想いを訊いた(2月15日、「2018 Jリーグキックオフカンファレンス」で取材)。
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2017シーズンはAC長野パルセイロの守護神として30試合に出場した阿部伸行。それだけに2位の栃木SCと勝点10差の5位で終えたことの責任を痛感している。シーズンを通しての分岐点となったのは、くしくも古巣との対戦。9月17日、江東区夢の島競技場に乗り込みJ3第23節に臨んだ長野はFC東京U-23と戦い、オウンゴールによる失点で1-0の完封負けを喫した。
「きつい1敗でした。(その時点で2位のアスルクラロ沼津まで勝点7差と昇格争いが厳しく)勝点3以外許されない状況で、勝点ゼロで長野への帰路につくのは厳しかった。あれがすべてではありませんけれども、ひとつのターニングポイントであったと思います」
監督が交替し、体制が変わったFC東京は、U-23の編成に自由度が増し、くだんの試合では大久保択生、米本拓司、梶山陽平、前田遼一と4人のOAを起用。先発11人中、U-18所属の選手はまだプロ契約を締結していなかった平川怜のみで、残る6人はU-23世代の岡崎慎、鈴木喜丈、山田将之、内田宅哉、小川諒也、ユ インス。ユースの起用が多いU-23にあって、もっとも強力な陣容だったと言っていい。
J3にはU-23が3チームあり、特に東京の場合はフレキシブルな編成で、試合ごとの強さが大きく変動する。長野はいわば運悪く、高難度のカードを引いてしまったことになる。J3からJ2昇格をめざす各クラブはこの特殊性とも戦わなくてはならない。しかし阿部はその事実を言い訳にはしない。
「もちろんそうです。その独特さは開幕する前からわかっていました。でも、未知の選手が唐突に出てくるわけではない。スカウティングを担当するコーチは苦労をしているようでしたが、J1で経験がある選手が出てこようが、戦う覚悟はできていました。端的に、ぼくたちがあの試合で力を出しきれず、敗れたことがすべてだと思います。失点をゼロに抑えて引き分けにすることもできましたし、勝点3を獲るチャンスもあった。相手は関係ないです」
シュート数はFC東京U-23の6本に対して長野は7本。阿部の言葉にはあと一歩のところで制しきれなかった実感がこもっている。
「所属期間は昨年の一年間だけですが、長野は地力のあるチームだと思っています。ホームでも引き分けで勝点1しか獲れませんでしたが、あの試合にも勝つチャンスはあった。対戦2回で勝点1は少ないですね」
長野エルザ時代に地域決勝を取材したことがあるが、そのときから周囲の期待は大きかった。ポテンシャルの高さに反して各カテゴリーの突破に時間がかかっていることは否めない。この歴史を耐え忍んでいるファンのためにも、J2昇格を達成したいという想いは強い。
「自分たちの力で、昨年がっかりさせてしまったサポーターのみなさんをスタンドに呼び戻したい。また“長野のサッカーを観に行くか”と思っていただけるようなサッカーをするしかない。いまはコンディションを上げることと、開幕戦の準備に傾注しています。住んでみて実感しましたが、長野はスタジアムがすばらしく、サッカーに熱い土地柄。環境、条件は整っていますけれども、J2に相応しいチームとして認められるかは、リーグ戦での結果にかかっています。ぶっちぎりで優勝したいところですが、そんなに甘いリーグではないということは昨シーズンでわかりました。大きな目標はあっても、一試合一試合の積み重ねだと思います」
虚心坦懐の境地にいたった阿部が長野を牽引し、昇格街道へと導こうとしている。

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『青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン』は、長年FC東京の取材を継続しているフリーライター後藤勝が編集し、FC東京を中心としたサッカーの「いま」をお伝えするウェブマガジンです。コロナ禍にあっても他媒体とはひと味ちがう質と量を追い求め、情報をお届けします。

 

 

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●MATCH 試合後の取材も加味した観戦記など
●KODAIRA 練習レポートや日々の動静など
●新東京書簡 かつての専門紙での連載記事をルーツに持つ、ライター海江田哲朗と後藤勝のリレーコラムです。独特の何かが生まれてきます

そのほかコラム、ニュース、などなど……
新聞等はその都度「点」でマスの読者に届けるためのネタを選択せざるをえませんが、自由度が高い青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジンでは、より少数の東京ファンに向け、他媒体では載らないような情報でもお伝えしていくことができます。すべての記事をならべると、その一年の移り変わりを体感できるはず。あなたもワッショイで激動のシーズンを体感しよう!

 

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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

 

■J論でのインタビュー
「ライターと編集者。”二足の草鞋”を履くことになった動機とは?」後藤勝/前編【オレたちのライター道】

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