「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

生き残りを懸けたホーム2連戦直前! 橋本大輔社長を緊急直撃。「僕らはクラブ全体で闘わないと勝てないチームだと思っています。だからサポーターの皆さんにも一緒に闘ってほしいんです」【インタビュー】【無料記事】【再掲載】(19.9.10)

 チームだけではなくクラブ全体で闘っている雰囲気を作り出してほしい

 

甲府戦の勝利のあとは4連続引き分け、そして4連敗を喫するなど一筋縄にはいかない紆余曲折があるなか、フロントは田坂監督を信じるというスタンスを守り抜いた。後期戦が始まる前には、前期戦3勝という厳しい状況を受けて、明確に目標を「残留」に設定した。その後はより現実的なサッカーを展開するなかで粘り強い戦いを続けている。以上の経緯を踏まえた上で、勝負の9月を迎える今、橋本社長は、粘り強く応援を続けるサポーターにこう呼びかける。

「残りの終盤戦に向けて選手たちはプレッシャーを感じてくると思います。それを単純なプレッシャーとして感じるのか、プレッシャーを跳ねのけるだけのパワーに替えていけるのか。そのときに、チームだけが闘っているのではなく、クラブ全体で闘っている雰囲気を作り出してほしいんです。僕らはクラブ全体で闘わないと勝てないチームだと思っています。だからサポーターの皆さんにも一緒に闘ってほしいんです。うちにはプレッシャーを力に変えられる選手ばかりだけではないと思っています。プレッシャーにのまれてしまう選手もいると思います。その避けられないプレッシャーをいかに『よしやってやるぞ』という前向きな気持ちに持っていけるか。『みんなで闘っているんだぞ』ということを選手たちが感じられる雰囲気になればいいなと思っています。そうやって選手たちが目の前の試合に集中する雰囲気ができたらいいなと思っているんです」

――グリスタでは一部で罵声のような言葉も飛ぶことがあります。

「今のところ、そういうことをパワーに変えていると感じる選手は少ないかもしれない。今の時代、若い社会人で叱咤激励されて反応する人も少なくなってきています。一般企業でも難しいと思うし、それはうちの若い選手たちも一緒かもしれません。もちろん全員ではないし、個人差もあるとは思いますが。試合に引き分けたり、負けてしまったりしたときはもちろん多少のお叱りは言ってもらっても構いません。ブーイングも良いと思います。サポーターの皆さんはお金を払って来てもらっているので言う権利はあると思います。それを否定はしません。ただ、ぜひ選手たちのパワーになるようにしてもらいたいです。甘やかす意味ではなく、『次は絶対に勝とうよ』と鼓舞することが選手たちの力になると思います。昔だったらサポーターに言われたときに言い返す選手がいたけれど、今はそういう時代でもないのかなぁとか思うこともあります。言われたらびっくりしてしまう選手もいるんじゃないですかね。実際、ある選手がびっくりしていました。『他のチームでは一回もあんなふうにヤジを言われたことがない』と。『勝てない時期でもあそこまで言われたことはない』と驚いていたんです。ただ、強化部長代行の山口は『勝てなかった結果としては言われても仕方がない』と言ってましたが」

――そういうものも含めて改めて一緒に闘う雰囲気を作ってほしいと。

「ここからはサポーターの皆さんが選手を乗せていってほしいんです。お叱りをかき消すくらいのポジティブな応援が増えたら自然と消えていくと思うんです。それがそういうことの正し方だと思っています。もちろんクラブも暴言などを少なくする努力はします。来場している子どもたちも怖がってしまっていることもありますから。何か不満があれば僕が話を聞きます。帰りに僕の車を止めてもらっても構わないです。でも、選手に対しては試合の90分間は前向きな応援をしてほしいんです。選手たちは一生懸命やっているし、毎週次の試合に勝つために精一杯トレーニングを積んでいると思います。それでもうまくいかない現状があります。それは選手たち自身が一番よくわかっているし、もがいているんです。決して手を抜いているわけじゃないんです。フロントも手を抜いているわけじゃないし、何も考えていないわけじゃないんです。もちろん足らないことはまだまだあるし、そういうことで不満を持つ人も多いと思います。ただ、今はどうやって選手を後押しできるか、サポートできるか、ということを一番に考えているだけなんです」

――橋本社長から見た選手たちの状態はどう見ていますか。

「やってくれると信じているし、期待しかしていません。あとはせっかくだから、この経験から成長してほしい。やり切ったと言える経験をして次に向かってほしいんです。そのためには結果を残してほしい。そうするとプロとしてステップアップできると思っているから。このまま終わってしまえば、それまでの経験にしかならないと思うので。こういうヒリヒリした経験ももう4年連続です。昇格に失敗し、ギリギリで昇格争いを切り抜けて、去年も危ない時期を乗り越えて残留し、そして今年もこうなっている。クラブとしてはできるだけこういう状況をなくそうとやっているのですが、その経験の中で言えば、周りの雰囲気が『落ちるかもしれない』と恐々としてしまっていたら、選手たちにも確実に伝わっていくものだと僕は思っています。だから、そういう雰囲気を作らない努力がしたいし、サポーターの皆さんには、たとえば選手入場のときは『思いっきりやってこい!』という思いで選手たちを迎え入れてほしいし、キックオフのときに選手たちが『よしいくぞ!』という気持ちになれるように乗せていってほしいんです。僕はそういうクラブを作りたいと思ってここまで社長をやってきました。もし選手がサポーターに苦しい現状を愚痴っていたら『お前愚痴るなよ! とりあえず一緒に頑張ろうぜ!』という姿勢で鼓舞してほしいんです。それが、栃木SCが掲げるクラブフィロソフィーそのものだと思っています。こういう苦しい時期はクラブ経営をしていれば何度でも訪れると思っています。でもこれを乗り越えたら、この経験値を溜めていければ、このクラブはもっと強くなれると思っています。この4年間サポーターの皆さんにはお願いばかりしてしまっているし、何も返せていないと思っています。むしろがっかりさせてしまってばかりですね。図々しいかもしれないですが、その上でまたそういう協力をお願いしたいです」

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