「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

開幕ゲームで千金同点アシスト。安田虎士朗「相手が二人来た。やばい、失うかもと」【トピックス】(23.2.23)

 

▼「マイナスにいてくれっ」

いきなりの大仕事だった。

開幕節ロアッソ熊本戦の90+1分、CK付近に立つキッカー植田啓太と目が合った。

逆襲の時間帯。押せ押せの流れ。カンセキスタジアムとちぎのボルテージは最高潮に達していた。いい雰囲気だな。鼓動が高鳴り、気持ちが乗っていた。

「最初はそのままクロスを上げようと思ったけど、キックが雑になると思ったんです。だから一つ持ち出したのですが、相手が二人来た。やばい、失うかもと」

ニアサイドを狙えば寄せてきた相手DFに当たってしまう。そうなれば、こぼれ球を拾われてカウンターを食らいかねない。咄嗟の判断だった。

「二人の間にずらすようにボールを持ち出して、身体をひねってマイナスに上げようと。正直、中は見ていませんでした。マイナスにいてくれっ、と。結果に繋がって良かった」

今季が始動してから練習や練習ゲームで見せているそれだった。ペナルティエリア付近で見せる咄嗟の判断。奇をてらうタイミングで入れられるクロスボール。

「自分はめちゃくちゃ精度の高いキックを持っているわけではないし、スピードのあるボールを蹴れるわけでもない。だから、タイミングをずらすとか、相手が嫌がるタイミングを意識しているんです」

栃木移籍後のデビュー戦。開幕ゲームでの途中出場だったが緊張もなかった。

「力が入っているといいプレーができない。ピッチに入ったらやることを決めていて、周りをしっかり見ること、そして余裕を持つこと。周りをしっかり見て、自分に余裕があれば身体も勝手に反応する。逆に、力が入っていると相手も味方も見えなくなる。そこは意識してやっています」

バルセロナのフットボールに心酔する指導者の下、幼少期から相手を見ながら判断し、最善手を選び取ろうとする癖は染みついている。チームが相手ゴール前での判断や精度を課題とするなか、最年少の19歳、安田が開幕ゲームで見せたそれは頼もしい。

安田のプレーぶりについて、時崎監督はこう評価する。

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