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【有料記事/J1第18節第4報】Review◆取り戻した気持ちとクラブの総合力(2017/07/09)

ネイサン バーンズ最後の日、彼の肩を抱く石川直宏。傍らに矢野由治フィジカルコーチ。

はじめに独立したパラグラフをいくつか。

「18時45分に石川直宏が何かを話すらしい」と聞き、注視していると、彼はゴール裏に赴きトラメガでウルトラたちに何事かを呼びかけ、チャントの斉唱を促していた。その「何事か」はのちにファンも選手も全力を出し尽くそうという意味のことだったとわかるが、石川の仕事はそれだけではなかった。ウオーミングアップを終えて控室へと引き上げていく選手たち一人ひとりを出迎えていた。思えば、ネイサン バーンズ最後の日、チーム全員で記念撮影をしたあと、真っ先にバーンズへと駆け寄ったのも石川だった。自分が何をするべきかを、石川はよくわかっていた。
そうしてファンと選手それぞれの心を熱くすると、久々の味スタでの大きな仕事に「スタジアムはいいですね」と洩らしたという。

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連敗中の内容と結果に選手がプレッシャーを感じていないわけがなく、レギュラー陣のなかでは若い部類に入る室屋成にも当然のことながらそれはあった。米本拓司は「獲られたらおれが獲り返してやるから、どんどん入れよう」と室屋に話しかけ、前向きなプレーを促していた。励まされる立場の室屋もただそれに甘えるでもなく、必死だった。前半26分、自分よりもひとまわり大きな鹿島フォワードの金崎夢生を背負いながらその圧迫に耐え、はっきりと大きくクリアした場面を見ればそれはわかる。攻撃では果敢に相手陣内をえぐらなければいけないし、守備では泥臭くからだを張って危機を未然に防がなければならない。恥も外聞もなくただ懸命にプレーしていた。

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試合後、共同記者会見に臨んだ篠田善之監督は喉が枯れていた。大きな声を何度となく出したのだろう。チケットがすべて売り切れフルハウスとなった結果、声援のヴォリュームは極めて高くなり篠田監督が大声を発しなければならなかったことは容易に想像がつく。加えて、この試合の重要性、負けてはいけないという思いから、いつもよりもさらに大きな声で選手たちに伝えるべきを伝えなくてはいけなかったということもあるだろう。
数々の批判を甘んじて受け止めつつ、言い訳をせず反省し、連敗中も気丈にふるまいどの記者にも柔和に対応した篠田監督にも、監督なりの戦いがあったことを示す一端なのかもしれない。

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42,979人を集めてクラブが最高の舞台を整え、石川直宏が結束を呼びかけて戦闘態勢を整えた。連敗中の弱いチームが首位の鹿島アントラーズに立ち向かうには、この試合にすべてをかける以外にない。自ずと生まれた決戦の雰囲気も、いまできる最良のパフォーマンスを引き出す役に立った。その気迫がすばらしいと思う反面、冷静に考えると、相手の決定機のミスに助けられた幸運な側面があったことも否めない。最終局面では組織の破綻を個人能力で補うゴールキーパーには、失点した場面、それ以外にも相手に守備組織を割られていた場面のまずさがよくわかる。
林彰洋は試合後、次のように苦言を呈していた。

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