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【オフ企画第二弾】羽生直剛で振り返る2014年/04「特別ではないけれど特別なこと」(2014/12/31)

シーズン半ばからインサイドハーフで多くの出場機会を得た羽生直剛選手にフォーカスし、2014年を振り返る、オフ企画第二弾の第四回。
ナビスコでの初登場以降、羽生選手は「特別ではない」プレーを重ねて存在感を増していきます。それはチームの熟成に役立ちもしました。

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◆羽生直剛で振り返る2014年/04「特別ではないけれど特別なこと」

 

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3月21日のJリーグヤマザキナビスコカップ予選リーグ第1節、対鹿島アントラーズ戦は、2014年のFC東京がマッシモ フィッカデンティ監督の志向するサッカーを修得するうえで、ターニングポイントのひとつになったゲームだった。その後もワールドカップによる中断期間前のJ1第14節対ガンバ大阪戦で見せた完勝など、いくつかの節目となる試合はあったが、初めて光明を見出した公式戦という意味では、このナビスコ初戦に焦点を絞ってもよいだろう。

それまで4-1-2-3が機能しきらず苦戦していた東京は、このナビスコ対鹿島戦で、はじめて理想的と言っていいラインコントロール、整然とリトリートして美しいブロックを築いたディフェンス、連動したパスワークからのフィニッシュを披露した。鹿島は昌子源、柴崎岳、小笠原満男、遠藤康、土居聖真、ダヴィらが半数以上がレギュラーメンバーを占めていて「相手が弱かったからいい試合ができたのだろう」という評価は当たらない。たとえ相手の戦力に不足があったにしても、東京は森重真人、太田宏介、渡邉千真以外は総入れ替えである。東京のサブスティテュートが鹿島のほぼ主力組を相手にいい試合をして勝ったという表現が適切だろう。

このときの東京は選手同士が近い距離を保ち、巧みにスペースを消していた。相手ボールに対して自陣に引き、ブロックを形成したときには、これがイタリア流かと感じさせる端正なポジショニングを感じさせるほどだった。羽生は各選手の中間の位置にポジショニングをしてバランスを維持、そしてひとたび攻撃になれば、ちょこんとさわってすぐ次の選手にそのボールをはたき、動き直しをして連動する渦をつくり出していた。

リーグ戦では控えの選手を中心に構成されたメンバーがリーグ戦のメンバーにさきがけて理想的なかたちを提示したことは、サブメンバーでもこれができるという証明になり、かつ、チーム全体にとってひとつの手本ともなっただろう。事実としてこの日の先発メンバーからセンターバックの吉本一謙、出遅れていたインサイドハーフの米本拓司、トップ下の河野広貴、センターフォワードの平山相太、そして羽生直剛がリーグ戦のメンバー入りを果たしていく(野澤英之も二試合だけではあるが先発した)。

長谷川アーリアジャスール、ネマニャ ヴチチェヴィッチ、ルーカスらが抜けたが、外国籍選手の補強はフォワードのエドゥーとセンターバックのカニーニのみで、中盤に外国人の補強はなかった。2014年1月の時点で、羽生直剛と梶山陽平の復帰が実質的な補強になると考えた外部の人間は、そうは多くなかったのではないだろうか。当媒体では、羽生の復帰に対してそうした記述をしていたが、それも期待を込めてである。必ずしも予想どおりに事が運ぶとは思っていなかった。実際、羽生は開幕時点でベンチにすらいなかった。

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