冷静かつ強気かつ泥臭い、上々の90分。小林栃木、初志貫徹で待望の初勝利。【J2第20節 大分トリニータ戦 レビュー】(24.6.17)
2024明治安田生命J2リーグ第20節
2024年6月16日18時キックオフ レゾナックドーム大分
入場者数 6,276人
大分トリニータ 0-2 栃木SC
(前半0-0、後半0-2)
得点者:52分 川名連介(栃木)、90+1分 小堀空(栃木)
気温 27.2℃
湿度 63%
ピッチ 良
<スターティングメンバー>
GK 27 丹野 研太
DF 23 福島 隼斗
DF 2 平松 航
DF 33 ラファエル
MF 10 森 俊貴
MF 24 神戸 康輔
MF 15 奥田 晃也
MF 18 川名 連介
FW 42 南野 遥海
FW 19 大島 康樹
FW 32 宮崎 鴻
控えメンバー
GK 1 川田 修平
DF 17 藤谷 匠
DF 3 黒﨑 隼人
MF 44 揚石 琉生
FW 29 矢野 貴章
FW 38 小堀 空
FW 9 イスマイラ

77分 ラファエル→藤谷
77分 南野→小堀
85分 宮崎→イスマイラ
90+2分 森→黒﨑
▼先制したあとの姿勢が圧巻だった
52分に川名が決め切った先制ゴールは見事だったが、さらに圧巻だったのは1点をリードしたあとの時間帯だ。
引かないのだ。まったく後ろに引かない。
大分が選手交代やシステム変更を交えながらテンポよくボールを動かし、対する栃木がなかなか奪えず、後ろに引かされたシーンはある。小林監督が「あの時間帯の身体を張った守備がなければ勝つことはできなかった」と振り返るように、自陣ゴール前の泥臭い守備があったことは紛れもない事実だ。神戸が「そこは最低限、やらないと勝つことはできないと思っていた」が振り返るように、実に泥臭かった。最終ラインの手前に壁を作った神戸や大島が相手のフィニッシュに身体を投げ出し、辛くもボールをゴールの枠から掻き出した。
そして泥臭い守備をしたかと思えば、すかさず前へ踏み出した。全員が足を止めなかった。
正直なことを言えば、記者席の僕は心のなかでクローズしろクローズしろと呟いていた。どのタイミングで引くのか。どこで5-4-1でがっつりとブロックを敷くのか。大分の攻勢が強さを増していた。背後を突かれてピンチを招いていた。であれば、スペースを閉じ、クローズして守ることも一手だ。13試合も勝利から遠ざかっている選手たちの心理を察すれば、背後を突かれるのを恐れ、1点を守りたくなるというもの。
だが、違った。選手たちは冷静で、強気だった。神戸がいう。
「12日の天皇杯藤枝戦(●0-2)から中3日の試合でしたが、相手が3バックや4バックに可変してくる対策はできていました。その上で、僕らはホームでの仙台戦(●1-2)で先制してから後ろに引いてしまい、すぐに同点に追い付かれてしまっている。でも今日は後ろがまったく引かず、高いラインを取ってくれていたので、前にいる僕たちも前からプレスに行きやすかった。共通意識を持ってバラバラにならずに戦えた結果だと思います」
誰もが1点で十分だとは思わず、誰もが2点目を奪おうとしていた。試合前に奥田が「1点ではなく2点を奪えるようにしたい」と話していたが、まさに実行に移していたのだ。
「良い状態のときに後ろに下がるな。下がれば2点目は奪えないぞ」
小林監督がここ最近、ずっと繰り返していた。栃木の監督に就任して迎えた初陣の仙台戦。前述の神戸のコメントのとおり、先制したあとに選手たちが引いてしまったことは小林監督からすれば想定外だった。いったい何をやっているんだ――練習中から「引くな」「足を止めるな」と繰り返してきた。
「(たとえ後ろに引いた状態でも)ボールを回せればいいんですけど、難しいんです。であれば、自分たちがやっていることを貫く必要がある」(小林監督)
あの仙台戦から一カ月ほどの時間が流れた。もはや指揮官の言葉は選手たちの心身の隅々まで浸透していた。
あくまで重心は前へ。前へ、アグレッシブにサッカーをやる。そして2点目を奪う。その強い意志をしっかりと握り締めていることは、選手たちの姿勢から伝わってきた。まったく引かないのだ。相手のボールが下がれば、すかさずラインアップしてボールに襲い掛かる。後ろはスライドを繰り返しながら前へ足を踏み出す。
その姿勢が結実したのが90+1分だった。自陣からクリアしたボールがハーフウェイラインを越え、相手のスローインになった。次の瞬間、スローインを受けた相手選手を追い越すようにボールを奪い取った奥田がそのまま中へと運ぶ。逆サイドからオープンスペースに飛び込んだ小堀がラストパスを受けると、相手GKとの1対1を制し、冷静にゴール左隅に流し込んだ。
待望の2点目。勝利を手繰り寄せる2点目。小林栃木の哲学をチーム全員が強気で体現し、ゴールに結実させた瞬間だった。最悪1点でもいいと思っていた僕は思い知らされた。揺るぎない意志が理屈を超越していくのだと。
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