想いと戦術の両面を大事にした“カズ東京”が示す“勝ち方”【チャンピオンシップ第3報】
◯想いを大事にできなかったら勝ちは絶対に転がってこない
試合後のミックスゾーンで佐藤一樹監督の囲みが終わろうとするとき、「最後に(小林)真鷹を使うのは決めていたんですか」と訊ねると、答えはこうだった。
「心情的には出したいなと思っていて。ただ試合状況が試合状況だったので、岡庭もそうですけどこういう張りのあるゲームにはプレミアの最後は全然出ていないですし、いくら真鷹とはいえ心情的に長い時間起用してそこが原因で万が一のことがあったとき、彼にそこまで背負わせるのはかわいそうだなと思う反面、最後はピッチに立たせてあげたい、と。けがで出られない(坂口)祥尉のユニフォームはきょうもぶら下げていましたけれども、そういう想いを大事にできなかったら勝ちは絶対に転がってこない」
断腸の思いで出場時間を絞り、小林真の出場時間はわずか1分、アディショナルタイム2分を加えても3分間。想いと現実がせめぎあった結果だった。
それでも、「こういうことも大事なんですよ」と情について説き、現実だけにならないところが“カズ東京”らしさだ。
個人と組織。
足許の技術と球際の強さ。
カミナリと仏の笑み。
冷徹な決断と温情あふれる言葉。
戦術と士気。
佐藤一樹監督、そして彼が率いたFC東京U-18は、常に何かを兼ね備え、併せ持っている。
自力優勝の可能性が消滅した「高円宮杯U-18サッカーリーグ2017プレミアリーグEAST第17節」では先発11人中9人が3年生だった。もう、あとがない。佐藤監督は最終節の先発を3年生で揃えた。前節では同日開催のJ3に招集されていた原大智と品田愛斗を起用できるからという台所事情もあったが、本質的には、この試合を最後にしたくない、いまのメンバーでチャンピオンシップまで戦いたいという3年生の想いにかけたからこそのスターティングメンバー編成だった。
結果として東京は、プレミア再昇格後の過去三年間一度も倒したことのなかった青森山田高校に勝ち、2位からの逆転でEAST優勝を成し遂げた。しかし、ただ美談めいた要因で勝ったわけではない。開始直後から6分までの序盤でゴールを狙う青森山田の攻勢を削ぐべく、キックオフと同時にいきなりギアを上げ、守備ではハイプレス、攻撃ではサイドからの積極的な仕掛けで主導権を握った。3年生の士気を高めて臨みはしたものの、精神論だけで勝てるほどサッカーは甘くない。対策、あるいは戦術的な裏付けが、“カズ東京”には常にある。
佐藤監督は人情家のモチベーターであると同時に、一定の大枠内で個の力を最大限に引き出そうとする戦術家でもあるのだ。
◯非情の二枚替え
WEST王者のヴィッセル神戸U-18と対戦したチャンピオンシップでも先発の11人全員が3年生だった。2000年早生まれの杉山玲央を除く10人が1999年生まれ。
もうひとつ重要なのは、この世代は3年前にもU-15年代の高円宮杯決勝で神戸と相まみえていることだ。そのときはFC東京U-15深川がヴィッセル神戸U-15に3-1の逆転勝利を収めている。
12月17日の埼玉スタジアムでは、ヴィッセル神戸U-15出身の選手が先発11人のうち5人を占めたのに対し、FC東京U-15深川出身の選手は先発11人のうち8人。精神面では東京が優位に立てるはずだった。
しかし試合が始まってみると、東京の動きが硬い。そして重い。まったく押し上げることができず、ドリブルも消される。佐藤監督は「想いが強すぎて硬くなった」と言っていたが、もしかしたら、週の半ばにはとれていたはずの疲労――全力を出し尽くしたvs.青森山田戦の代償が顔を覗かせたのだろうか。
ハーフタイムを経てピッチに登場した東京イレヴンには驚かされた。立ち上がりからファーストハーフ45分間の劣勢が嘘のような猛攻。わずか8分間で2-2の同点に追いついた。
そもそも、顔ぶれがちがっていた。非情の二枚替え。今シーズンの功労者である右サイドハーフの横山塁と右サイドバックの吹野竜司を下げ、
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