【無料記事/ルヴァンカップPOS第2戦第3報】シュート7本を撃ちながら無得点に終わるも、積極的な姿勢の範を示した中島翔哉(2017/07/27)
巧さや速さでピーター ウタカと永井謙佑が突出していることはたしかだが、前田遼一と中島翔哉が劣っているというわけではない。決定力に難があったとしても、前から相手ボールホルダーを追い、ショートカウンターのリズムなり循環をつくり出すプレーぶりは、チーム全体の機能を考えればとてもフィットしている。
3-1-4-2フォーメーションを採用したFC東京の新システムはボールを奪われ、それを奪い返してからが本番と言っても差し支えがないほど、フィールドプレーヤーが連動してプレッシングマシーンと化す代物。これは2016シーズン後半に篠田善之監督が掲げた「前からプレッシャーをかける」スタイルをより鮮明にしてくれるものであり、積極的に、跳ねるように躍動して前を向く中島は、たとえシュートが入らなくとも有効な存在だった。
次々にボールを奪い、仕掛け、シュートを撃つ中島の姿は、速攻大好きな東京ファンの求めるアタッカー像に近いのではないか。大熊東京時代のわかりやすい堅守速攻にも似た爽快感が、一段上の次元に昇華したような印象がある。
中島は言う。
「オープンになる展開もありましたけど、いつもよりも観ていておもしろさがある試合だったと思います。何人も出ていた若い選手がJリーグでも出られるようにしていきたいなと思っています」
室屋成の項で記したとおり、中島には「(室屋)成がシュートをやり方を教えてくれた(笑)。ミドルに関してはあれを真似して、ああいうシュートを撃たなきゃいけないと思っています」と、おもしろいことを言う余裕すらあった。プレーしている選手本人が楽しんでいるのであれば、スタンドのファンを楽しませることも可能だろう。
ボールを奪ってからゴールまでの流れにストレスを感じている気配はなく、中島は生き生きとしていた。
「そうですね、前を意識するというのはシノさん(篠田善之監督)がずっと言っていることですし、そのなかでどんどんミスを減らしていかなきゃいけない。もっとよくなるし、もっとおもしろいサッカーができると思います」
シュート7本で無得点という結果については率直に「もっと落ち着いてシュートを撃てればと思っています」と反省した。工夫がなかったわけではない。タイミングを図ってループ気味に撃つなど狙いを持ってプレーしようとしていたことはわかる。精度を高めなければいけないことは事実だが、撃たないことには決まらない。折れずにシュートを撃ち続ける姿勢を示した点は、チームが勇気持つために必要なものでもあったのではないか。
サンフレッチェ広島を相手に完封勝利を果たしたプレーオフステージ第2戦で重要だったことは、前からボールを奪いに行くだけでなく、うしろで構えたときにも危なげない守備ができたことだ。後半、フェリペ シウバにクロスバーを叩くシュートを許すなどピンポイントで危機を迎えてはいたものの、ディフェンダーはフォワードに、フォワードはディフェンダーに連動して組織的守備の機能を維持していた
「チーム全体が下がっているときはフォワードも少し位置を下げないといけないと思いますけど、獲ったあとに相手のゴールを狙うということは変わらない。状況に応じてプレーしたいと思います」
ラインを下げる時間帯への理解を示しつつも、高い位置でショートカウンターを狙っているときと劣らぬ意欲でゴールを狙うことで、相手にボールを保持されているときでも押し込まれる一方になることはなかった。この新しいスタイルでフォワードはどうふるまうべきなのか、この日の中島はその一例となっていた。
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◆書評
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「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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